書き起こしをしました。
このドイツのZDFテレビの取材は、簡潔でいて、詳しい事情を分かり易くまとめてくれているので、いつもありがたく観させてもらっています。
今でも立ち入り禁止の警戒区域という地域の、除染を始めると言う政府。
日本は、チェルノブイリの二の舞にはならん、ということらしい。
役人は、
「住民の方々が長いこと生活し、仕事を営んできた場所で、畑や森、川や海と強いつながりを持っていて、重要な意味がある。
仮設の住宅とかに暮らしてる住民を、故郷に帰れるようにしてあげたい」と言う。
そんなこと、原発を無理矢理押し付けた、どの村や町で暮らしてる人にも言えることやと思う。
誘致する時は、そういうことを一切合切無視して、札束をばらまき、不必要で気色悪いほどに立派な箱もんドカドカ建てて、言うこと聞かせてきたんちゃうんか。
それが、いったん事故を起こした途端に、コロッと言うこと変えて、いやちゃうな、言うてることは安全ですよ~安心ですよ~やからおんなじようなもんやな。
ほんで、放射性物質まみれの、中途半端に掻いたり剥いだりしただけの、しかもそれがバンバンあっちこっちに積まれたり埋められたりしたまんまのとこに、
望郷の念に駆られてる、地震や津波ですでに、想像を絶するようなえらい目に遭うた人や、遭うてはせんでも事故で生活を根こそぎぶっ壊された人の弱みにつけ込んで、税金払わすためにとにかく戻す。
どこまで腐ってんねん!人でなし!
最悪事故から2年、除染・甲状腺がん【ドイツZDFテレビ】
時速が最大で1000キロにも及んだスピードで、津波が日本の沿岸に押し寄せたのは、2年前のことである。
ここ富岡町では、波がほぼ30メートルの高さで襲い、断崖を水浸しにした。
私たちは去年、ここを一度訪れているが、今も状況はあまり変わっていない。
がれきを取り除く作業は、ほとんどの市町村で完了しているが、ここではなにも行われていない。
「理由は簡単です」と、原子力エンジニアの名嘉幸照氏が語る。
彼は、かつてここで暮らしながら、仕事をしてきた人だ。
名嘉幸照(原子力エンジニア):
ここは今でも立ち入り禁止の警戒区域なので、津波の被害の後始末ができないのです。
ここを見るのは、非常に辛いです。
富岡町は、立ち入り禁止区域に入っている。
ちょうど、福島第二原発と第一の間に位置している。
いや、というよりは、かつての第一原発の名残というべきだろうか。
通行許可証を手に、防護服で身を固め、中に入ることが許される。
そして、防護服はもちろん、ガイガーカウンターが欠かせない。
これで、警戒区域内での滞在中に、どれだけ被ばくしたかを測定する。
チェックポイントで、身分証明書や許可証がチェックされ、ここからゴーストタウンが始まる。
放射線量が高すぎて、ここには人が住むことはできない。
名嘉幸照(原子力エンジニア):
ここでも除染を始めるそうです。
少なくとも部分的に……。
でも、政府が、町全体、この地方全体を、除染できるとは思えません。
しかし政府は、それこそを目指している。
チェルノブイリのように、事故があってからこれだけ経つのに、今だに立ち入り禁止区域がある、そんなことにならないよう、
日本では、放射線で汚染されたゴーストタウンを、また蘇らせようというのだ。
それを説明するのは、環境省の除染チーム担当の、小沢晴司氏だ。
小沢晴司(環境省の除染チーム):
私たちが行う除染地域は、住民の方々が長いこと生活し、仕事を営んできた場所です。
ここには畑、森、町、川や海があり、どれもが皆、強いつながりをもっています。
この場所は、住民たちには、とても重要な意味があるのです。
ですから、除染作業をする際には、そのことを配慮しなければなりません。
そして、仮設の住宅などに暮らしている住民が、故郷に帰れるようにしてあげたいと思っています。
環境省が開いている、除染情報プラザでは、除染担当員が、除染作業のプロセスを、分かりやすく説明するモデルを見せてくれた。
モデルを見る限り、念入りな庭仕事、という感じだ。
小笠原かつひこ(除染情報プラザ・除染担当員):
どの除染作業でもまず、取り除かれたものが、このフレキシブルコンテナの中に収集され、この中に保管されます。
この、フレキシブルコンテナの紫外線耐久年数を検査しましたが、3年から5年は、使用に耐えます。
質問:
このコンテナは、放射線も遮断するのですか?
