今週末はパソコンの前に座る時間が無かった。
その分、いろんな人と会い、いろんな話をし、いろんなことを考えた。
今日は3月17日の日曜日。時間は午後3時ちょっと前。
その間に、『遺体』という、石井光太さんによって書き上げられた本を読み終え、今、田口ランディさんの『サンカーラ』を読み始めてる。
石井さんの本の帯には、
《震災、津波の果てに・生き延びた者は、膨大な数の死者を前に、立ち止まることすら許されなかったーーー遺体安置所をめぐる極限状態に迫る、壮絶なるルポルタージュ!》と書かれてある。
そして田口さんの本の帯には、
《迷いながら 私は問い続ける どう生きたらよいのでしょうか
福島、広島、水俣……日常を生きながら、重い問いかけを受けとめて行く。出会いに支えられて、歩き続ける》とある。
どう生きたらいいのか。
そのことをいつも、心のどこかで考え続けた週末……。
さて、この記事は、1週間ほど前に行われた『子ども信州ネットキックオフイベント』での、鎌仲ひとみさんの講演の内容を、きーこさんが書き起こしてくださったものです。
最近、2回ほど、それもたった30分とか45分とか、そういうビデオの書き起こしをして、そのために4時間も5時間もかかってしまうわたしはやっぱり、このきーこさんの情熱と根性のすごさに、心の底から感心しています。
それも毎日毎日です。あの事故以来……ありがとう、ほんとうに。
↓以下、こちらに打ち直しさせてもらいました。
<前半>「市民が、自分たちの権利・人権というものを獲得するために運動しようと思うと…同じ手が使われます」鎌仲ひとみ3/9子ども信州ネットキックオフイベント(内容書き出し)
鎌仲ひとみ氏(映画監督)「内部被ばくについて」
キックオフイベント
「子どもたちを放射能から守るために信州でできること」
2013年3月9日 動画はこちら↓
http://www.ustream.tv/recorded/29842796
01:15:41~
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マコさん達のようにエンターテーメントでない、ちょっとお勉強になりますが、ちゃんと聞いて下さいね。
よろしくお願いします。
そして今日の、信州ネットワークの発足、本当におめでとうございます。
今日は、私たち日本人の、全員の課題であります、
これから、子どもたちをどうやって守っていくのか?
被ばくから守れるのか?という事を、一緒に考えていければと思っています。
そして、どうやって守っていくのか?のためには、やはり、被ばくについて知らなければいけないんですけれども、
先程も、マコさん達の話にあったようにですね、被ばくについて情報が混乱しているんですよね。
その情報の混乱の根っ子、というのがあるんですよ。
その根というのがどこにあるのか?というと、まず、被ばくを理解するための壁が、理解させないための壁が立ちはだかっておりまして、
その壁はいったい、いつ立ったんだ?といいますと、広島長崎に原爆が落とされた時に、この壁は立てられたみたいなものなんです。
そのおかげで、日本は唯一の被爆国と言われているんですけれども、教育では一切被ばくを教えないですね。
放射線は、人間にどんな影響を与えるのか?
こんなにも日本で、1945年の8月6日と8月9日に、世界中で最も多くの被爆者を一遍に出した国なのに、
「被ばくの中身」というものを、教育の中で、一切日本人に教えてこなかったんですね。
だから、今回、福島原発事故が起きた時も、ほとんどの日本人は「なに?」と。
確かに、原発が爆発したのは恐ろしい事だし、放射能はなんだか危険だし、という事は分かっているんだけれども、
「じゃあどれだけ危険なの?」
「逃げなきゃなんないわけ?」って言う、その危険の程度が分からない。
私は東京だったんですけれども、本当に、「こんな時に仕事に行くか!」って思う位に、みんな平気で仕事に行っていました。
放射性物質が飛んできている。
そういう予測が私は出来ているので、もちろんいろんな人に、
出来るだけ子どもを連れて遠くに「旅行だと思っていってしまいなさい」というふうに勧めましたけれども、
でも、なに一つ国からは、避難勧告とか、たとえば、家の中に屋内退避して、目張りをして換気扇を回さずに、みだりに外に出ないでしばらく閉じこもっていなさいとか、
本来は、そういう事をすべきだったんですね。
そういうことを一切しませんでした。
その、さっき言った根っ子というのはですね、原爆を落とした後に、アメリカが行った言論統制というのがあって、
原爆を落とした後に、アメリカがGHQで日本にやってきて、そして、そこで生き残った被爆者の人達にですね、
その人達は、すごい悲惨な体験をしたんですけれども、そして体がぼろぼろになったんですね。
「それに関して何一つしゃべるな」と。
で、お医者さんが治療すると、これまでに見たこともないような症状がでている。
「そういう事もしゃべるな」という、すごい厳しい言論統制を5年間やったんですね。
その5年間の間に、言論統制をするくらいですから、被爆者の救済というものはほとんど無かったんですね。
だからその間に、本当に、弱い人から死んでいったんです。
先程も、花粉症のたとえがありましたけれども、やっぱり被ばくに弱い強い、そして敏感とか鈍感とかあるわけですよ。
やっぱり、被ばくの影響を受けやすいのは子どもですから、
子どもからどんどん、被ばくした子どもから死んでいった。
で、その5年経った後にですね、今度はアメリカは、ABCCといいまして、「被ばくの影響を調査する」と言い出したんです、5年後に。
その5年後にですね、何をしたか?って言うと、
今度は、その5年間生き延びた、つまり、被ばくはしたけれども生き延びる事が出来た人たちを、合わせて8万9000人捕まえて、
そして、捕まえて離さないんですよ。本当に失礼なやり方で、人権無視するやり方で、治療しないで検査だけして、
いろんな、その人たちの人体的なデータをただただ集積していって、そしてその中身に関しては、ずーっと隠していたんです。
つまり被害を隠蔽したんですね。
もうひとつしたのは被ばくの過小評価をしました。
つまり、いろんな調査をしました。
こんな大規模な調査を、専門家たちでやったんです。
「私たちの見解が一番信憑性があるんです」だとかと言いながら、
そういうことをやり続けてきて、その生き証人がいるんですけれども、肥田先生、肥田舜太郎さんという、私に被ばくの事を教えてくれたお医者さんなんですけれども、
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この方は、27歳の時に広島にいて、原爆がまさしく落ちた時に、その爆心地、広島の真ん中から6km離れた村にいて、その原爆が落ちるのを見てたんですね。
その後に、その村に、わらわらわらわらと、爆心地から何千人もの被ばく者が、ボロボロになって避難してきて、
本当に、人類史上、医師として初めて、そんなにも多くの被爆者を一遍に見て、一遍に治療しなくちゃいけないという局面に立った人なんですけれども、
弱冠27歳だったんですよね。
しかも、今度はその後にですね、原爆が落ちた時に、そこにいなかった人たちが、わらわらとこの村にやってきたんですね。
つまり、広島がすごい被害を受けたというのを聞いて、日本海側にいたり、九州にいたり、四国にいたり、
原爆が落ちた後に肉親を捜しに来た人たちが、放射能まみれの爆心地を、うろうろとがれきの中をさまよって、
そこで食事もし、水も飲み、埃も吸いこんで、そして、内部被ばくをいっぱいして、で、その肥田先生がいる戸坂村に来た時に、
実際原爆に遭った人たちと、同じ症状を出し始めたんですね。
紫斑が出来る、熱を出す、髪の毛が抜ける、ありとあらゆる粘膜から出血する、下血する、っていう感じで、
肥田先生は何の情報も無いので、「これはうつるんだ」と、「伝染病かもしれない」……何の情報も無いわけですからね。
で、肥田先生がGHQに「情報をくれ」と、
「治療するためには、原爆で引き起こされたこの病気が、何なのか知りたい」という事を聞きに行って、
それで、4回刑務所に叩きこまれているんです。
でも、なに一つ教えてもらえなかったんです。
その時から内部被ばくは、ずっと隠蔽され続けてきました。
そういうふうに、内部被ばくを隠しつつ、なにが起きたのかというと、
今度は、被ばくした人たちの事を、やっぱり補償しなければいけないと、ある程度認めてやらなければ収まりが付かない、ということになって、
こういうふうに、これは同心円というんですけれども、
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これが、原爆が投下された爆心地のグランドゼロなんですけど、この真ん中から線を引いて、2km、4km、6kmとか。
「この円の中にいた人は、同等の被曝をした」というふうに考えて、
「この2km圏内にいた人には補償しましょう」
ところが、一歩でも外に出ると、「補償しません」というやり方をやったんですね。
そうすると、同じ被ばくをした人たちの中で、こう…感情的ないがみ合いが引き起こされて、
なんか市民が、自分たちの権利・人権というものを獲得するために運動しようと思うと、同じ手が使われます。
私たちも今、気をつけなければならないのは、
