さて、遊覧船が箱根町の乗り場に着いたころには、この辺りにも大勢の観光客が訪れ、賑わいを見せていた。船を降りると「どうぞお越しください」をいわれて渡されたパンフレット。そこには、「箱根駅伝ミュージアム」と書かれていた。
箱根駅伝。正月恒例の行事として人気のある大会だ。私は箱根駅伝の出場資格のある関東の大学の出身ではないし、特にどこの大学に入れ込んでいるわけでもないのだが、見ていて面白いものである。箱根といえば絵画や彫刻のミュージアムが多いイメージがあるが、こういう「駅伝」のミュージアムというのも興味を引く。この駅伝が箱根の名を改めて全国の人たちにPRしているのも事実だろう。
そのミュージアム、これまでの大会の戦況や出場校の紹介、名選手の紹介やユニフォームの展示など、なかなかためになる。過去のVTRも流れている。ちょうど訪れた時に、熱心な「駅伝」ファンの人が「第○○回の時はねー、そうそう、△△君が出た時だよ。あー懐かしいなー。わっ、今度は□□君だよ。いいねー」と感動した様子で展示内容の「解説」を連れの人にしていたところ。私が個人的に意外と思ったのが、昭和初期の大会のことではあるが、「関西大学」が出場していたということ。これはまさしく、トリビアになりまへんかな~?
これで「箱根」に来た実感が改めて沸いたのだが、やはり訪れるべきは「箱根関所跡」であろう。何でも今年の春に当時の建物の全面復元工事が完了したとかで、以前に訪れた時よりも建物が新しくなっている。また、2日・3日と「箱根関所まつり」なるものが行われている。関所の門前には屋台が出ていたり、芦の湯温泉のその名も「足湯」体験コーナーがあったり、大勢の人でにぎわっている。高台にのぼり、関所の全景を見る。かつて「入り鉄砲に出女」と言われた厳しいイメージは全くなく、芦ノ湖畔に立つのどかな建物に見える。普段ここに勤めていた役人たちというのは、忙しかったのだろうか、それともこの景色を見ながら、案外のんびりしていたのか。
さて、このまま小田原まで引き返すのも芸がないので、ここからはフリーきっぷの範囲である、箱根から熱海へ抜けるバスに乗る。箱根の峠はまだこの先で、バスはあえぎながら坂を登る。そして高原の風情の中を経由するのは「十国峠」。相模・武蔵・駿河・遠江・安房・上総・下総・甲斐・信濃・伊豆の10ヶ国を展望できるとか。フリーきっぷのメリットを利用してここで途中下車。展望台にはここから3分でケーブルカーが結ぶ。
そしてたどり着いた峠の頂上。残念ながら富士山も雲に隠れており、10ヶ国展望とは行かなかったが、前方に駿河湾・伊豆半島西岸、転じて後方には相模灘に真鶴岬と、スケールの大きさは感じさせる。空気の澄んだ冬場などがいいかもしれない。この十国峠は、ここに来るまでその存在も知らず、全く気にしていなかったスポットであり、これだけでも出かけてきた甲斐があったというもの。
次のバスで坂道を下り、熱海市街に出る。このルートから入る熱海というのも、別な表情が見えるようで面白い。市役所前で下車し、日帰り浴場の「日航亭」へ。熱海はもちろん有名な温泉地であるが、立ち寄り湯というイメージがこれまでなかったところ、日帰り温泉のガイドブックで見つけたもの。あの航空会社と関係あるかどうかは知らないが・・・・。「大湯」という、熱海温泉の古くからの湯とされるとかで、源泉かけ流し。ここで、早朝からの汗を落とし、心地よい気分になる。
まだ日も高いのだが、熱海駅から東京方面のホームに。帰りに指定したのが、「スーパービュー踊り子」号。車両の端が展望席になっており、東京方面への上り列車では、先頭車が普通車指定席になるため、どうせならとこの号車を指定したのだ。まだ土曜日の夕方とあってか、指定席もガラガラであった。
海も見えるし、通過する駅、すれ違う列車、果ては複々線区間での追い抜きもバッチリ。
・・・いや、この展望車は時間が経つのがあっという間。普通の「踊り子」号と、車両設備面において差があり過ぎやせんか。いや、それだけに「スーパービュー」の値打ちがあるのだろう。それを往復込み込みの値段で楽しめるのだから、このフリーきっぷ、かなりお買い得である。箱根地区での箱根登山鉄道との相互交流があればもっとよいのだが・・・・。
今日は本当にサラっとなでる程度の日帰り旅行であったが、またもっといろんなスポットを見てみたいものである。今度は小田急のロマンスカー(まだ乗ったことがない)から始めて、箱根登山鉄道とのフリーパスで行ってみようか・・・・?