小笠原かつひこ(除染情報プラザ・除染担当員):
いいえ、放射線は遮断しません。
土壌を掻き、レーキで掻きならし、ツルハシで掘り返して、放射線で汚染された表土を、15センチメートル削り取る。
潅木を刈り込み、落ち葉を掃き集め、線量を下げる。
まったく、ヘラクレスの大仕事である。(ブログ主による注釈・ヘラクレス⇒ギリシャ神話の登場人物の中でも、力と仕事の象徴として見られていることからの揶揄)
線量が一番高い地域だけでも、ほぼザールラントに匹敵する広さだ。(注釈・ザールラント⇒ドイツ西端の州。面積2567㎢、人口108万4千人"1995年当時")
福島の山奥で、私たちは除染作業に携わっている、作業員の一人と落ち合った。
「政府とやくざが怖いので、顔も名前も隠しておきたい」と言う。
彼が言うには、やくざがこの除染という、利得の多い仕事のほとんどを取り仕切っているのだそうだ。
公には、政府は作業員に、危険手当てを含め、一日当たり、約27000円払っている。
作業員は、線量の高い地域で働かなければいけないからである。
しかし、そのうち、実際に作業員の手に渡るのは、ごく一部だ。
彼はたとえば、約1万円しか受け取らなかったと言う。
残りはすべて、やくざにピンハネされるのだ。
作業員はウソをつかれ、だまされていると言う。
除染作業員:
作業のはじめに、仕事の説明会があったのですが、そこでは、20km以内の警戒区域で働く、などということは、一切言われませんでした。
したがって、危険手当てをもらう権利がある、ということも知りませんでした。
彼は、だまされたことを知ってその会社を辞め、2日後に、他の会社で働き始めた。
支払いは、40ユーロ(5千円ほど)多くなったが、この会社は、除染作業をあまり真剣に考えていないと言う。
除染作業員:
集めたものを、除染区域と指定されている区域の、反対側に持って行って捨てろ、という指示を受けました。
それで、指示に従い、とにかく全部、反対側に持って行って捨てたんですね。
どうして反対側に持って行って捨てるのか、という理由に対しては、
そこは除染区域に指定されていないので、そこに、少しばかり汚染された枝が落ちていても問題ない、ということでした。
しかし、こうして放射能物質が、森のもっと奥深くに投げ込まれていいわけはない。
除染作業員:
ずっと急な斜面で働いているので、集めたものを上まで運ぶのはかなりしんどいのですが、上で監督が見張っていて、
とにかく、何でも下の川に投げ込め、と指示しました。
最初は信じられなかったんですが、2度も3度もそう言われ、その指示がだんだん命令調になっていき、
いいからさっさと早く川に投げ込め!と怒鳴られました。
それで私も、他の作業員と一緒に、その指示に従わざるを得ませんでした。
彼の話が正しいことを証明する情景があったが、ここでは法的理由から、お見せすることができない。
放射能のゴミを川に放棄?
そんなことがあっていいのだろうか?
