身の丈六尺二寸(約186cm)で筋骨たくましい大きな体と、頭髪と髭が一体化した野生的な風貌の
熊野氏には、その豪快な作品に度肝を抜かれます。
③ 1520℃(SK-19)での焼成
) 窯を高温にするには、特別な方法や工夫があるはずです。
a) 1987年に築いた窯を、現在でも使用しているかどうかは、不明ですが、当時の窯の大きさは、
長さが7m、焚き口幅が1.6m、煙道が約1.2の半地下式の窖窯で、窯の横には二箇所の
戸詰め口が設けられており、傾斜は2度と平坦に近い為、引きを強くする様に煙突は太くして
あるとの事です。窯の中は「さま穴」で二分され、奥の「捨て間」には素焼き用の作品を詰める
そうです。 注:「捨て間」とは、煙道口と煙突へ繋がる間の部屋で、炎が直接煙道に抜けない
様にする為に設けます。 尚 窯は55X40cmの棚板九枚敷きの大きさになっています。
b) 窯詰めは二箇所の戸詰め口から行います。
窯焚きは三月、五月~六月、十月に行うのを基本にしますが、十二月や一月にも焚く事が
有るそうです。「あぶり焼き」は灯油で行い、200℃で還元を掛け、500℃に達したら楢の薪に
切り替えます。三日目には900℃に達したら、強還元焼成とし1000℃まで上げます。
c) 温度を順調に上昇させる為には、火(火道)が窯の床を這う様にして煙道に抜ける場合は
良く上昇し、天井を這う様に流れると、温度上昇は期待できないそうです。
その目安は1100℃の頃との事です。 その為、火道を決める前半が山場となります
1200℃になると煙道が熱を持ち、引きが弱く成りますので、「ドラフト」のレンガを取り、
若干空気を取り入れ、煙道を冷やすと、引きが強くなるそうです。
d) 目ではなく耳で窯を焚く。
焼成判断は炎の色や勢いで判断しているのではなく、薪の燃える音で薪の量や投げ入れる
タイミングを取っているそうです。焚き口で1350℃に成ると、SLの汽車の様に「ポッポ、
ポッポ」と音を立て始めます。更に順調に昇温していると、窯の圧が高くなる為、焚き口を
一瞬開け、圧を逃がします。
e) 火を止めるタイミング。
五日目に成ると、焚き口(火前)で1450℃になり、奥で1200℃になります。
この頃に成ると、薪を次第に食わなくなり、炎も白くなってきます。
1500℃に成ると、炎も太陽の様に白くなり、炎の出も少なく、窯音も静かに成ると言います。
1500℃で六時間ほど焼成すると、窯の横から水蒸気が昇るそうで、この頃が火を止める
タイミングだと言っています。実際にはこのタイミングが難しく、怖い時との事です。
ここまで約六日を要する事となります。
以上の記事は、季刊 工房No16 (2000年 誠文堂新光社発行)を参照にしました。
④ 熊野氏の作品
旅枕や壷、水指、徳利、手鉢、大皿、片口などの作品を多く作っています。
注: 旅枕とは、古田織部が伊賀に発注して作らせたと言われる、枕形の筒型の「花入」です。
更に、作品に「熊志乃」、「松阪志乃」、「鬼越前」などと独自に命名し、独特の作風になって
います。
) 熊志乃旅枕: 高 33 X 口径 15 X 胴径 23 X 17 cm
熊野氏の旅枕は、一般の旅枕形とは異なり、「野仏」や「村地蔵」などの形をしています。
) 鬼越前水指: 高 17 X 胴径 22 X 19 cm
) 鬼越前七寸皿: 高 4 X 径 21 cm
) 鬼越前kuma片口: 高 16 X 径 43.5 X 38 cm
) 鬼越前手付鉢: 高 16 X 径 46 X 41 cm
) 鬼越前五合トックリ: 高 18 X 胴径 12 cm
これらの作品は、越前の土をぎりぎりの高温で焼き切った末に得られる、自然な形態で、
他を圧倒した特異な特徴を有しています。
次回(窖窯の焚き方について)に続きます。