やはりやり方の違いとか、補償の違いによって、同じ被害者が、被害者同士でいがみ合うっていうか、一緒に手を握れないっていう状態が起きるんですね。
それは、運動全体の弱体化に繋がるんです。
今回こうやって、信州ネットが立ち上がりました。
本当に、いろんな考え方の人達が、ただ一つ
「子どもたちを、いかに迅速に効果的に、被ばくから守って、健康で安全で安心な毎日を送る事が出来るか」
っていうその事に一点集中して、やり方の違いとか考え方の違いとか、なんかそういういろんな違いを乗り越えていくっていう課題は、私はあると思うんですよ。
でも歴史的にみると、差別。
で、原爆が落ちた後にですね、何十万人という軍隊の兵士たちが、全国から集められてきた若者たちがですね、
広島だけでも14万人が即死したわけですから、その14万人の遺体を…こう…処理するっていう作業をさせられました。
たとえば、そこに遺体を重ねて焼くとかですね、そうすると、遺体全体が放射性物質になっているので、そんな、戦後にマスクもある訳んですよ、全部吸いこんじゃう。
で、内部被ばくもしたその人たちの被害を、日本政府はほとんど認めてきていないんです。
やっぱり、その後からいろんな病気が出てきて、入市被ばくの人達が、「自分たちの被害も、原爆のせいだという事を認めてくれ」という事を申し立てたら、
直爆に遭った人も、後から入った人も同じように、
「あれは戦争だったんだから、その被害に関しては受忍しなさい」と、
「受け止めて耐えなさい」「耐え忍びなさい」という返答が国から帰ってきて、
それで、ほとんど数%ぐらいしか、被害を認めて医療支援をしてもらっていないんですね。
そういうことを67年間やってきたので、肥田先生は、その集団訴訟をやっているんですね。
死ぬ前に、やっぱりこの、人生の健康被害の苦しみ、
「普通の人生を奪われた苦しみを認めてほしい」という事の裁判をやって、
7回やったんですけれども、7回とも地裁では勝ったんです。
でも、日本政府は控訴して、認めようとしていないんですよ。
先程も、水俣病の裁判の事をご紹介いただいていましたけれども、同じような…。
裁判、裁判というよりも、司法そのものが、やっぱりこう、独立性を失わせるような事があるんじゃないかなと思われます。
でもそうやって、実際、明らかに被ばくしたと、原爆が落とされた、そしてそこに入っていった、そこにいた人たちに関してすら、
日本政府は67年間、その被害をまっとうに評価しようとしてこなかったんですから、
今回、福島で起きた事を進んで、被曝によっておこる被害をですね、救済するような仕組みが果たしてあるのかな?と……。
まぁ、ないんですね、無いんですよ、今。
だから、ここは私たちの頑張りどころなんですね。
で、低線量と呼んでいますけれども、100ミリシーベルト。
1年間に100ミリシーベルト以下の被ばくの事を、低線量と呼んでいるんですけど、
こういう言い方が、まァ、そういう専門家たちは、低線量って言うんですけれど、
私は、高線量だと思うんですね。
でも、それに関しては、「確執」と私は呼んでいるんですけれど、
二つの意見がずーーっと平行に対立していて、決定打というか、一つにまとまっていないんです。
だから、もちろん私たち普通の人は、それに関して混乱するのは当たり前なんですね。
で、無害派と言って
「大したことないんだよ、100ミリ浴びても大丈夫だよ」っていうふうに言っている人たちは、確実にいます。
その人達は、たとえばIAEA国際原子力機関。
これは、「世界中に原子力技術を普及させよう」「原発を建てよう」という人たち。
WHO、WHOはですね、
本来は、そういう子どもたちの健康被害、放射線による健康被害を、真っ先に防護しなければならない国際機関なんですけれども、
何故だか、手が出せないんですね、今回の問題には。
それは、IAEAと協定を結んでいて、WHOが、どんな、すごく重大な低線量の被ばくに関する健康の事実をつかんだとしても、
この、「IAEAのお許し無しには、発表することはできない」というふうに、もう約束してしまっているんですね。
つまり、WHOの独立性、というものはここで失われてしまっている訳なんですけど、だから、あんまりいい事をしていないんですよ、被曝問題に関しては。
私が「なんでかなぁ?」とずーっと思っていたのは、
イラクに行った時にですね、イラクの子どもたちが、ものすごい小児癌や小児白血病が増えていて、で……薬が無いんですよ。
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その薬を、国連が、安保理ですけれども、安全保障理事会が、
大量破壊兵器を持っているイラクには、経済制裁を課せよう、という事で、経済制裁を課したその中に、
「抗がん剤をイラクに輸出してはいけない」
「新しい医療情報をイラクに教えてはいけない」、みたいなのが入っていて、
で、何とか白血病には、そういう抗がん剤なしには子どもたちが治らないので、どんどん、こう、死んでいくっていう現場に、98年に、私は居あわせたんですね。
その時、WHOの事務局が、バグダットの国連の事務所の中にあったんですよ。
「なんか、おかしいじゃないですか」というふうに私が言いに行ったら、
そしたらその、ま、
「サダムフセインが、大量破壊兵器を作るかもしれないから、抗がん剤はイラクには輸出させないんだ」
という話をしたんですけど、
でも、その後に、
「経済制裁を課した。それが原因で、すごく多くのイラクの子どもたちが亡くなっている、ということは承知している」って言うんです。
でもそんなのは、公式的には、WHOからは全く何の発表もないですね。
で、やっぱり国際的に、「低線量の内部被ばくは、あんまり大したことはないんだ」と、私はプロバガンダされてきたと思うんですね。
それは何故かって言うとやっぱり、IAEAとかWHOとかICRPという、さっきアメリカの8万9000人調べた、そのデータを基に、
このICRPというところが、放射線の危険と安全の線引きをしているんですけれども、
こういうところとか、国連科学委員会とか日本財団とかですね、日本原子力委員会っていうのは、
「大したことはない」っていうのをずーーーーっとアピールし続けているんですね。
一方で、「いや、すごく心配だ」と、「これは由々しき事だ」「気をつけなきゃいけないよ」というふうに言っているのが、
アメリカの、ニューヨーク科学アカデミーやドイツ放射線防護委員会とか、ヨーロッパの放射線防護委員会とか、そういうところはですね、
この人達が評価する安全のレベルよりも、もっともっと
「100倍も1000倍も、低線量の被ばくは危険だよ」っていうような発信をしているんですね。
で、私たちは、こういう二つの情報が同時にあるので、混乱している訳なんですけれども、
でも、今こうやって申し上げてきたように、原爆から始まって、「いったいどういうふうに被ばくが評価されてきたのか?」っていう歴史的な経緯を考えると、
やっぱり、「何か意図があって、この人達はやっているんじゃないかな」と思いますよね。
だから、そんなに呑気に「大丈夫」って言われている事をうのみにしてはですね、「子どもたちを守ることはできない」っていうのが、私のずっとこの間やってきた感覚なんですね。
<後半>「どんな病気になっても『それは放射線のせいではありませんよ』って言われる可能性は非常に高い」鎌仲ひとみ3/9子ども信州ネットキックオフイベント(内容書き出し)
それで一つですね、「喪失」って言うのが被ばくに伴って、なにか失ってしまうという、ものすごく大きなものを失ってしまうという感覚が、私にはあるんですよ。
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それは、イラクに行ったりですとか、世界中の放射能汚染地帯を取材したりとかして、
そして、今回の福島の事とかを取材していると、本当に感じる事は、
たとえば、
「地域そのものが、もう全部失われてしまう」とか、
「ゆっくりと健康が失われていく」とかですね、
それに、私たちはどうやったらいいのかな?って言う事ですけど、
やっぱりすごく難しさがあるのが、人間が、人間の五感の、においをかいだり、肌で感じたり、目で見たり、そういう五感を超えた出来事なんですよね。
で、どの放射能汚染地帯に行っても、みんな「気がつかなかった」って言うんですよ。
アメリカのハンフォードっていう、核兵器工場の風下に、ものすごく沢山、放射性物質がばら撒かれた時も、
そこに住んでいた農民たちは、「気がつかなかった」。
みんながすごく病気になっている、というのは知っていたし、自分たちの家族も、次々と不思議な病気になったりしていくって。
でも、生活に追われて、それが被ばくのせいだとは思いもしなかった。
こういうのをね、「無自覚な被ばく」って言うんです。
被ばくは、無自覚の進行するんです。
だから、工夫しないといけないんですよね。
でも、先程も言ったように、広島・長崎で起きたあの被ばく、人類で初めての、ものすごく大量の数の人達が、被曝させられ殺されたあの事実が、
「いったいなんだったのか?」っていうのを、一番考えなければいけなかったのは、私たち日本人なんですよね。
でも、たとえば、あの原爆は、ひとりの人間を殺すために必要なエネルギーっていうか、