このことを、環境省の除染担当官に聞いてみたが、まさに役人の答、としか言いようのないものが返ってきた。
小沢晴司(環境省の除染チーム):
そのようなことがあったことに関しては、本当に残念です。
そのようなことが二度と起こらないように、これから厳重にチェックし、その旨、各会社にも申し伝えました。
しかしたとえ、誰もがその指示に従ったところで、原子力のゴミのきちんとした処理は、何世代にも渡る問題となるだろう。
福島だけでなく、周辺の警戒区域外でも、プラスチックの袋に、一時的に土壌や潅木が詰め込まれ、ただ外に放置されているだけだ。
これらの袋は、放射線を遮断することはできないが、風や雨で散乱するのを防ぐためだと言う。
警戒区域外で、除染の状態を測定している、環境保護団体グリーンピースのメンバーに会った。
彼の判断は明快だった。
Heinz Smital(環境保護団体グリーンピース):
これは、即席の、原子力廃棄物の保管所です。
落ち葉、枝、土など、森や野原から集めたものを、道路に並べている。
これを見るだけで、こんなに大きい地域を除染しようなどという目論見が、いかに不可能かということを示しています。
こんなことは、希望のない企てに過ぎません。
しかも、これらのプラスチックの袋は、3年から5年しか耐久性が無い。
それまでには、これらの汚染物質は、ちゃんと処分されなければいけないのだ。
もっとひどいのが、ここ福島市のような、住宅地域での除染である。
一時的な保管場所さえつくるのが困難なため、ずっと、恐ろしい安易な解決策がとられている。
それを証明するのが、ここにお見せする写真だ。
まず、放射性物質で汚染された表土を剥ぎ取り、それを袋に詰め、穴を掘り、そこに袋を並べ、新しく土をかけて、はい、除染完了、というわけだ。
こうして、公園の地面の下に、原子力廃棄物の保管場所がある。
これらの写真は、ある匿名希望の学校の教師が撮ったもので、どんなに無責任に、除染作業が行われているか見せてくれた。
福島市住民:
本来なら、剥ぎ取った表土は、深く穴を掘って埋めるべきなのですが、しかし、水道管や電気が通っているため、それができないので、
それを家の前に積み上げて、ただ、プラスチックシートをかけて終わりなのです。
放射線を出すゴミが、居間の窓の向こうや、子供たちが遊ぶ公園の真下にある。
大量の袋が外に並べられ、野放しにされている。
官庁は「問題ありません」、である。
小沢晴司(環境省の除染チーム):
大量に保管している場所に関しては、3年間ということで、住民の了解を得ています。
3年以内に、これらを、中間保管施設に運び出すことになっています。
ここでの難点はしかし、これだけ大量の放射性物質を保管できる、中間保管施設も無いし、ましてや、最終処分地も無いことだ。
最終処分地は、日本だけでなく、世界のどこにもまだ無いのである。
ここは、福島県郡山市。
このカフェで、近辺に住む、子供を持ち、不安を抱えている母親たちが集まる。
放射線の影響を案じながらの生活は、心理的な負担が増すばかりだ。
子供たちの将来を考えると、皆心配でならない。
わたなべ ともみ(郡山市在住の母親):
子供が健康に成長してくれるだろうか、それを考えると不安でなりません。
彼らも、普通に子供を生んでいけるようになるのか、私たち大人はもう、歳をとるだけですが、これから人生の始まる子供たちが、気になります。
このカフェでは、心配している母親たちが、放射能汚染のない(少ない)、遠い地方で穫れた野菜や果物を購入できる。
それだけではなく、スーパーで買った野菜などを、ここで測定することもできる。
のぐち ときこ(郡山市在住の母親):
これは、食品用の、放射線測定器です。
