広島から関西に向かうのにいったん新幹線で小倉まで行き、関門トンネルを抜けて下関に降り立つ。山陽線を行く夜行「WEST EXPRESS銀河」への乗車である。今回、入手困難とされる簡易寝台「クシェット」を確保できたことでのお出かけで、京都に着いた後は神仏霊場巡拝の道めぐりの続きとして大阪に向かう予定である。
さて乗車後、荷物はいったん寝台に置き、まずやって来たのは4号車のフリースペース「遊星」。今回の山陽コースは山口県がテーマで、沿線の特産品が展示されている。中でも目立つのが柳井の金魚提灯。京都からの下り便では、柳井にて朝食の販売などのおもてなしが行われている。一方下関からの上り便では時間帯的にも沿線のおもてなしもなく、かつての純粋な夜行列車らしさを楽しんでもらおうという主旨となっている。
下関を出発し、すぐに新下関に到着。この後は宇部、新山口と停車する。外はどこまでも街並みが続くわけではなく、まだ20時前だが深夜のようなとっぷりとした車窓である。広いテーブルをフルに使って静かに一献とする。先ほどスーパーに立ち寄った際、下関なので海の幸でも選べばよかったかなと思うが・・。
今回は広島で大相撲の巡業を観た後に下関に移動したが、もし重なっていなければ夕方早めに下関に入り、駅前で一献やってから列車に乗り込めたことだろう。
「遊星」も客が入れ替わり立ち替わり、私も他の号車の様子をのぞきに行く。この日もリクライニングシート含め満員御礼である。やはり「ファーストシート」は「e5489」の事前申込でも取れず、今思えば、以前のツアー扱いの列車の時によく乗れたものだ。その時は抽選という運もあったが、現在は窓口にて発売開始日のいわゆる「10時打ち」でないと取れないのかな。
22時04分、柳井に到着。ここで貨物列車の通過待ちのため12分停車する。途中駅での撮影時間ともいえ、ホームに出る客も多い。
そろそろ時刻も遅くなり、ようやく「クシェット」に移動する。1区画4人で利用し、すでに上段に1人が横になっている。ちょうど減光され、お休み放送が流れたタイミングでもあるし、静かに過ごすことにしよう。
「クシェット」とはヨーロッパの鉄道で使われる簡易寝台の名称。ベッドというより「横になれる座席」というニュアンスが込められている。それでも、かつての開放型B寝台に近い造りで、下段には薄いながらカーテンがあるため、相客とも一定の距離は保たれる。これで隣のリクライニングシートと同じ特急料金なのだから当然「クシェット」に人気が集まる。
備品はブランケットと枕カバー。ブランケットは寒い時季でなければ引っかけるには十分である。枕は持参のタオルや衣類などでこしらえるところだが、以前「銀河」に乗った時に購入したネックピローを持参。
窓の外に目をやると、ちょうど周防大島を望むあたりで、漆黒の海が広がる。
岩国に到着。上りでの長時間停車は岩国が最後ということで、撮影でホームに出る人も多い。いよいよ、本格的な夜行となる。京都までの停車駅が電光掲示板に表示されるのだが、なぜか宮島口、広島、西条、三原、福山、倉敷、岡山、姫路・・・と出る。以前、昼行列車として運転された時の停車駅がそのまま表示されているようだ。実際にはこの先の停車は広島、神戸、三ノ宮、大阪、新大阪である。
車内に戻るとさすがに「遊星」からも人がいなくなった。また「クシェット」に戻ると他の上段、下段にも乗客があった。
次の広島までの間、私の自宅近所の踏切を通るのを見ようと寝台で横になっていたが、そのまま寝入ったようで広島の発車も気づかなかった。その後目が覚め、スマホ地図を検索すると西条辺りにいるようだが・・。
やはり横になるのと座席では眠った実感が全く違う。次に停車の様子で目覚めたのは岡山と兵庫の県境あたり・・ということで三石のようだ(別に画面のスクリーンショットを撮ったわけでも、窓の外の景色を確認したわけではないので確証はないが・・)。
そして少し外がうっすらとしてきたか、今度はホームの照明で目覚めた。西明石の手前の大久保である。時刻は5時頃で、普段ならそろそろ起きようかという時間である。手洗い、洗顔も兼ねて寝台から起き上がる。3号車の明星でしばらくぼんやりする。
大久保を発車し、西明石、明石と通過して車窓には明石海峡大橋が見える。夜なら橋脚がライトアップされるのだが、さすがに未明だと暗い中かすかに見えるかなというところ。
5時44分、神戸に停車。続いて5時48分、三ノ宮に停車。そして阪神間で少しずつ明るくなる車窓を見る。こういう感覚というのも久しぶりである。
三ノ宮から再び3号車の明星に移ったが、そのテーブルに男性が突っ伏していた。ただ、前夜から乗っていたそれらしき客とは違うようだ。おそらく三宮で夜通し飲み遊んだ後、何でもいいからやって来た列車に乗り込んだのだろう。いかにもそういう輩のようだ。
大阪に到着。男性は帰巣本能か、そこはちゃんと降りたのだがそのまま柱にもたれかかり、トイレと勘違いしたのかズボンを下げる様子。張り倒したいところだが、「銀河」もすぐに発車するので成り行きに任せる。その後どうなったかな。
ここからは朝の景色である。淀川を渡り、6時16分、新大阪に到着。ここで新幹線に乗り換えて東を目指すのも面白そうだ。
「遊星」に移ると、朝ならではの雰囲気である。車窓からの日の出。
そして終点の京都が近づく。手前の京都鉄道博物館の構内に、「銀河」の原型である117系のオリジナル新快速塗装の車両が見える。117系はデビュー当時は新快速として京阪神のエースとして君臨したが、後継車両の登場で第一線は退き、山陽線でローカル運用。そして現在は定期列車からも引退し多くが廃車、解体される中、「銀河」という形で脚光を浴びるとは・・。
6時43分、行き止まり式のホームに到着。前夜からの11時間を完走した。夜行列車の雰囲気を味わうことができて大満足である。ただ、やはり一度は「ファーストシート」で一夜を過ごしたいというのはある。今後もチャレンジしたい・・。
さてここからは神仏霊場巡拝の道めぐり。今思えば、早朝に京都に着いたのだからそのまま京都市内の札所をめぐれば混雑せずに参詣できたというところだが、今回の目的地は大阪の住吉大社である。目的地が大阪なのに、広島からいったん小倉に行き、下関から夜行列車に乗り、そして大阪を通過して京都まで行って、そこで折り返して大阪に向かうとは・・・。
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