たとえばウルトラマンが、「ウルトラマンビーム」って、わけのわからない光を出して、相手を倒しますよね。
で、一人の人間を殺してしまうために必要なエネルギーって、いったいどれくらいだろうか?と、
ピストルで撃つとか、ナイフで刺すとか、でも原爆は、ひとりの人間を20万回殺せるようなエネルギーを出して、殺したんです。
ああいうのを、過剰殺戮っていうんですよ。
だから、人間の肉体が消滅してしまった人たちもいたんですよね。
「あれはいったい何だったのか?」っていう事を、私たち日本人は、もっともっと考えたり話し合ったり、教育の中で伝えたり、体験を継承して行ったりっていう、
そういう営みを続けていかなければいけない、そういう民族なんですよ。
だけど、そういうのをしっかりとやってこなかったんですよね。
だからそこに、人間性が人間として踏みにじられた、という事ももちろんあった。
その中身が、そういう殺され方をしたという事ではなく、目に見えない被ばくをして生涯苦しんだのに、社会的に、「自分は被爆者だ」っていうと、就職差別だとか、結婚差別とかね。
それで身体がだるい、ものすごくだるくて働けない……「怠け者だ」って言われたりね。
そういう理不尽な差別を受けるので、自分から積極的に、「自分が被曝した」という事を、
自分の被害を、被害者として訴える事がかなわない社会を私たちは作ってきてしまったんですね。
だから今、福島で、まさに今、現在進行形で起きている事は、
「自分たちは汚染された」とか、「自分たちは被曝させられた」というのは、禁句なんです。
そんな事、絶対に言えないんですよ。
でもそれは、ものすごく深い、人間の心理に根ざしているんですよね。
そんなこと言ったら、自分で自分を否定してしまうとか、自分の心が折れてしまうとか、
そういう…でも、そこを掘り下げ救済をするっていう事が、やっぱり十分に、あの体験から日本社会はやってこなかったそのツケが、今出ていると思います。
「被爆者世界の終わりに」っていう映画から、私が被曝問題を取り始めてもう13年経つんですけれども、13年間、この被ばくに関する映画だけを4本とってきたんですが、
えっと、これ、サッカーしている、イラクの子どもたちがサッカーしている。
世界中の子どもたちは、サッカーして遊ぶし、福島でもサッカーしています。
子どもたちは、グラウンドでサッカーをしています。
私が、この1998年に行ってショックだったのは、「子どもたちが外で遊ぶだけで被曝する」ということだった。
「そんな事……あるのか!?」
でも今、日本ではそうなんですよね。
まさしく、私たちが生きている日本で、同じ事が起きるようになってしまった。
でも、どうやって、子どもを被ばくから守るか?っていう事を考えて、前に進んでいかないと、本当に子どもたちが救えないので、
今回、この信州ネットが発足した事は、本当に重要な事です。
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どうしたら守れるか?っていう事の具体策、最善の策を考えて、みんなでこうすれば、
「どうしようもないんだ」じゃなくて、「こうすればいいんだ」という、そういう具体策を提案して、
それをみんなで、「あ、こうすればいいんだ」っていう事を共有していくっていう事が、大事だと思います。
まず一つは、先程から言われている保養とかですね、避難したりとかですね、本当に、食品とかが安全かどうかを検査していくっていう事ですよね。
後は、情報を開いていくんですよね。
先程マコさんがおっしゃった、どんだけ放射能が出ているか?
どれだけ、さっきは、あれは毎時でいいんですか?
毎時1000万ベクレル。
当然ですよ。
だってね、メルトダウンして放射性物質がこう、ダラダラッと溶けて、そこにむき出しにあるそこに、そこを冷やさないと、また爆発しちゃう。
それを冷やすために、直接おだんごに、放射性物質の熱い熱い熱い熱いおだんごに、水をかけているだけなんです。
かければ、水蒸気が出るんですよね。
で、放射性物質は、ある一定の熱で熱すると、揮発性の物質になるんです。
つまり、放射性物質が気体になっちゃうんですよ。
だから、むき出しの放射性物質に、熱い熱いものに水をかければ、蒸気になるのは当たり前で、そこに何にも蓋をしてないんですよ。
で、2年経ったんですよ。
今度はですね、かけた水はもっと危険なんですね。
かけた水がダラダラ~っと、放射性物質を含みながら汚染水になって溝に入り、溝から深いプールの方にためているんですよね。
それが汚染水です。
それをタンクに入れて原発の裏にずーーーっと溜めているんですけど、ついにタンクが満杯になりました。
もうこれ以上溜められない。
だって、そんなの、これからいったいどれくらい続けるんですか。
で、東京電力は「もうこれは海に捨ててしまうしかしょうがない」と。
「しょうがない」と。
そっちの方が、こっちの方がですね、汚染の度合いは、空中に出るよりも多いんです。
蒸気になって出るよりも、水をかけて直接触れたものから、水の中に放射能を含んだ汚染水の方が、もちろん危険ですよね。
それが海中に出て、気体に出て、1000万ベクレルというのは、相当大変な値です。
そしてですね、いま、空間線量はちょっと下がってきています。
だけど、やっぱり私たちは、チェルノブイリに学ばなければならないので、これからは空間線量の高さよりも、土壌汚染、食品の汚染が、内部被ばくのカギになってきます。
だから、これはシュミレーションですごく大雑把な汚染地図なんですよね。
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これを、もっと精密な土壌調査をして、汚染マップを作らなければ、具体的な対策を建てる事が出来ないし、
避難するにしても、どこから避難させたらいいのか?という事が分からないんですね。
先ほど、原爆が同心円になりました。
あれは原爆だから、出てきた放射線は確かに、同じ距離にいれば同じだけの放射線を浴びるんですけれど、
原発事故は、放射性物質が放出されて、風向きによって、濃いと薄いが出るんです。
その、放射性物質を含んだ気体が飛んでいった時に、雪が降ったり雨が降ったりした時に、空中にある放射性物質を、雨や雪が叩き落として地表に降りそそいだ。
それが残って、こういう土壌汚染になっているんですね。
でも、気体はあったんですよ。
その気体が大事なんですよ。
えー、で、その気体が、今も出ている訳なんですけど、
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ここは、チェルノブイリの原発なんですが、こんな広範囲にわたって汚染が広がったんですが、皆さんここでちょっと、よくよく見て下さい。
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この、色の付いているところが汚染なんですけど、でも、これは気体がどうやって拡散したのか?という、この中は全部、放射性物質が含まれています。
だから、ここにいる人達は呼吸によって、これを吸いこんでいました。
雨が降りました。雪が降りました。霧が出ました……っていうところだけが、さっきの赤い色になっているんです。
だけど、この放射性物質を含んだ気体が通過したところにいた人達は、呼吸器を通じて吸いこんじゃった。
呼吸器を通じた被ばくが起きているんですね。
で、ここに行った時に、雪が降ったり雨が降ったり、こういうふうに。
これはですね、非常に精密なシュミレーションなんですね、フランスの原子力研究機関がつくったものなんですけど、
でも、こういうことももちろん、日本で起きたんですね。
それでどうなったか?というと、チェルノブイリの場合は、これはベラルーシなんですけど、こういう、原発の中心から離れた所にも、すごく濃いところが沢山出来たし、
さっき言った、煙がぐるぐると回ったところで土壌汚染が起きたのは、雨が降ってその時に、雨が降ったこういうところなんですよ。
でも、こういう所に住んでいる人だけが被曝したのではない、という証拠があるんですね。
これはベラルーシなんですけど、ここは、ポーランドとの国境なんです。
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ここは、600km離れています、600km。
で、ここは薄いんですよ、汚染が。
だから、これまではあんまり大したことはないと思われていたんですけど、去年ここに取材しに行ったら、
26年経っても、甲状腺チェックを毎年やっているんですね。
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そうすると、この方は29才なんですけど、86年当時は3歳だった。
その時にあの気体を、吸いこんじゃったんですね。
だから、いますごい問題が出ているんですよ。
1986年事故当時、すでに生まれていた子どもは全て、リスクを持っている、っていうのが、ベラルーシとかウクライナの考え方です。
だから、26年経ってもリスクは存在する、という事で、甲状腺医療検診を毎年やっているんですよ。
すごいGDPの低い国なんですけれども、日本よりももっともっと……だって……確か……福島は、2年に一回しか検査しないって、マコさんが言っているんですよね?