自分たちが口にする食べ物が、放射線に汚染されているかどうか検査します。
この容器に、食品を入れます。
そしてこれごと(この容器ごと)、測定器の中に入れます。
測定が終わるまで、約30分かかります。
測定結果は、このように、コンピューターで表示される。
これまでに測定した中での最高値は、ある母親の庭で取れた葉っぱで、8000ベクレルあったそうだ。
質問:
このグラフは、私たちには、かなり複雑に見えますが……。
彼女は、原子力物理学専攻なのか、訊いてみた。
のぐち ときこ(郡山市在住の母親):
いいえ、私はただの主婦です。
ここには、専門家は誰もいません。
ですから、測定しても、その値が普通なのかどうか、という返事はできません。
これ、食べられますか?と聞く人が多いのですが、私にはそれは分かりません。
専門家ではないので、私たちには、測定結果を伝えることしかできないのです。
しかし、こうした測定を行わずにはいられない、ということが、すでに、政府や県に対して、深く抱いている懐疑の念の現れだ。
彼らは、事ある毎にくり返してきた。
「心配ありません、大丈夫です」と。
のぐち ときこ(郡山市在住の母親):
黙ってると、政府は何にもしてくれません。
安全です、大丈夫です、という答が返ってくるだけです。
そんな答じゃ、安心なんてできません。
そえだ いちよ(郡山市在住の母親):
私は、県は何か、重大なことを隠しているんじゃないかと思っています。
それだけじゃなくて、何に関しても、問題無い、と答えるのも、きっと計画の一部なんです。
私たちが、それを誰かに伝えないように。
わたなべ ともみ(郡山市在住の母親):
事故があった後も、マスコミ、政府や県からは、信頼できる情報は、一切入りませんでした。
それで今、急に信じろと言われたって、できません。
若い母親たちを、特に不安にしているのは、甲状腺がんの危険だ。
チェルノブイリ事故の後、甲状腺がんが、かなり頻繁に発生したからだ。
それで、福島県では、これまでに、36万人の18才未満の児童を対象に、甲状腺検査を行った。
これまでに、3人の児童に、甲状腺がんが見つかり、7人に、甲状腺がんの疑いがあるとされている。
この検査を担当している医師は、「心配する理由は無い」と言う。
やすむら せいじ(福島県衛生管理課):
チェルノブイリでの調査を見ますと、事故後4,5年経ってからやっと、甲状腺がんの発生が増加しています。
それで、今回、甲状腺がんが3人に、その疑いが7人にある、という結果は、被ばくとは関係がないと考えています。
そのような発言は非科学的だ、と語るのは、北海道の国立がんセンターの、ガン専門医、西尾正道氏だ。
西尾正道(北海道の国立がんセンター医師):
チェルノブイリでは、事故後4,5年は、そのような調査がまったく行われなかったのです。
ですから、事故後2年で、兆候が現れていた人がいたかもしれないが、それはただ、調査されなかったから、わからないだけなのです。
西尾氏は、講演の中で、事故が原因で起こる結果が、政治的意図でもって、操られていることを非難する。
彼は、子供が、1年で被ばくする際の最大許容線量を、簡単に20倍にしたことを、まともな理性ではない、と批判し、
食品に含まれる放射性物質の、許容量引き上げに関しては、グロテスクだ、と語る。
例としてあげるのは、飲料水の200ベクレルだ。
西尾正道(北海道の国立がんセンター医師):
国際的な指針では、原発施設からの排水ですら、90ベクレル以上ではいけないことになっているのです。
200ベクレルといえば、それの2倍以上なのですから、大変な量です。
質問:
それじゃあ、原発施設から排出される水を飲む方が、安全なんですか?
