わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

粘土の種類と特徴(備前土、備前焼)

2009-09-11 20:44:15 | 陶芸入門(初級、中級編)
引き続き、粘土の種類と特徴について、述べたいと思います。

3) 備前の土 

   備前とは、岡山県の旧国名です。

   備前土(本備前)、備前火襷(ひだすき)土、白備前土、黒備前土等の種類が、有ります。

 ① 備前土  焼成温度目安: 1.150~1200℃

   備前市伊部周辺の、田土(田圃の下から、掘り出した粘土)で、肌理が細かく、備前土の仲で、

   最上の土と、言われています。 大変貴重な土で、手に入り難い物です。

   (一般に、市販されている、備前土と呼ばれる物は、ブレンドされた、合成備前が、多いです。)

    耐火温度は低く、1200℃以下で焼成します。

    (高い温度では、焼成できません。作品が壊れます。)

 ② 火襷粘土(備前1号)

   作品に、くっつき防止用に、藁(わら)を巻いて焼成すると、白い肌に、緋色が出ます。

   これを火襷と、呼んでいます。 この火襷が、発色し易く、調合した土です。

 ③ 備前黒土

   岡山県邑久郡長船町磯上周辺の黒土です。

 ・ 備前焼に付いて

   備前焼は、大変人気のある、高価な焼き物です。

   酒器、食器、茶道の道具類(水指、器)、民芸品(置物、細工物)等の作品が有ります。

  
 ) 備前焼の特徴

  a) 最大の特徴は、無釉(作品に、釉薬を掛けない)の事です。

    本来の備前の土は、収縮率が大きく、釉薬を掛けると、釉が剥がれ落ちる為、

    釉が掛けられないのです。縮み率は、20%弱との事です。

    (素地と釉の収縮率が、一致している場合、釉は綺麗に掛かります。釉の方が、縮みが大きいと、

    釉に「ひび」即ち、「貫入」が入ります。

    逆に素地の方が大きく縮む場合には、釉が素地と、密着せず、剥がれ落ちます。)

    但し、現在では、縮み率が12~13%に調整された、備前の土も市販されています。

  b) 薪で焼成する。

    登り窯や、あな窯などで、薪(赤松)を使って、焼成します。

    薪の灰が、作品に降り注ぎ、備前特有の色(模様、景色)に、発色します。

  c) 作品を重ねたり、倒したりして、焼成出来る。

    釉薬を掛けない為、重ね合わせたり、横に寝かせる事も、可能です。

    その為、施釉した作品には、見られない、模様を出すことが、可能です。

  d) 備前の土は悪い土です。

    常識的には、備前の土は、最悪の土です。

    即ち、耐火温度が低い、急な温度上昇が出来ない。

   (急な昇温では、土の中の気泡が抜け切らず、表面が膨れてきます。)

    それ故、焼成時間が長く、3~4日以上必要です。

    (それ故、手間隙が掛かり、作品も、高価に成ります。数万円~数百万円の価格です。)

    薪窯でなければ、良い色に発色しない。(燃料費、人件費も高くなる。)

    焼き締りが大きい。(その為、無釉でも、水漏れしない、強固に焼き上がる利点が有ります。)

    そして必ずしも、作り易い土では有りません。   

   以上の様に、常識的には、悪い土ですが、手間隙を掛けて、素晴らしい作品に、生まれ替わる事が

   出来ます。


 ) 備前焼の模様

    赤松の灰が、作品に降り注ぎ、高温で熔け、土と一体になり、他の焼き物には見られない、

    特徴的な模様が、現れます。  

    備前焼きの特徴の模様には、以下の物が、有ります。

  a) 胡麻(青、黄ごま)

    高温で熔け、自然の灰釉に成ったものを、胡麻といいます。

    窯の発達により、窯中の湿度が変化し、胡麻の色も変化したと、言われていて、

    色の違いが、時代の物指しとなっています。

  ・ 青胡麻: 平安~安土桃山時代の暗緑色。

  ・ 黄胡麻: 江戸期は、黄色。

  ・ 江戸末期以降は、茶色、現在では、人工的に、発色させているそうです。

  b) サンギリ

    薪の灰に埋もれ、火が直接当らず、赤くなるべき肌が、還元焼成で、暗灰色に成った物です。

    大正時代以降、炭を使い、人工的に作れる様に成りました。

  c) 牡丹餅(ぼたもち)

    大きな器の中に、小さな物を重ねて置き、焼成すると、そこだけ、炎や灰が掛からず、

    赤い焼き肌と成る現象です。

  d) 榎肌(えのきはだ)

    火力が弱く、灰が熔け切らず、榎の木肌の様に、黒や灰色の粒状に、焼き上がった物です。

  e) 青備前

    備前焼は、酸化焼成するのが、普通ですが、炎や、窯詰めの関係で、還元焼成に成った場合、

    青味掛かった、暗灰色に成った物です。

    細工物では、意図的に還元にし、発色する場合もあります。

  f) かせ胡麻

    小粒の灰が、熔けないで、作品に付着した物で、不完全な胡麻が現れています。

    茶道の分野で、古くから、珍重されていると、言われています。
 

粘土の種類 備前土
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