2年ですよね。
でも、こうやってちょっと問題が見つかると、半年に1回とか、すごく丁寧に見守るというか、そういう事をやっているんですね。
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で、この工場には、3000人の女たちが働いていて、この人達は本当に甲状腺が心配なので、この医療検診に必ず参加して、
たまたま、その工場にやって来てくれるので、無料でやってくれる検診なんですね。
無料で、全員やるんですよ。
そういう意味では、日本でだってですね、この全域に住んでいる人たちの検診が必要です。
大人も必要かもしれない、ひょっとしたら。
10代、20代ぐらいまでやった方がいいんじゃないかな、と思います。
そしてですね、地域で食品検査をする事が、日常的に行われています。
タダです。
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このジャガイモを、このおばさんが測ったら、7ベクレル位ありました。
みんな、自分の家で作って、高いか低いかもわからずに食べるので、すごい放射線量が上がっちゃったんですね。
で、10ベクレル食で、子どもの7割に健康異常が出る、という報告もあります。
10ベクレル食を食べ続ける事によって、体内にずーっと放射性物質があって、出ていかないっていう状態に会って、
一定量がずーっとある、という状態が保たれると、やっぱり健康リスクが高まる、という事になるんですね。
で、この子はですね、ナスチャーちゃんなんですけど、
私の「内部被ばくを生き抜く」っていう映画に出てくる、スモールニコワさんっていうお医者さんの患者さんで、生まれて……2歳位の時に、子宮がんになっちゃったんですよ。
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それが転移して、大変だったんです。
今は手術をして、こうやって元気そうに見える。
で、同じ姉妹、同じ学校の友達は、元気なんです。
こういう事が起きるんです。
放射能汚染を受けた場所に行くと、クラスの中で何人かが病気になるんです。
もちろん、全員が全員、すごく重大な病気になるわけではないけれども、何人かはなる。なっています。
そうすると、「じゃあ今、元気そうに見えるしいいんじゃないの?」と思うでしょ?
「甲状腺なんて命に別条ないよ」っていうんですよ、福島県立医大の人達は。
日本の甲状腺の専門家たちも、「いやぁ、そんなに大した手術じゃないんだ」と。
「子ども時代に甲状腺を取ったって、ホルモン剤を飲めばいいんだ」と。
「副作用もないし、大したことない」ってみんな言うんですけど、
このナスチャーちゃんは、こうやって、写真に写っている時は元気そうに見えますけど、
話をしてみると、「自分の子宮がもうない」「妊娠も出来ない」ということ、自分の将来に対して、ものすごく深く絶望しているんです。
カウンセリングを受けたりとかですね、もうすごい精神的なケアが大変です。
そういう事が起きるんですよ。
本当はならなくてもいい病気なんですよね、本来であればね。
でもそれが、放射線由来であるかどうか?っていうことが、すごく証明するのが難しいんですよね。
これからどんな病気に、今、福島にとどまり続けることで、どんな病気になっても、
「それは放射線のせいではありませんよ」って言われる可能性は非常に高いですね。
だから、なり損です。
だからこそ、病気にならない工夫をしなくちゃならないんですよ。
やっぱり大切なのは、被ばくの●を身につけることだと思います。
なんなのか?
わかってる事はどこまで分かっているのか?
わかっていない事の方が多いんですけど、分かっている事を私たちが理解する。
そして、なにをすれば防げるのか?っていうことも理解する。
これがすごく大事ですし。
えー、今、起きている事態は複雑です。
ものすごく複雑で、単に医療問題でもないし、地域全体の、文化的・社会的・経済的問題なんですね。
だから、先ほども佐藤さんがおっしゃったように、一概に避難できない、一概に除染したから住めるわけでもないし、すごく複雑なんですよね。
それをやっぱり、一つ一つ理解しなければいけないと私は思います。
だけど、その理解が進む前に、日本はそれを忘れようとしているんですよ。
忘却の波が。
なんかこう、「もう済んだ事だ」。
そういう事にしないためにも、私は、お母さんたちの苦悩を理解する必要があると思うんです、真っ先に。
「母親革命」というふうに、この映画の中で言っているんですけれども、「移住」か「とどまるか」の二者択一ではない解決が必要なんですね。
そして、チェルノブイリ連帯基金の代表の鎌田さんは、
「もし福島にとどまるなら手打ち続ける必要がある」と。
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それは、移住や避難保養がベスト、いろんなセカンドベストがあると思うんですけれども、
でも、確実に、福島にとどまり続ける子どもたちは、存在し続けます。
その子たちを、「避難しないから」ではなく、やっぱり手を打ち続ける。
何らかの最善の策を考え続けるっていう事を、外にいる私たちもしなくちゃいけない。
それはやっぱり、子どもを守ろうと苦闘するお母さん達と繋がるっていう事だと思うんですね。

これは私の「内部被ばくを生き抜く」に出てくる佐々木るりさんで、息子の●君ですけれども、本当に苦しんで悩んでいました。
だから、そういう悩みを少しでも軽くするために、そして、子どもたちの健康のために、この信州ネット、出来る事が広がってきました。
皆さん是非、協力をお願いします。
本の宣伝をしてもいいですか?