西尾正道(北海道の国立がんセンター医師):
そうですね、そういうことになります。
今までに検査された児童の40%で、異常が発見された。
そのほとんどは、結節やのう胞だ。
それがすべて、がんに発展するわけではない。
しかし、高い数字は気になる。
まったく問題ありませんと、担当の医者は軽く聞き流す。
やすむら せいじ(福島県衛生管理課):
これだけ大多数の児童を検査したことは、今までに無かったので、この40%という数字が、高いのか低いのかということは分かりません。
そして、比較するデータが他に無いので、今のところ、これが通常の数値なのだと見なしています。
何もわからない限り、すべて大丈夫というのは、専門家の言葉にしては、不思議な倫理だ。
そう、そしてこの、原発の廃墟もまだある。
ここでの今の最大の問題は、行き場の無い、高度の汚染水を、どこに持っていくか、である。
この水は、事故を起こした原子炉を冷やすために使われ、溜まる一方だ。
原発施設とその周辺はもう、タンクでいっぱいで置き場が無い。
こうして原発事故は、まだまだ収束などしていない。
報告:ヨハネス・ハーノ
字幕翻訳:無限遠点
このドイツのZDFテレビの取材は、簡潔でいて、詳しい事情を分かり易くまとめてくれているので、いつもありがたく観させてもらっています。
今でも立ち入り禁止の警戒区域という地域の、除染を始めると言う政府。
日本は、チェルノブイリの二の舞にはならん、ということらしい。
役人は、
「住民の方々が長いこと生活し、仕事を営んできた場所で、畑や森、川や海と強いつながりを持っていて、重要な意味がある。
仮設の住宅とかに暮らしてる住民を、故郷に帰れるようにしてあげたい」と言う。
そんなこと、原発を無理矢理押し付けた、どの村や町で暮らしてる人にも言えることやと思う。
誘致する時は、そういうことを一切合切無視して、札束をばらまき、不必要で気色悪いほどに立派な箱もんドカドカ建てて、言うこと聞かせてきたんちゃうんか。
それが、いったん事故を起こした途端に、コロッと言うこと変えて、いやちゃうな、言うてることは安全ですよ~安心ですよ~やからおんなじようなもんやな。
ほんで、放射性物質まみれの、中途半端に掻いたり剥いだりしただけの、しかもそれがバンバンあっちこっちに積まれたり埋められたりしたまんまのとこに、
望郷の念に駆られてる、地震や津波ですでに、想像を絶するようなえらい目に遭うた人や、遭うてはせんでも事故で生活を根こそぎぶっ壊された人の弱みにつけ込んで、税金払わすためにとにかく戻す。
どこまで腐ってんねん!人でなし!
最悪事故から2年、除染・甲状腺がん【ドイツZDFテレビ】
時速が最大で1000キロにも及んだスピードで、津波が日本の沿岸に押し寄せたのは、2年前のことである。
ここ富岡町では、波がほぼ30メートルの高さで襲い、断崖を水浸しにした。
私たちは去年、ここを一度訪れているが、今も状況はあまり変わっていない。
がれきを取り除く作業は、ほとんどの市町村で完了しているが、ここではなにも行われていない。
「理由は簡単です」と、原子力エンジニアの名嘉幸照氏が語る。
彼は、かつてここで暮らしながら、仕事をしてきた人だ。
名嘉幸照(原子力エンジニア):
ここは今でも立ち入り禁止の警戒区域なので、津波の被害の後始末ができないのです。
ここを見るのは、非常に辛いです。
富岡町は、立ち入り禁止区域に入っている。
ちょうど、福島第二原発と第一の間に位置している。
いや、というよりは、かつての第一原発の名残というべきだろうか。
通行許可証を手に、防護服で身を固め、中に入ることが許される。
そして、防護服はもちろん、ガイガーカウンターが欠かせない。
これで、警戒区域内での滞在中に、どれだけ被ばくしたかを測定する。
チェックポイントで、身分証明書や許可証がチェックされ、ここからゴーストタウンが始まる。
放射線量が高すぎて、ここには人が住むことはできない。
名嘉幸照(原子力エンジニア):
ここでも除染を始めるそうです。
少なくとも部分的に……。
でも、政府が、町全体、この地方全体を、除染できるとは思えません。
しかし政府は、それこそを目指している。
チェルノブイリのように、事故があってからこれだけ経つのに、今だに立ち入り禁止区域がある、そんなことにならないよう、
日本では、放射線で汚染されたゴーストタウンを、また蘇らせようというのだ。
それを説明するのは、環境省の除染チーム担当の、小沢晴司氏だ。
小沢晴司(環境省の除染チーム):
私たちが行う除染地域は、住民の方々が長いこと生活し、仕事を営んできた場所です。
ここには畑、森、町、川や海があり、どれもが皆、強いつながりをもっています。
この場所は、住民たちには、とても重要な意味があるのです。
ですから、除染作業をする際には、そのことを配慮しなければなりません。
そして、仮設の住宅などに暮らしている住民が、故郷に帰れるようにしてあげたいと思っています。
環境省が開いている、除染情報プラザでは、除染担当員が、除染作業のプロセスを、分かりやすく説明するモデルを見せてくれた。
モデルを見る限り、念入りな庭仕事、という感じだ。
小笠原かつひこ(除染情報プラザ・除染担当員):
どの除染作業でもまず、取り除かれたものが、このフレキシブルコンテナの中に収集され、この中に保管されます。
この、フレキシブルコンテナの紫外線耐久年数を検査しましたが、3年から5年は、使用に耐えます。
質問:
このコンテナは、放射線も遮断するのですか?
