おすすめ度 ☆☆☆★ (劇場鑑賞)
幼女失踪事件を軸に、失ってしまった大切なものを取り戻していく人々の姿をリアルかつ繊細に描き出す。
とある街で幼女の失踪事件が起きる。あらゆる手を尽くしても見つからないまま、3カ月が過ぎる。母・沙織里(石原さとみ)は娘・美羽(有田麗未)の帰りを待ち続けていたが、少しずつ世間の関心が薄れていくことに焦り、夫・豊(青木崇高)との温度差から夫婦喧嘩が絶えない。唯一取材を続けてくれる地元テレビ局の記者・砂田(中村倫也)だけが頼りだった。そんななか、娘の失踪時、沙織里が推しのアイドルのライブに行っていたことが知られ、ネット上で“育児放棄の母”と誹謗中傷を受けるようになる。世の中に溢れる欺瞞や好奇の目に晒され続けた沙織里は、次第に過剰な言動を繰り返し、心を失っていく。一方、局上層部の意向で、砂田は視聴率獲得のために、沙織里やその弟・圭吾(森優作)に対し、世間の関心を煽るような取材をするよう指示される。それでも沙織里は、娘に会いたいという一心で世の中にすがり続けるが……。
娘の失踪、見まいとするが見てしまう誹謗中傷、偽警察の情報にブチ切れる。石原さとみの素の演技。
取材を重ね、上層部は受け狙いを要請、被害者の痛みを利用する演出に疑問を呈する現場記者。中村倫也の静かな演技。
狂い果てる妻をやさしく諭す、夫役の青木崇高。
名演技を引き出しながら、何でもないストーリーに影を作る名演出。
作り手の魂のこもった名作に仕上がった。
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