「ミツバチ革命が始まる」というのは、私の、13年間の映画をつくってきたことで気が付いた事を、本にさせていただきました。

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原発の、その先へ [ 鎌仲ひとみ ]
価格:1,365円(税込、送料込)
そしてこれは、福島大学の1年生と授業した本なんですけど、これは信州ネットではないんですけど、印税は全て、福島の子どもたちが、広河さんの沖縄に行く費用に寄付しています。

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鎌仲監督VS福島大学1年生 [ 鎌仲ひとみ ]
価格:735円(税込、送料込)
そして、「今こそエネルギーシフト」
飯田さんが書いた本なんですけど、この印税も全て、太陽光パネルを被災地に付けるお金に寄付していまして、もう200万円を超えました。
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今こそ、エネルギーシフト [ 飯田哲也 ]
価格:525円(税込、送料込)
みなさん、これを買っていただくだけで、小さな貢献になりますので、読んだらみんなで回してみていただくとかですね、
で、「内部被ばくを生き抜く」のビデオは上映権が付いていますので、買っていただいた方は、上映会を開く事が出来ます。
(DVDご購入方法はこちら)
ありがとうございます。
その分、いろんな人と会い、いろんな話をし、いろんなことを考えた。
今日は3月17日の日曜日。時間は午後3時ちょっと前。
その間に、『遺体』という、石井光太さんによって書き上げられた本を読み終え、今、田口ランディさんの『サンカーラ』を読み始めてる。
石井さんの本の帯には、
《震災、津波の果てに・生き延びた者は、膨大な数の死者を前に、立ち止まることすら許されなかったーーー遺体安置所をめぐる極限状態に迫る、壮絶なるルポルタージュ!》と書かれてある。
そして田口さんの本の帯には、
《迷いながら 私は問い続ける どう生きたらよいのでしょうか
福島、広島、水俣……日常を生きながら、重い問いかけを受けとめて行く。出会いに支えられて、歩き続ける》とある。
どう生きたらいいのか。
そのことをいつも、心のどこかで考え続けた週末……。
さて、この記事は、1週間ほど前に行われた『子ども信州ネットキックオフイベント』での、鎌仲ひとみさんの講演の内容を、きーこさんが書き起こしてくださったものです。
最近、2回ほど、それもたった30分とか45分とか、そういうビデオの書き起こしをして、そのために4時間も5時間もかかってしまうわたしはやっぱり、このきーこさんの情熱と根性のすごさに、心の底から感心しています。
それも毎日毎日です。あの事故以来……ありがとう、ほんとうに。
↓以下、こちらに打ち直しさせてもらいました。
<前半>「市民が、自分たちの権利・人権というものを獲得するために運動しようと思うと…同じ手が使われます」鎌仲ひとみ3/9子ども信州ネットキックオフイベント(内容書き出し)
鎌仲ひとみ氏(映画監督)「内部被ばくについて」
キックオフイベント
「子どもたちを放射能から守るために信州でできること」
2013年3月9日 動画はこちら↓
http://www.ustream.tv/recorded/29842796
01:15:41~

マコさん達のようにエンターテーメントでない、ちょっとお勉強になりますが、ちゃんと聞いて下さいね。
よろしくお願いします。
そして今日の、信州ネットワークの発足、本当におめでとうございます。
今日は、私たち日本人の、全員の課題であります、
これから、子どもたちをどうやって守っていくのか?
被ばくから守れるのか?という事を、一緒に考えていければと思っています。
そして、どうやって守っていくのか?のためには、やはり、被ばくについて知らなければいけないんですけれども、
先程も、マコさん達の話にあったようにですね、被ばくについて情報が混乱しているんですよね。
その情報の混乱の根っ子、というのがあるんですよ。
その根というのがどこにあるのか?というと、まず、被ばくを理解するための壁が、理解させないための壁が立ちはだかっておりまして、
その壁はいったい、いつ立ったんだ?といいますと、広島長崎に原爆が落とされた時に、この壁は立てられたみたいなものなんです。
そのおかげで、日本は唯一の被爆国と言われているんですけれども、教育では一切被ばくを教えないですね。
放射線は、人間にどんな影響を与えるのか?
こんなにも日本で、1945年の8月6日と8月9日に、世界中で最も多くの被爆者を一遍に出した国なのに、
「被ばくの中身」というものを、教育の中で、一切日本人に教えてこなかったんですね。
だから、今回、福島原発事故が起きた時も、ほとんどの日本人は「なに?」と。
確かに、原発が爆発したのは恐ろしい事だし、放射能はなんだか危険だし、という事は分かっているんだけれども、
「じゃあどれだけ危険なの?」
「逃げなきゃなんないわけ?」って言う、その危険の程度が分からない。
私は東京だったんですけれども、本当に、「こんな時に仕事に行くか!」って思う位に、みんな平気で仕事に行っていました。
放射性物質が飛んできている。
そういう予測が私は出来ているので、もちろんいろんな人に、
出来るだけ子どもを連れて遠くに「旅行だと思っていってしまいなさい」というふうに勧めましたけれども、
でも、なに一つ国からは、避難勧告とか、たとえば、家の中に屋内退避して、目張りをして換気扇を回さずに、みだりに外に出ないでしばらく閉じこもっていなさいとか、
本来は、そういう事をすべきだったんですね。
そういうことを一切しませんでした。
その、さっき言った根っ子というのはですね、原爆を落とした後に、アメリカが行った言論統制というのがあって、
原爆を落とした後に、アメリカがGHQで日本にやってきて、そして、そこで生き残った被爆者の人達にですね、
その人達は、すごい悲惨な体験をしたんですけれども、そして体がぼろぼろになったんですね。
「それに関して何一つしゃべるな」と。
で、お医者さんが治療すると、これまでに見たこともないような症状がでている。
「そういう事もしゃべるな」という、すごい厳しい言論統制を5年間やったんですね。
その5年間の間に、言論統制をするくらいですから、被爆者の救済というものはほとんど無かったんですね。
だからその間に、本当に、弱い人から死んでいったんです。
先程も、花粉症のたとえがありましたけれども、やっぱり被ばくに弱い強い、そして敏感とか鈍感とかあるわけですよ。
やっぱり、被ばくの影響を受けやすいのは子どもですから、
子どもからどんどん、被ばくした子どもから死んでいった。
で、その5年経った後にですね、今度はアメリカは、ABCCといいまして、「被ばくの影響を調査する」と言い出したんです、5年後に。
その5年後にですね、何をしたか?って言うと、
今度は、その5年間生き延びた、つまり、被ばくはしたけれども生き延びる事が出来た人たちを、合わせて8万9000人捕まえて、
そして、捕まえて離さないんですよ。本当に失礼なやり方で、人権無視するやり方で、治療しないで検査だけして、
いろんな、その人たちの人体的なデータをただただ集積していって、そしてその中身に関しては、ずーっと隠していたんです。
つまり被害を隠蔽したんですね。
もうひとつしたのは被ばくの過小評価をしました。
つまり、いろんな調査をしました。
こんな大規模な調査を、専門家たちでやったんです。
「私たちの見解が一番信憑性があるんです」だとかと言いながら、
そういうことをやり続けてきて、その生き証人がいるんですけれども、肥田先生、肥田舜太郎さんという、私に被ばくの事を教えてくれたお医者さんなんですけれども、

この方は、27歳の時に広島にいて、原爆がまさしく落ちた時に、その爆心地、広島の真ん中から6km離れた村にいて、その原爆が落ちるのを見てたんですね。
その後に、その村に、わらわらわらわらと、爆心地から何千人もの被ばく者が、ボロボロになって避難してきて、
本当に、人類史上、医師として初めて、そんなにも多くの被爆者を一遍に見て、一遍に治療しなくちゃいけないという局面に立った人なんですけれども、
弱冠27歳だったんですよね。
しかも、今度はその後にですね、原爆が落ちた時に、そこにいなかった人たちが、わらわらとこの村にやってきたんですね。
つまり、広島がすごい被害を受けたというのを聞いて、日本海側にいたり、九州にいたり、四国にいたり、
原爆が落ちた後に肉親を捜しに来た人たちが、放射能まみれの爆心地を、うろうろとがれきの中をさまよって、
そこで食事もし、水も飲み、埃も吸いこんで、そして、内部被ばくをいっぱいして、で、その肥田先生がいる戸坂村に来た時に、
実際原爆に遭った人たちと、同じ症状を出し始めたんですね。
紫斑が出来る、熱を出す、髪の毛が抜ける、ありとあらゆる粘膜から出血する、下血する、っていう感じで、
肥田先生は何の情報も無いので、「これはうつるんだ」と、「伝染病かもしれない」……何の情報も無いわけですからね。
で、肥田先生がGHQに「情報をくれ」と、
「治療するためには、原爆で引き起こされたこの病気が、何なのか知りたい」という事を聞きに行って、
それで、4回刑務所に叩きこまれているんです。
でも、なに一つ教えてもらえなかったんです。
その時から内部被ばくは、ずっと隠蔽され続けてきました。