小笠原かつひこ(除染情報プラザ・除染担当員):
いいえ、放射線は遮断しません。
土壌を掻き、レーキで掻きならし、ツルハシで掘り返して、放射線で汚染された表土を、15センチメートル削り取る。
潅木を刈り込み、落ち葉を掃き集め、線量を下げる。
まったく、ヘラクレスの大仕事である。(ブログ主による注釈・ヘラクレス⇒ギリシャ神話の登場人物の中でも、力と仕事の象徴として見られていることからの揶揄)
線量が一番高い地域だけでも、ほぼザールラントに匹敵する広さだ。(注釈・ザールラント⇒ドイツ西端の州。面積2567㎢、人口108万4千人"1995年当時")
福島の山奥で、私たちは除染作業に携わっている、作業員の一人と落ち合った。
「政府とやくざが怖いので、顔も名前も隠しておきたい」と言う。
彼が言うには、やくざがこの除染という、利得の多い仕事のほとんどを取り仕切っているのだそうだ。
公には、政府は作業員に、危険手当てを含め、一日当たり、約27000円払っている。
作業員は、線量の高い地域で働かなければいけないからである。
しかし、そのうち、実際に作業員の手に渡るのは、ごく一部だ。
彼はたとえば、約1万円しか受け取らなかったと言う。
残りはすべて、やくざにピンハネされるのだ。
作業員はウソをつかれ、だまされていると言う。
除染作業員:
作業のはじめに、仕事の説明会があったのですが、そこでは、20km以内の警戒区域で働く、などということは、一切言われませんでした。
したがって、危険手当てをもらう権利がある、ということも知りませんでした。
彼は、だまされたことを知ってその会社を辞め、2日後に、他の会社で働き始めた。
支払いは、40ユーロ(5千円ほど)多くなったが、この会社は、除染作業をあまり真剣に考えていないと言う。
除染作業員:
集めたものを、除染区域と指定されている区域の、反対側に持って行って捨てろ、という指示を受けました。
それで、指示に従い、とにかく全部、反対側に持って行って捨てたんですね。
どうして反対側に持って行って捨てるのか、という理由に対しては、
そこは除染区域に指定されていないので、そこに、少しばかり汚染された枝が落ちていても問題ない、ということでした。
しかし、こうして放射能物質が、森のもっと奥深くに投げ込まれていいわけはない。
除染作業員:
ずっと急な斜面で働いているので、集めたものを上まで運ぶのはかなりしんどいのですが、上で監督が見張っていて、
とにかく、何でも下の川に投げ込め、と指示しました。
最初は信じられなかったんですが、2度も3度もそう言われ、その指示がだんだん命令調になっていき、
いいからさっさと早く川に投げ込め!と怒鳴られました。
それで私も、他の作業員と一緒に、その指示に従わざるを得ませんでした。
彼の話が正しいことを証明する情景があったが、ここでは法的理由から、お見せすることができない。
放射能のゴミを川に放棄?
そんなことがあっていいのだろうか?
