わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

土鍋1(土鍋土)

2009-09-16 22:37:55 | 陶芸入門(初級、中級編)
土鍋ついて、述べたいと思います。(特に、これから土鍋を作りたい方の、参考にして下さい。)

これから冬に向い、鍋料理が美味しくなる季節と、成りました。

特に、旬の美味しい食材を使い、熱々の土鍋料理は、楽しい食事が、期待されます。

土鍋は、色々の大きさの物が、市販されていますが、自分で作りたいと、希望される方も、多いです。

100円ショップで、売られている物から、数万円の土鍋まで、色々有ります。

その違いは、何処から来るのでしょうか?

土鍋は、他の陶器と違い、粘土、作り方、釉薬、焼成温度などに、違いが有り、安易には出来ません。

以下各項目について、順次記していきます。

7) 土鍋の土

  直火で、煮炊きする土鍋は、それ専用の土を、使う必要が、有ります。

  (一般の陶芸用粘土で、作った作品は、直に火に掛けると、壊れます。)

 ・ 土鍋用の土は、天然の素材(粘土)を、そのまま使用する場合と、

 ・ 土鍋用に、調合(ブレンド)した土に、分かれます。

  一般的に、土鍋用として市販されている土は、後者(調合土)が多いです。

  土鍋用の土は、各地に存在しているとの事ですが、幾つか紹介したいと、思います。

 ① 信楽鍋土(耐熱信楽土) 酸化焼成1180℃~1200℃ (1200℃を越えないように、注意)

   信楽の荒目の土(白土、赤土)で、急熱急冷に耐え、土鍋にも使われます。

   直火に強く、陶板、ほうろく(胡麻など炒る道具)、グラタン皿など、直火で割れない性質が、

   有ります。 成形に難があり、土の粘りも少ないです。

 ② 万古焼、益子焼などの耐熱土

   地元の土に、他の材料(ペタライト)を混ぜ、調合して、耐熱用の土にした物です。

 ③ 伊賀の土

   食器用としては、あまり使われない、火に強い土です。

   調合しない土で、自然の土に、余り手を加えずに、使用します。

   焙るなどの調理器具として、昔からプロの料理人に愛されてきました。

   直火調理は勿論の事、オーブン、電子レンジにも使えます。

   伊賀の陶土は、土鍋本体がしっかりとし、を蓄えて、食材の芯までじっくりと火を通し、

   旨みを逃さず、美味しい料理に仕上げ、保温効果も良いと言われています。

   但し、調合土よりは、はるかに火に弱く、汚れや易い、欠点もあります。

7)-1 土鍋土と、耐熱鍋土(調合土)の違いについて

  ① 耐熱(鍋)土の特徴

   現在市販されている土鍋の多くは、人工的に強度を増した土が使われれています。

   どれも伊賀の土(無調合土)などよりも、はるかに火に強く、また汚れにくいことが特徴です。

   この土は、土鍋の弱点とされる、「ひび割れ」や、「水が浸み込むとによる、カビの発生」など、

   ほとんど、起こらない様に、調節されています。

   火にかけ、熱を加えた時に起こる、膨張(熱膨張)も、ほとんどありません。

   その為、冷める時に、収縮も起こりません。

 ・ 耐熱土のポイントは、ペタライトで、リチウム長石(葉長石)と呼ばれる物を混ぜています。

   ( ペタライトは、長石に似ていますが、別の物です。)

  土鍋土や、普通の粘土で作った製品は、熱を加えると大きく膨張しますが,耐熱土は、

  ペタライト中の、リチウム系の 低膨張の物質によって、熱膨張が小さくなります。

  それ故、直火や空焚きしても割れない、 焼き締まった、硬い製品を作る事が出来ます。

  又,釉薬も一般的な粘土と、熱膨張が違うので、ペタライトを配合した、低熱膨張の釉を、

  使う必要があります。

 ・ 一般的な粘土との調合例

  土鍋土  : ペタライト50 、粘土50 、焼成温度1200~1250℃ 、膨張率 20%以上

  耐熱鍋土 :  40、  50 、シャモット10 、 1150~1200℃1     5%未満

  どちらの鍋土も、ペタライトが50%入った土を使っています。違いは焼成温度です。

  この土は直火には強く、空焚きしても、何ともありません。

  尚、ペタライトの入った土鍋土は、高価です、安価な土鍋は、蓋のみ普通の土を、使う事もあります。

  耐熱土鍋で調理すると、沸騰するまでが早く、中身がグラグラと煮え立ちます。

  土の表面が滑らかで、硬質なので、水が浸み込む事はなく、初めて使用する際に「おかゆ」を、

  炊く必要はありません。 扱いが非常に楽ですが、そのかわり、調理の味も、それほど旨くなりません。

 ② 無調合(鍋土)の土の特徴

  昔ながらの、自然の土で作られた土鍋は、あまりグラグラと沸騰せず、鍋の中で食材を、

  包み込む様に、ゆっくり火が通っていきます。

   野菜や魚など素材の持っている、甘みや旨みを引き出し、

  その為、「ふっくらとした味」に仕上げます。

  (煮物など食材に火を通し、味をしみ込ませていく時には、沸騰している必要はありません)

  この煮え方の違いによって耐火土鍋に比べ、断然おいしく出来上がります。

  土の感じは、荒く「ざらざら」していますが、その荒さが火の通り道の、隙間をを作っています。

  使用していると、鍋に「ひび」が入る事がありますが、この「ひび」は、壊れたわけではなく、

  土鍋を直火に掛けた事による、膨張の調整によります。使うには、支障はありません。
  
  しかし、隙間が開いているという事は、水も通してしまいます。
 
  そこで使い始める前に、この隙間を埋める為、「おかゆ」を炊く必要が、ある訳なのです。

  「火(熱)は通すけれど、水(汁気)は通さない」、状態を作る訳です。

  自然の土で出来た土鍋は、正直言って、使うのに手間がかかります。

  けれど、この手間をかけることによって、生まれてくる美味しさもあります。

  どちらが、絶対的に良いという訳ではなく、同じようにみえる土鍋も、土によって、

  違いがあるという事です。

以下、次回に続きます。

土鍋土
                
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