そういうふうに、内部被ばくを隠しつつ、なにが起きたのかというと、
今度は、被ばくした人たちの事を、やっぱり補償しなければいけないと、ある程度認めてやらなければ収まりが付かない、ということになって、
こういうふうに、これは同心円というんですけれども、

これが、原爆が投下された爆心地のグランドゼロなんですけど、この真ん中から線を引いて、2km、4km、6kmとか。
「この円の中にいた人は、同等の被曝をした」というふうに考えて、
「この2km圏内にいた人には補償しましょう」
ところが、一歩でも外に出ると、「補償しません」というやり方をやったんですね。
そうすると、同じ被ばくをした人たちの中で、こう…感情的ないがみ合いが引き起こされて、
なんか市民が、自分たちの権利・人権というものを獲得するために運動しようと思うと、同じ手が使われます。
私たちも今、気をつけなければならないのは、
やはりやり方の違いとか、補償の違いによって、同じ被害者が、被害者同士でいがみ合うっていうか、一緒に手を握れないっていう状態が起きるんですね。
それは、運動全体の弱体化に繋がるんです。
今回こうやって、信州ネットが立ち上がりました。
本当に、いろんな考え方の人達が、ただ一つ
「子どもたちを、いかに迅速に効果的に、被ばくから守って、健康で安全で安心な毎日を送る事が出来るか」
っていうその事に一点集中して、やり方の違いとか考え方の違いとか、なんかそういういろんな違いを乗り越えていくっていう課題は、私はあると思うんですよ。
でも歴史的にみると、差別。
で、原爆が落ちた後にですね、何十万人という軍隊の兵士たちが、全国から集められてきた若者たちがですね、
広島だけでも14万人が即死したわけですから、その14万人の遺体を…こう…処理するっていう作業をさせられました。
たとえば、そこに遺体を重ねて焼くとかですね、そうすると、遺体全体が放射性物質になっているので、そんな、戦後にマスクもある訳んですよ、全部吸いこんじゃう。
で、内部被ばくもしたその人たちの被害を、日本政府はほとんど認めてきていないんです。
やっぱり、その後からいろんな病気が出てきて、入市被ばくの人達が、「自分たちの被害も、原爆のせいだという事を認めてくれ」という事を申し立てたら、
直爆に遭った人も、後から入った人も同じように、
「あれは戦争だったんだから、その被害に関しては受忍しなさい」と、
「受け止めて耐えなさい」「耐え忍びなさい」という返答が国から帰ってきて、
それで、ほとんど数%ぐらいしか、被害を認めて医療支援をしてもらっていないんですね。
そういうことを67年間やってきたので、肥田先生は、その集団訴訟をやっているんですね。
死ぬ前に、やっぱりこの、人生の健康被害の苦しみ、
「普通の人生を奪われた苦しみを認めてほしい」という事の裁判をやって、
7回やったんですけれども、7回とも地裁では勝ったんです。
でも、日本政府は控訴して、認めようとしていないんですよ。
先程も、水俣病の裁判の事をご紹介いただいていましたけれども、同じような…。
裁判、裁判というよりも、司法そのものが、やっぱりこう、独立性を失わせるような事があるんじゃないかなと思われます。
でもそうやって、実際、明らかに被ばくしたと、原爆が落とされた、そしてそこに入っていった、そこにいた人たちに関してすら、
日本政府は67年間、その被害をまっとうに評価しようとしてこなかったんですから、
今回、福島で起きた事を進んで、被曝によっておこる被害をですね、救済するような仕組みが果たしてあるのかな?と……。
まぁ、ないんですね、無いんですよ、今。
だから、ここは私たちの頑張りどころなんですね。
で、低線量と呼んでいますけれども、100ミリシーベルト。
1年間に100ミリシーベルト以下の被ばくの事を、低線量と呼んでいるんですけど、
こういう言い方が、まァ、そういう専門家たちは、低線量って言うんですけれど、
私は、高線量だと思うんですね。
でも、それに関しては、「確執」と私は呼んでいるんですけれど、
二つの意見がずーーっと平行に対立していて、決定打というか、一つにまとまっていないんです。
だから、もちろん私たち普通の人は、それに関して混乱するのは当たり前なんですね。
で、無害派と言って
「大したことないんだよ、100ミリ浴びても大丈夫だよ」っていうふうに言っている人たちは、確実にいます。
その人達は、たとえばIAEA国際原子力機関。
これは、「世界中に原子力技術を普及させよう」「原発を建てよう」という人たち。
WHO、WHOはですね、
本来は、そういう子どもたちの健康被害、放射線による健康被害を、真っ先に防護しなければならない国際機関なんですけれども、
何故だか、手が出せないんですね、今回の問題には。
それは、IAEAと協定を結んでいて、WHOが、どんな、すごく重大な低線量の被ばくに関する健康の事実をつかんだとしても、
この、「IAEAのお許し無しには、発表することはできない」というふうに、もう約束してしまっているんですね。
つまり、WHOの独立性、というものはここで失われてしまっている訳なんですけど、だから、あんまりいい事をしていないんですよ、被曝問題に関しては。
私が「なんでかなぁ?」とずーっと思っていたのは、
イラクに行った時にですね、イラクの子どもたちが、ものすごい小児癌や小児白血病が増えていて、で……薬が無いんですよ。

その薬を、国連が、安保理ですけれども、安全保障理事会が、
大量破壊兵器を持っているイラクには、経済制裁を課せよう、という事で、経済制裁を課したその中に、
「抗がん剤をイラクに輸出してはいけない」
「新しい医療情報をイラクに教えてはいけない」、みたいなのが入っていて、
で、何とか白血病には、そういう抗がん剤なしには子どもたちが治らないので、どんどん、こう、死んでいくっていう現場に、98年に、私は居あわせたんですね。
その時、WHOの事務局が、バグダットの国連の事務所の中にあったんですよ。
「なんか、おかしいじゃないですか」というふうに私が言いに行ったら、
そしたらその、ま、
「サダムフセインが、大量破壊兵器を作るかもしれないから、抗がん剤はイラクには輸出させないんだ」
という話をしたんですけど、
でも、その後に、
「経済制裁を課した。それが原因で、すごく多くのイラクの子どもたちが亡くなっている、ということは承知している」って言うんです。
でもそんなのは、公式的には、WHOからは全く何の発表もないですね。
で、やっぱり国際的に、「低線量の内部被ばくは、あんまり大したことはないんだ」と、私はプロバガンダされてきたと思うんですね。
それは何故かって言うとやっぱり、IAEAとかWHOとかICRPという、さっきアメリカの8万9000人調べた、そのデータを基に、
このICRPというところが、放射線の危険と安全の線引きをしているんですけれども、
こういうところとか、国連科学委員会とか日本財団とかですね、日本原子力委員会っていうのは、
「大したことはない」っていうのをずーーーーっとアピールし続けているんですね。
一方で、「いや、すごく心配だ」と、「これは由々しき事だ」「気をつけなきゃいけないよ」というふうに言っているのが、
アメリカの、ニューヨーク科学アカデミーやドイツ放射線防護委員会とか、ヨーロッパの放射線防護委員会とか、そういうところはですね、
この人達が評価する安全のレベルよりも、もっともっと
「100倍も1000倍も、低線量の被ばくは危険だよ」っていうような発信をしているんですね。
で、私たちは、こういう二つの情報が同時にあるので、混乱している訳なんですけれども、
でも、今こうやって申し上げてきたように、原爆から始まって、「いったいどういうふうに被ばくが評価されてきたのか?」っていう歴史的な経緯を考えると、
やっぱり、「何か意図があって、この人達はやっているんじゃないかな」と思いますよね。
だから、そんなに呑気に「大丈夫」って言われている事をうのみにしてはですね、「子どもたちを守ることはできない」っていうのが、私のずっとこの間やってきた感覚なんですね。
<後半>「どんな病気になっても『それは放射線のせいではありませんよ』って言われる可能性は非常に高い」鎌仲ひとみ3/9子ども信州ネットキックオフイベント(内容書き出し)
それで一つですね、「喪失」って言うのが被ばくに伴って、なにか失ってしまうという、ものすごく大きなものを失ってしまうという感覚が、私にはあるんですよ。

それは、イラクに行ったりですとか、世界中の放射能汚染地帯を取材したりとかして、
そして、今回の福島の事とかを取材していると、本当に感じる事は、
たとえば、
「地域そのものが、もう全部失われてしまう」とか、
「ゆっくりと健康が失われていく」とかですね、
それに、私たちはどうやったらいいのかな?って言う事ですけど、
やっぱりすごく難しさがあるのが、人間が、人間の五感の、においをかいだり、肌で感じたり、目で見たり、そういう五感を超えた出来事なんですよね。
で、どの放射能汚染地帯に行っても、みんな「気がつかなかった」って言うんですよ。
アメリカのハンフォードっていう、核兵器工場の風下に、ものすごく沢山、放射性物質がばら撒かれた時も、
そこに住んでいた農民たちは、「気がつかなかった」。
みんながすごく病気になっている、というのは知っていたし、自分たちの家族も、次々と不思議な病気になったりしていくって。
でも、生活に追われて、それが被ばくのせいだとは思いもしなかった。