このことを、環境省の除染担当官に聞いてみたが、まさに役人の答、としか言いようのないものが返ってきた。
小沢晴司(環境省の除染チーム):
そのようなことがあったことに関しては、本当に残念です。
そのようなことが二度と起こらないように、これから厳重にチェックし、その旨、各会社にも申し伝えました。
しかしたとえ、誰もがその指示に従ったところで、原子力のゴミのきちんとした処理は、何世代にも渡る問題となるだろう。
福島だけでなく、周辺の警戒区域外でも、プラスチックの袋に、一時的に土壌や潅木が詰め込まれ、ただ外に放置されているだけだ。
これらの袋は、放射線を遮断することはできないが、風や雨で散乱するのを防ぐためだと言う。
警戒区域外で、除染の状態を測定している、環境保護団体グリーンピースのメンバーに会った。
彼の判断は明快だった。
Heinz Smital(環境保護団体グリーンピース):
これは、即席の、原子力廃棄物の保管所です。
落ち葉、枝、土など、森や野原から集めたものを、道路に並べている。
これを見るだけで、こんなに大きい地域を除染しようなどという目論見が、いかに不可能かということを示しています。
こんなことは、希望のない企てに過ぎません。
しかも、これらのプラスチックの袋は、3年から5年しか耐久性が無い。
それまでには、これらの汚染物質は、ちゃんと処分されなければいけないのだ。
もっとひどいのが、ここ福島市のような、住宅地域での除染である。
一時的な保管場所さえつくるのが困難なため、ずっと、恐ろしい安易な解決策がとられている。
それを証明するのが、ここにお見せする写真だ。
まず、放射性物質で汚染された表土を剥ぎ取り、それを袋に詰め、穴を掘り、そこに袋を並べ、新しく土をかけて、はい、除染完了、というわけだ。
こうして、公園の地面の下に、原子力廃棄物の保管場所がある。
これらの写真は、ある匿名希望の学校の教師が撮ったもので、どんなに無責任に、除染作業が行われているか見せてくれた。
福島市住民:
本来なら、剥ぎ取った表土は、深く穴を掘って埋めるべきなのですが、しかし、水道管や電気が通っているため、それができないので、
それを家の前に積み上げて、ただ、プラスチックシートをかけて終わりなのです。
放射線を出すゴミが、居間の窓の向こうや、子供たちが遊ぶ公園の真下にある。
大量の袋が外に並べられ、野放しにされている。
官庁は「問題ありません」、である。
小沢晴司(環境省の除染チーム):
大量に保管している場所に関しては、3年間ということで、住民の了解を得ています。
3年以内に、これらを、中間保管施設に運び出すことになっています。
ここでの難点はしかし、これだけ大量の放射性物質を保管できる、中間保管施設も無いし、ましてや、最終処分地も無いことだ。
最終処分地は、日本だけでなく、世界のどこにもまだ無いのである。
ここは、福島県郡山市。
このカフェで、近辺に住む、子供を持ち、不安を抱えている母親たちが集まる。
放射線の影響を案じながらの生活は、心理的な負担が増すばかりだ。
子供たちの将来を考えると、皆心配でならない。
わたなべ ともみ(郡山市在住の母親):
子供が健康に成長してくれるだろうか、それを考えると不安でなりません。
彼らも、普通に子供を生んでいけるようになるのか、私たち大人はもう、歳をとるだけですが、これから人生の始まる子供たちが、気になります。
このカフェでは、心配している母親たちが、放射能汚染のない(少ない)、遠い地方で穫れた野菜や果物を購入できる。
それだけではなく、スーパーで買った野菜などを、ここで測定することもできる。
のぐち ときこ(郡山市在住の母親):
これは、食品用の、放射線測定器です。
自分たちが口にする食べ物が、放射線に汚染されているかどうか検査します。
この容器に、食品を入れます。
そしてこれごと(この容器ごと)、測定器の中に入れます。
測定が終わるまで、約30分かかります。
測定結果は、このように、コンピューターで表示される。
これまでに測定した中での最高値は、ある母親の庭で取れた葉っぱで、8000ベクレルあったそうだ。
質問:
このグラフは、私たちには、かなり複雑に見えますが……。
彼女は、原子力物理学専攻なのか、訊いてみた。
のぐち ときこ(郡山市在住の母親):
いいえ、私はただの主婦です。
