最高気温が-4℃、最低気温が-9℃。もうめちゃくちゃ寒い。
最後の生徒、トムの家のお向かえに、有名な電飾坊やの家がある。
彼はまだ小学生なのに、毎週ごとにコツコツと、自分でデザインした電飾を増やし続ける。
トムとわたしは、それを家の中から眺めながら、
「電気代、大変だろうなあ……」
「けれども、あの創作意欲を尊重したいしね、親なら……」
などとボソボソとつぶやく。
雪だるまを正面から。
よっしゃ、せっかくカメラが車にあったことだし、うちの近所の電飾も撮っておこう。
そう思いつき、いそいそと走っていたら、
ピカッピカップウップウップウゥ~
なんでやねぇ~ん
ド派手なライトとスポットライトをさんさんと浴びながら待っていると、おまわりさんがやって来た。
「車の保険証と登録証明書、それから運転免許証出して」
「あのぉ~、わたしがなにをしたんでしょか?」
などと聞きながら、実は運転しながらカメラをいじくってたし、車の右のブレーキランプがつかないままだし、そのどちらかがひっかかったのかと推測していた。
「君ね、こんな寒い晩に、ハーイ、今晩は!なんて挨拶をしに来ると思う?」
「いや、そんな物好きな人はいないと思う」
「そうだよね。あのね、君ね、そこの角を右折する時、一旦停止しなかったでしょ。しかもスピードも落とさなかったし」
「えぇ~!!マジで?ほんとにわたしがそんなことした?ほんとに?そんなの絶対信じられない!いくらなんでもスピードは落としたはず……」
「君が信じられなくても今ボクの目の前でやったんだから」
「いや、それでも信じられない……」
「まあ、いいからカードを全部渡して、待ってて」
捕まった道は、一旦停止を見張っているパトカーの台数が半端じゃないので有名なのだった。
わたしがその直前に走っていた道は、長い長い下り坂になっていて、そこで捕まっている車を今までにもたくさん見ていた。
わたしもそれは重々知っていて、その通りに入る時はいつもきちんと車を停めていた。
けれども……きっと写真のことばっか考えていて、おまけに気が急いでいて、おまけに真っ暗で……ちゃんと停まらなかった珍しい夜に、ふふん、捕まる時ってそういうもんだよね、このおバカ、と自分で自分を叱ってみる。
アメリカのパトカーの電飾の派手さはきっと、他のどこの国にも負けないだろう。
ほんとに目に眩しいので、見ているのが嫌になってきて、頭をハンドルの上に乗せ、好きな歌を歌いながら待っていた。
コンコン!のろのろと姿勢を戻し、窓を開けた。
「ちょっと君、大丈夫?」
「あ、はい」
「ほんとに大丈夫?気分でも悪いの?」
(いや、こんな時気分がええ人いまっか?だいいちあんたらの車の電飾、下品なぐらい派手で眩しいねん!)……などとは言えないので、黙っていた。
「あのね、今君の履歴を調べてたんだけどね、ちっちゃな違反をしたのが6年前に1回。それ以降は安全運転してるみたいだし、だから今回は警告ってことにするよ」
「そうっすか。ありがとうございます」
「ほんとに大丈夫?」
「あの、ひとつだけ言っときたいんですけど……」
「なに?」
「わたし、一旦停止をちゃんと停まらないなんてこと、ほんと、無かったんですよね」(←警告だけで気が大きくなり、ちょびっと言いたい放題……ガハハ!)
「なるほど」
「ほんとにいっつも気をつけてたんですよね」
「まあ、そうだったんだろうけど、ふとやっちゃう時ってあって、そういう時にガチャンとぶつかったりしたら困るでしょ。だから、これからはもっともっと気をつけてっていう意味で、今回警告ね。わかった?」
「はあ……」
「家まで帰れるよね」
「まあ……」
「じゃ、いい夜を過ごしてね!」
「ども……」
よくよく見ると、いつの間にかもうあと1台、パトカーが来ていた。わたしが逃走するとでも思ったか?