こういうのをね、「無自覚な被ばく」って言うんです。
被ばくは、無自覚の進行するんです。
だから、工夫しないといけないんですよね。
でも、先程も言ったように、広島・長崎で起きたあの被ばく、人類で初めての、ものすごく大量の数の人達が、被曝させられ殺されたあの事実が、
「いったいなんだったのか?」っていうのを、一番考えなければいけなかったのは、私たち日本人なんですよね。
でも、たとえば、あの原爆は、ひとりの人間を殺すために必要なエネルギーっていうか、
たとえばウルトラマンが、「ウルトラマンビーム」って、わけのわからない光を出して、相手を倒しますよね。
で、一人の人間を殺してしまうために必要なエネルギーって、いったいどれくらいだろうか?と、
ピストルで撃つとか、ナイフで刺すとか、でも原爆は、ひとりの人間を20万回殺せるようなエネルギーを出して、殺したんです。
ああいうのを、過剰殺戮っていうんですよ。
だから、人間の肉体が消滅してしまった人たちもいたんですよね。
「あれはいったい何だったのか?」っていう事を、私たち日本人は、もっともっと考えたり話し合ったり、教育の中で伝えたり、体験を継承して行ったりっていう、
そういう営みを続けていかなければいけない、そういう民族なんですよ。
だけど、そういうのをしっかりとやってこなかったんですよね。
だからそこに、人間性が人間として踏みにじられた、という事ももちろんあった。
その中身が、そういう殺され方をしたという事ではなく、目に見えない被ばくをして生涯苦しんだのに、社会的に、「自分は被爆者だ」っていうと、就職差別だとか、結婚差別とかね。
それで身体がだるい、ものすごくだるくて働けない……「怠け者だ」って言われたりね。
そういう理不尽な差別を受けるので、自分から積極的に、「自分が被曝した」という事を、
自分の被害を、被害者として訴える事がかなわない社会を私たちは作ってきてしまったんですね。
だから今、福島で、まさに今、現在進行形で起きている事は、
「自分たちは汚染された」とか、「自分たちは被曝させられた」というのは、禁句なんです。
そんな事、絶対に言えないんですよ。
でもそれは、ものすごく深い、人間の心理に根ざしているんですよね。
そんなこと言ったら、自分で自分を否定してしまうとか、自分の心が折れてしまうとか、
そういう…でも、そこを掘り下げ救済をするっていう事が、やっぱり十分に、あの体験から日本社会はやってこなかったそのツケが、今出ていると思います。
「被爆者世界の終わりに」っていう映画から、私が被曝問題を取り始めてもう13年経つんですけれども、13年間、この被ばくに関する映画だけを4本とってきたんですが、
えっと、これ、サッカーしている、イラクの子どもたちがサッカーしている。
世界中の子どもたちは、サッカーして遊ぶし、福島でもサッカーしています。
子どもたちは、グラウンドでサッカーをしています。
私が、この1998年に行ってショックだったのは、「子どもたちが外で遊ぶだけで被曝する」ということだった。
「そんな事……あるのか!?」
でも今、日本ではそうなんですよね。
まさしく、私たちが生きている日本で、同じ事が起きるようになってしまった。
でも、どうやって、子どもを被ばくから守るか?っていう事を考えて、前に進んでいかないと、本当に子どもたちが救えないので、
今回、この信州ネットが発足した事は、本当に重要な事です。

どうしたら守れるか?っていう事の具体策、最善の策を考えて、みんなでこうすれば、
「どうしようもないんだ」じゃなくて、「こうすればいいんだ」という、そういう具体策を提案して、
それをみんなで、「あ、こうすればいいんだ」っていう事を共有していくっていう事が、大事だと思います。
まず一つは、先程から言われている保養とかですね、避難したりとかですね、本当に、食品とかが安全かどうかを検査していくっていう事ですよね。
後は、情報を開いていくんですよね。
先程マコさんがおっしゃった、どんだけ放射能が出ているか?
どれだけ、さっきは、あれは毎時でいいんですか?
毎時1000万ベクレル。
当然ですよ。
だってね、メルトダウンして放射性物質がこう、ダラダラッと溶けて、そこにむき出しにあるそこに、そこを冷やさないと、また爆発しちゃう。
それを冷やすために、直接おだんごに、放射性物質の熱い熱い熱い熱いおだんごに、水をかけているだけなんです。
かければ、水蒸気が出るんですよね。
で、放射性物質は、ある一定の熱で熱すると、揮発性の物質になるんです。
つまり、放射性物質が気体になっちゃうんですよ。
だから、むき出しの放射性物質に、熱い熱いものに水をかければ、蒸気になるのは当たり前で、そこに何にも蓋をしてないんですよ。
で、2年経ったんですよ。
今度はですね、かけた水はもっと危険なんですね。
かけた水がダラダラ~っと、放射性物質を含みながら汚染水になって溝に入り、溝から深いプールの方にためているんですよね。
それが汚染水です。
それをタンクに入れて原発の裏にずーーーっと溜めているんですけど、ついにタンクが満杯になりました。
もうこれ以上溜められない。
だって、そんなの、これからいったいどれくらい続けるんですか。
で、東京電力は「もうこれは海に捨ててしまうしかしょうがない」と。
「しょうがない」と。
そっちの方が、こっちの方がですね、汚染の度合いは、空中に出るよりも多いんです。
蒸気になって出るよりも、水をかけて直接触れたものから、水の中に放射能を含んだ汚染水の方が、もちろん危険ですよね。
それが海中に出て、気体に出て、1000万ベクレルというのは、相当大変な値です。
そしてですね、いま、空間線量はちょっと下がってきています。
だけど、やっぱり私たちは、チェルノブイリに学ばなければならないので、これからは空間線量の高さよりも、土壌汚染、食品の汚染が、内部被ばくのカギになってきます。
だから、これはシュミレーションですごく大雑把な汚染地図なんですよね。

これを、もっと精密な土壌調査をして、汚染マップを作らなければ、具体的な対策を建てる事が出来ないし、
避難するにしても、どこから避難させたらいいのか?という事が分からないんですね。
先ほど、原爆が同心円になりました。
あれは原爆だから、出てきた放射線は確かに、同じ距離にいれば同じだけの放射線を浴びるんですけれど、
原発事故は、放射性物質が放出されて、風向きによって、濃いと薄いが出るんです。
その、放射性物質を含んだ気体が飛んでいった時に、雪が降ったり雨が降ったりした時に、空中にある放射性物質を、雨や雪が叩き落として地表に降りそそいだ。
それが残って、こういう土壌汚染になっているんですね。
でも、気体はあったんですよ。
その気体が大事なんですよ。
えー、で、その気体が、今も出ている訳なんですけど、

ここは、チェルノブイリの原発なんですが、こんな広範囲にわたって汚染が広がったんですが、皆さんここでちょっと、よくよく見て下さい。
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この、色の付いているところが汚染なんですけど、でも、これは気体がどうやって拡散したのか?という、この中は全部、放射性物質が含まれています。
だから、ここにいる人達は呼吸によって、これを吸いこんでいました。
雨が降りました。雪が降りました。霧が出ました……っていうところだけが、さっきの赤い色になっているんです。
だけど、この放射性物質を含んだ気体が通過したところにいた人達は、呼吸器を通じて吸いこんじゃった。
呼吸器を通じた被ばくが起きているんですね。
で、ここに行った時に、雪が降ったり雨が降ったり、こういうふうに。
これはですね、非常に精密なシュミレーションなんですね、フランスの原子力研究機関がつくったものなんですけど、
でも、こういうことももちろん、日本で起きたんですね。
それでどうなったか?というと、チェルノブイリの場合は、これはベラルーシなんですけど、こういう、原発の中心から離れた所にも、すごく濃いところが沢山出来たし、
さっき言った、煙がぐるぐると回ったところで土壌汚染が起きたのは、雨が降ってその時に、雨が降ったこういうところなんですよ。
でも、こういう所に住んでいる人だけが被曝したのではない、という証拠があるんですね。
これはベラルーシなんですけど、ここは、ポーランドとの国境なんです。
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ここは、600km離れています、600km。
で、ここは薄いんですよ、汚染が。
だから、これまではあんまり大したことはないと思われていたんですけど、去年ここに取材しに行ったら、
26年経っても、甲状腺チェックを毎年やっているんですね。
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そうすると、この方は29才なんですけど、86年当時は3歳だった。
その時にあの気体を、吸いこんじゃったんですね。
だから、いますごい問題が出ているんですよ。
1986年事故当時、すでに生まれていた子どもは全て、リスクを持っている、っていうのが、ベラルーシとかウクライナの考え方です。
だから、26年経ってもリスクは存在する、という事で、甲状腺医療検診を毎年やっているんですよ。
すごいGDPの低い国なんですけれども、日本よりももっともっと……だって……確か……福島は、2年に一回しか検査しないって、マコさんが言っているんですよね?
