団塊世代おじさんの日常生活

夏 日本で二番目に気温が高く、陶器と虎渓山と修道院で知られる多治見市の出身です。

「月下氷人」とは

2017-05-02 04:25:14 | 日記
 中日新聞に「うゐの奥山」というコーナーで玄侑宗久(げんゆう・そうきゅう=福島在住の作家、僧侶)さんが、
「月下氷人(げっかひょうじん)」というタイトルでエッセーを書かれていました。






 最近、じつは頼まれて仲人を務めることになった。
今の若い世代は仲人など頼まず、神仏も頼まず、人前結婚などという気楽なスタイルが多いようだが、
新郎がお寺の副住職ではそうもいかない。

 つくづく思うのだが、結婚に至る手続きが気楽になればなるほど、
気楽に別れるケースが増えているのではないだろうか。
入籍のみ、というやり方に至っては、除籍すれば済む。

 好感を持っていた青年僧侶だし、若い二人を心から祝福したいと思って引き受けたのだが、
こうして仲人が立てば別れにくさは格段に増す。
引き返せないと思わせる面倒な要素を、一つでも増やすのが賢明な結婚ではないかと、
余計なことまで思ってしまったのである。

 余計なことと言えば今回のテーマの「月下氷人」も余談のようなものだ。
以前から仲人を「月下氷人」と謂(い)うのは知っていたが、意味がわからなかった。
月の下の氷の人?
そのまま読めばいかにも冷徹で無情の人とも思えるが、これがどうして
仲人や媒酌人なのだろう?

 どうも諸説があって確信が持てないのだが、「月下老」と「氷上人」とが合流したという説を
元に考えてみた。
合流も確かにあり得るだろうが、わざわざ「老」や「上」を抜き「月下氷人」の四文字で
表現した意味が、そのままでは理解できないからである。

 「氷上人」の話の中心は、氷の上にいて氷の下の人と話した、という夢の解釈である。
中国の晋の索紞(さくたん)という占いの名人は、氷の上は陽で下は陰だから、
その夢は君が結婚の媒(なかだち)をしてうまく行く前兆だという。
しかも結婚が成立するおは氷が解けた頃だというのである。

 実際その通りになったから、この話が残ったのだろうが、ここで「氷」とは何かと、私は考えてしまう。

 男女を隔てる氷は、やがて解けるわけだが、仲人はその氷が解ける前に両者の間を動き廻らなくてはならない。
いや、むしろ結婚にはお互いのことが、「よく解らない(氷が解けていない)」ことこそ重要で、
氷のあるうちに奔走して両者を盛り上げ、まとめることこそ肝要だと、そう告げているのではないだろうか。

 その文脈に沿って「月下」に目を移すと、これはどうしても「夜まで」と読める。
仲人のための活動が月明かりの下でも続くイメージである。
それとも月のもつ不思議な力を借りるのだろうか。

 本来の「月下老」の話は、不思議な老人(実は縁結びの神)が赤い紐を結び、
十数年後の結婚を予言して的中させた故事だが、なにゆえ「月下老」と呼ばれるのかよくわからない。

 総合すると、「月下氷人」とは、お互いよく解らない(氷がある)うちに月の力も借りて
夜中まで婚姻を目指して活動する人、ということになるが、むろん私のような
頼まれ仲人は埒外である。

 「詩経」にも「若者よ、もし妻をめとるならば氷の解けきらない冬のうちに」という意味の詩句が
あるが、今回は余計なことを考えるうちに「解らない(氷がある)」ことの重要さにたどり着いた。

 もしかすると、結婚が破綻するのは相手を「解った」と思ったときではないか。

 「解らない」ことは相手の魅力にも繋がり、そう思う本人の謙虚さでもある。

 ちなみに仏式の結婚式でも三三九度は行うが、これは同じ「三」が掛け合わさって「九」(=永遠)を
誓い合う儀式である。
我々僧侶の行う三拝九拝(永遠の帰依)と同じ意味合いだが、帰依も結婚も、
「解らない」と思えばこそ「永遠」の道になるのではないか。


 以上です。


 「月下氷人」とは、仲人さんのことだったんですね。
知りませんでした。
 玄侑宗久さんは頼まれ仲人とのことですが、今は仲人さんがいないケースが多いですね。
私は仲人を親戚に頼み、司会は友人に頼みましたが、今は司会はプロの方が多いように思います。


 玄侑宗久さんは「いや、むしろ結婚にはお互いのことが、『よく解らない(氷が解けていない)』ことこそ重要で、
氷のあるうちに奔走して両者を盛り上げ、まとめることこそ肝要だと、そう告げているのではないだろうか。」と、
書かれています。
お互いがよく解らないうちに結婚するのが重要だと書かれています。
確かに一理ありますね。

 また「もしかすると、結婚が破綻するのは相手を『解った』と思ったときではないか。
 『解らない』ことは相手の魅力にも繋がり、そう思う本人の謙虚さでもある。」とも書かれています。

 若い頃付き合った女性に「あなたは私のことをなんでも解っている」と皮肉交じりに
言われたことがあります。
彼女のことを上っ面だけでなんにも解っていなかったので、皮肉を言われたように思います。(苦笑)
これは玄侑宗久さんの言われることと、逆ですね。(苦笑)

 ともかく頼まれ仲人さんも、なかなか大変のようですね。(笑)





明日への手紙 - 手嶌葵(フル)
コメント (8)
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