ま、いいや、とにかくよかった……今日稼いだ分がふいにならなくて……。
最後の生徒、トムの家のお向かえに、有名な電飾坊やの家がある。
彼はまだ小学生なのに、毎週ごとにコツコツと、自分でデザインした電飾を増やし続ける。
トムとわたしは、それを家の中から眺めながら、
「電気代、大変だろうなあ……」
「けれども、あの創作意欲を尊重したいしね、親なら……」
などとボソボソとつぶやく。
雪だるまを正面から。
よっしゃ、せっかくカメラが車にあったことだし、うちの近所の電飾も撮っておこう。
そう思いつき、いそいそと走っていたら、
ピカッピカップウップウップウゥ~
なんでやねぇ~ん
ド派手なライトとスポットライトをさんさんと浴びながら待っていると、おまわりさんがやって来た。
「車の保険証と登録証明書、それから運転免許証出して」
「あのぉ~、わたしがなにをしたんでしょか?」
などと聞きながら、実は運転しながらカメラをいじくってたし、車の右のブレーキランプがつかないままだし、そのどちらかがひっかかったのかと推測していた。
「君ね、こんな寒い晩に、ハーイ、今晩は!なんて挨拶をしに来ると思う?」
「いや、そんな物好きな人はいないと思う」
「そうだよね。あのね、君ね、そこの角を右折する時、一旦停止しなかったでしょ。しかもスピードも落とさなかったし」
「えぇ~!!マジで?ほんとにわたしがそんなことした?ほんとに?そんなの絶対信じられない!いくらなんでもスピードは落としたはず……」
「君が信じられなくても今ボクの目の前でやったんだから」
「いや、それでも信じられない……」
「まあ、いいからカードを全部渡して、待ってて」
捕まった道は、一旦停止を見張っているパトカーの台数が半端じゃないので有名なのだった。
わたしがその直前に走っていた道は、長い長い下り坂になっていて、そこで捕まっている車を今までにもたくさん見ていた。
わたしもそれは重々知っていて、その通りに入る時はいつもきちんと車を停めていた。
けれども……きっと写真のことばっか考えていて、おまけに気が急いでいて、おまけに真っ暗で……ちゃんと停まらなかった珍しい夜に、ふふん、捕まる時ってそういうもんだよね、このおバカ、と自分で自分を叱ってみる。
アメリカのパトカーの電飾の派手さはきっと、他のどこの国にも負けないだろう。
ほんとに目に眩しいので、見ているのが嫌になってきて、頭をハンドルの上に乗せ、好きな歌を歌いながら待っていた。
コンコン!のろのろと姿勢を戻し、窓を開けた。
「ちょっと君、大丈夫?」
「あ、はい」
「ほんとに大丈夫?気分でも悪いの?」
(いや、こんな時気分がええ人いまっか?だいいちあんたらの車の電飾、下品なぐらい派手で眩しいねん!)……などとは言えないので、黙っていた。
「あのね、今君の履歴を調べてたんだけどね、ちっちゃな違反をしたのが6年前に1回。それ以降は安全運転してるみたいだし、だから今回は警告ってことにするよ」
「そうっすか。ありがとうございます」
「ほんとに大丈夫?」
「あの、ひとつだけ言っときたいんですけど……」
「なに?」
「わたし、一旦停止をちゃんと停まらないなんてこと、ほんと、無かったんですよね」(←警告だけで気が大きくなり、ちょびっと言いたい放題……ガハハ!)
「なるほど」
「ほんとにいっつも気をつけてたんですよね」
「まあ、そうだったんだろうけど、ふとやっちゃう時ってあって、そういう時にガチャンとぶつかったりしたら困るでしょ。だから、これからはもっともっと気をつけてっていう意味で、今回警告ね。わかった?」
「はあ……」
「家まで帰れるよね」
「まあ……」
「じゃ、いい夜を過ごしてね!」
「ども……」
よくよく見ると、いつの間にかもうあと1台、パトカーが来ていた。わたしが逃走するとでも思ったか?
ま、いいや、とにかくよかった……今日稼いだ分がふいにならなくて……。