2年ですよね。
でも、こうやってちょっと問題が見つかると、半年に1回とか、すごく丁寧に見守るというか、そういう事をやっているんですね。
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で、この工場には、3000人の女たちが働いていて、この人達は本当に甲状腺が心配なので、この医療検診に必ず参加して、
たまたま、その工場にやって来てくれるので、無料でやってくれる検診なんですね。
無料で、全員やるんですよ。
そういう意味では、日本でだってですね、この全域に住んでいる人たちの検診が必要です。
大人も必要かもしれない、ひょっとしたら。
10代、20代ぐらいまでやった方がいいんじゃないかな、と思います。
そしてですね、地域で食品検査をする事が、日常的に行われています。
タダです。
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このジャガイモを、このおばさんが測ったら、7ベクレル位ありました。
みんな、自分の家で作って、高いか低いかもわからずに食べるので、すごい放射線量が上がっちゃったんですね。
で、10ベクレル食で、子どもの7割に健康異常が出る、という報告もあります。
10ベクレル食を食べ続ける事によって、体内にずーっと放射性物質があって、出ていかないっていう状態に会って、
一定量がずーっとある、という状態が保たれると、やっぱり健康リスクが高まる、という事になるんですね。
で、この子はですね、ナスチャーちゃんなんですけど、
私の「内部被ばくを生き抜く」っていう映画に出てくる、スモールニコワさんっていうお医者さんの患者さんで、生まれて……2歳位の時に、子宮がんになっちゃったんですよ。
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それが転移して、大変だったんです。
今は手術をして、こうやって元気そうに見える。
で、同じ姉妹、同じ学校の友達は、元気なんです。
こういう事が起きるんです。
放射能汚染を受けた場所に行くと、クラスの中で何人かが病気になるんです。
もちろん、全員が全員、すごく重大な病気になるわけではないけれども、何人かはなる。なっています。
そうすると、「じゃあ今、元気そうに見えるしいいんじゃないの?」と思うでしょ?
「甲状腺なんて命に別条ないよ」っていうんですよ、福島県立医大の人達は。
日本の甲状腺の専門家たちも、「いやぁ、そんなに大した手術じゃないんだ」と。
「子ども時代に甲状腺を取ったって、ホルモン剤を飲めばいいんだ」と。
「副作用もないし、大したことない」ってみんな言うんですけど、
このナスチャーちゃんは、こうやって、写真に写っている時は元気そうに見えますけど、
話をしてみると、「自分の子宮がもうない」「妊娠も出来ない」ということ、自分の将来に対して、ものすごく深く絶望しているんです。
カウンセリングを受けたりとかですね、もうすごい精神的なケアが大変です。
そういう事が起きるんですよ。
本当はならなくてもいい病気なんですよね、本来であればね。
でもそれが、放射線由来であるかどうか?っていうことが、すごく証明するのが難しいんですよね。
これからどんな病気に、今、福島にとどまり続けることで、どんな病気になっても、
「それは放射線のせいではありませんよ」って言われる可能性は非常に高いですね。
だから、なり損です。
だからこそ、病気にならない工夫をしなくちゃならないんですよ。
やっぱり大切なのは、被ばくの●を身につけることだと思います。
なんなのか?
わかってる事はどこまで分かっているのか?
わかっていない事の方が多いんですけど、分かっている事を私たちが理解する。
そして、なにをすれば防げるのか?っていうことも理解する。
これがすごく大事ですし。
えー、今、起きている事態は複雑です。
ものすごく複雑で、単に医療問題でもないし、地域全体の、文化的・社会的・経済的問題なんですね。
だから、先ほども佐藤さんがおっしゃったように、一概に避難できない、一概に除染したから住めるわけでもないし、すごく複雑なんですよね。
それをやっぱり、一つ一つ理解しなければいけないと私は思います。
だけど、その理解が進む前に、日本はそれを忘れようとしているんですよ。
忘却の波が。
なんかこう、「もう済んだ事だ」。
そういう事にしないためにも、私は、お母さんたちの苦悩を理解する必要があると思うんです、真っ先に。
「母親革命」というふうに、この映画の中で言っているんですけれども、「移住」か「とどまるか」の二者択一ではない解決が必要なんですね。
そして、チェルノブイリ連帯基金の代表の鎌田さんは、
「もし福島にとどまるなら手打ち続ける必要がある」と。
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それは、移住や避難保養がベスト、いろんなセカンドベストがあると思うんですけれども、
でも、確実に、福島にとどまり続ける子どもたちは、存在し続けます。
その子たちを、「避難しないから」ではなく、やっぱり手を打ち続ける。
何らかの最善の策を考え続けるっていう事を、外にいる私たちもしなくちゃいけない。
それはやっぱり、子どもを守ろうと苦闘するお母さん達と繋がるっていう事だと思うんですね。
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これは私の「内部被ばくを生き抜く」に出てくる佐々木るりさんで、息子の●君ですけれども、本当に苦しんで悩んでいました。
だから、そういう悩みを少しでも軽くするために、そして、子どもたちの健康のために、この信州ネット、出来る事が広がってきました。
皆さん是非、協力をお願いします。
本の宣伝をしてもいいですか?
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「ミツバチ革命が始まる」というのは、私の、13年間の映画をつくってきたことで気が付いた事を、本にさせていただきました。
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そしてこれは、福島大学の1年生と授業した本なんですけど、これは信州ネットではないんですけど、印税は全て、福島の子どもたちが、広河さんの沖縄に行く費用に寄付しています。
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そして、「今こそエネルギーシフト」
飯田さんが書いた本なんですけど、この印税も全て、太陽光パネルを被災地に付けるお金に寄付していまして、もう200万円を超えました。
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みなさん、これを買っていただくだけで、小さな貢献になりますので、読んだらみんなで回してみていただくとかですね、
で、「内部被ばくを生き抜く」のビデオは上映権が付いていますので、買っていただいた方は、上映会を開く事が出来ます。
(DVDご購入方法はこちら)
ありがとうございます。