ここには、専門家は誰もいません。
ですから、測定しても、その値が普通なのかどうか、という返事はできません。
これ、食べられますか?と聞く人が多いのですが、私にはそれは分かりません。
専門家ではないので、私たちには、測定結果を伝えることしかできないのです。
しかし、こうした測定を行わずにはいられない、ということが、すでに、政府や県に対して、深く抱いている懐疑の念の現れだ。
彼らは、事ある毎にくり返してきた。
「心配ありません、大丈夫です」と。
のぐち ときこ(郡山市在住の母親):
黙ってると、政府は何にもしてくれません。
安全です、大丈夫です、という答が返ってくるだけです。
そんな答じゃ、安心なんてできません。
そえだ いちよ(郡山市在住の母親):
私は、県は何か、重大なことを隠しているんじゃないかと思っています。
それだけじゃなくて、何に関しても、問題無い、と答えるのも、きっと計画の一部なんです。
私たちが、それを誰かに伝えないように。
わたなべ ともみ(郡山市在住の母親):
事故があった後も、マスコミ、政府や県からは、信頼できる情報は、一切入りませんでした。
それで今、急に信じろと言われたって、できません。
若い母親たちを、特に不安にしているのは、甲状腺がんの危険だ。
チェルノブイリ事故の後、甲状腺がんが、かなり頻繁に発生したからだ。
それで、福島県では、これまでに、36万人の18才未満の児童を対象に、甲状腺検査を行った。
これまでに、3人の児童に、甲状腺がんが見つかり、7人に、甲状腺がんの疑いがあるとされている。
この検査を担当している医師は、「心配する理由は無い」と言う。
やすむら せいじ(福島県衛生管理課):
チェルノブイリでの調査を見ますと、事故後4,5年経ってからやっと、甲状腺がんの発生が増加しています。
それで、今回、甲状腺がんが3人に、その疑いが7人にある、という結果は、被ばくとは関係がないと考えています。
そのような発言は非科学的だ、と語るのは、北海道の国立がんセンターの、ガン専門医、西尾正道氏だ。
西尾正道(北海道の国立がんセンター医師):
チェルノブイリでは、事故後4,5年は、そのような調査がまったく行われなかったのです。
ですから、事故後2年で、兆候が現れていた人がいたかもしれないが、それはただ、調査されなかったから、わからないだけなのです。
西尾氏は、講演の中で、事故が原因で起こる結果が、政治的意図でもって、操られていることを非難する。
彼は、子供が、1年で被ばくする際の最大許容線量を、簡単に20倍にしたことを、まともな理性ではない、と批判し、
食品に含まれる放射性物質の、許容量引き上げに関しては、グロテスクだ、と語る。
例としてあげるのは、飲料水の200ベクレルだ。
西尾正道(北海道の国立がんセンター医師):
国際的な指針では、原発施設からの排水ですら、90ベクレル以上ではいけないことになっているのです。
200ベクレルといえば、それの2倍以上なのですから、大変な量です。
質問:
それじゃあ、原発施設から排出される水を飲む方が、安全なんですか?
西尾正道(北海道の国立がんセンター医師):
そうですね、そういうことになります。
今までに検査された児童の40%で、異常が発見された。
そのほとんどは、結節やのう胞だ。
それがすべて、がんに発展するわけではない。
しかし、高い数字は気になる。
まったく問題ありませんと、担当の医者は軽く聞き流す。
やすむら せいじ(福島県衛生管理課):
これだけ大多数の児童を検査したことは、今までに無かったので、この40%という数字が、高いのか低いのかということは分かりません。
そして、比較するデータが他に無いので、今のところ、これが通常の数値なのだと見なしています。
何もわからない限り、すべて大丈夫というのは、専門家の言葉にしては、不思議な倫理だ。
そう、そしてこの、原発の廃墟もまだある。
ここでの今の最大の問題は、行き場の無い、高度の汚染水を、どこに持っていくか、である。
この水は、事故を起こした原子炉を冷やすために使われ、溜まる一方だ。
原発施設とその周辺はもう、タンクでいっぱいで置き場が無い。
こうして原発事故は、まだまだ収束などしていない。
報告:ヨハネス・ハーノ
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