わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代の陶芸178(木村盛康2)

2012-08-28 22:10:26 | 現代陶芸と工芸家達

2) 「天目」とは、中国福建省の建窯で焼かれた、建盞(けんさん)の事です。 

   ) 国宝「耀(曜)変天目」: 漆黒地に青や銀白色の大小の斑点が、浮かび上がり、周囲を

      瑠璃色の光彩で取り囲み、虹の様な神秘的な作品です。

      釉上の薄い皮膜の作用によるものと、言われています。

      世界に3(又は4)点のみ、存在が確認されています。(それらは、日本にあります)。

     a) 静嘉堂文庫蔵(稲葉天目): 高 6.8 口径 12.0 高台径 3.8 cm

        耀変天目の中でも最高の物とされる茶碗です。口縁には金の覆輪が嵌められています。     

        徳川家光より春日局に下賜し、その子孫である淀藩主稲葉家に伝わり更に、三菱財閥

        総帥の岩崎小弥太が入手したが、現在は静嘉堂文庫所蔵となっています。

      b) 藤田美術館蔵: 高さ 6.8 口径 12.3 高台径 3.8 cm

         水戸徳川家に伝えられたもので、耀(曜)変の斑紋が外側にも現れています。

         1918年に藤田財閥の藤田平太郎が入手し、現在は藤田美術館の所蔵です。

      c) 大徳寺龍光院蔵: 高さ 6.6 口径 12.1 高台径 3.8 cm

         堺の豪商津田宗及から、大徳寺塔頭の龍光院に伝わったものです。

     以上が国宝の耀変天目ですが、もう一点、加賀藩前田家伝来の耀変天目と見られる重要

     文化財の茶碗があります。(「耀変」と呼ぶべきか、議論があり、「油滴」と見る専門家も

     います。) 「耀変」は「油滴」が高温で壊れた状態と見る人もいます。

      d) MIHO MUSESUM蔵: 高さ 6.6 口径 12.1 高台径3.9 cm

  ) 国宝、玳皮盞(たいひさん)天目: 高さ 6.2 口径 11.6 高台径 3.5cm

     釉の調子が鼈甲(べっこう)即ち、玳瑁(たいまい)の皮に似ている事からの命名です。

    ・ 中国南宋時代の吉州窯で焼かれた作品で、松江藩七代藩主である松平不昧公伝来の

      大名物です。

    ・ 鼈甲釉は、黒飴釉に藁白釉を斑に振り掛けたものです。黒飴に各種の文様の型紙を貼り

      付け、その上から白釉を掛けて、型抜き文様を作っています。  

 ) 禾目天目: 加賀前田家伝来の禾目天目。高さ 7 口径 12.6 高台径 3.8 cm

     中国では禾目の釉紋を兎毛に見立てて、兎毫盞(とごうさん)と呼んでいます。

      注: 禾目(のぎめ)とは、穀物の穂の先にある毛の様な物です。

    ・ 光沢のある瑠璃色を帯びた黒地に、銀色の禾目が無数に流れ落ちている茶碗です。

    ・ 紺黒の地に柿色の条(すじ)が入ったものや、柿色の地に黒い条が入ったもの等多様です。

    ・ 禾目釉は他の天目釉よりも、特に流れ易い釉で、最下部には分厚く釉が溜まっています。

 3) 木村氏の陶芸

   ① 使用する土。

     木村氏は、信楽をはじめ全国から原土を取り寄せ、ブレンドして使っています。

     天目釉の種類によって、ブレンドの仕方を変えています。釉と土との相性があるそうです。

     これは、試し焼きの実験によって、会得したものです。但し、これに囚われる事無く、新しい

     組み合わせから、新しい天目の世界が拓かれる事も多いそうです。

   ② 天目釉の基本的調合

    ) 長石、石灰石、珪石を主原料にして、光沢を調整する為、タルク(滑石)やカオリンを混ぜ

       ます。長石は平津長石が良いそうですが、品質にバラツキが多く、実際に焼いてみないと

       解からない様です。主原料の割合も一定ではなく、釉の種類によって、微妙に変化させて

       います。  ・ 特に長石が重要で、その質によって、釉の熔け具合が決るそうです。

    ) 天目釉は主原料に、酸化鉄を主体とした金属類を添加した釉です。

        鉄を5%加えると、飴(あめ)釉になり、7%程度から釉中で飽和となり、結晶化すると

        言われています。

    ) 鉄分の他に、チタン、銅、錫(すず)、クロム、マンガン、コバルト等の発色補助材を添加

        すると、結晶時に色々な色に発色します。更に、各種の灰を使う事により、思わぬ色や

        効果が出ると言います。

    ) 原材料や金属類は、特別に調達したものではなく、市販の材料を使っているとの事です。

   ③ 釉を掛ける。

 以下次回に続きます。

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