3) 大上昇氏の陶芸
① 丹波焼きの土
大上氏の工房のある篠山市の隣の、三田市の土(丹波土=四ツ辻土)を使っているとの事です
鉄分を比較的多く含む赤土ですが、小石の少ない土です。
江戸時代には肌理が細かく、粘りのある轆轤挽きし易い土を使っていましたが、現在では使い
切ってしまった様です。元来丹波には良い土が少なく、周囲から土を運び込んでいたとの事です。
② 壷などの作り方も、丹波独特の方法を取っています。
その方法は、「底打ち」してから、太い紐を積み上げる方法を取っています。
大物は下部(一番床)に上部の土紐を繋げて形造ります。 先ず、轆轤上に据えた土の中央を
「手のひら」や「拳」で叩いて締め平らにします。これは、底割れを防ぐ為です。次に太い紐を
周囲に載せ、繋ぎ目を指で消しながら、繋ぎ合わせて行きます。更に同じ様な太さの紐を上に
載せて、上下の紐を密着させてから、轆轤挽きにします。
a) 丹波では、大小にかかわらず作品の制作は、最近まで一個作りが基本で、数挽きの方法は
ほとんど見受けられませんでした。現在では小物は数挽きの方法を取っています。
③ 轆轤挽きの方法。
) 大上氏の轆轤は左回転で行っています。以前は蹴り轆轤を使い左回転でしたが、現在は
「膝」を痛めた為、電動轆轤を使っているそうです。
(その為、経験上から左回転になっています。)
) 荒延ばしは、「ハサザ」と呼ばれる細長い布を使います。(水切れ防止にも成ります)
ある程度の薄さに挽き上げたら、木製のこて(タテガイ、ヨコガイ)を使って形を造ります。
) 一晩乾燥後、一番床の口縁をやや濡らしてから、更に紐を4段重ね、轆轤挽き成形します。
壷の口縁は玉縁で、厚めに残した最上部を布で包み込む様にして球状にします。
) 製作に三日掛かります。
a) 三日目には、上下の繋ぎ目に段差が発生していますので、この段差を撫ぜて消します。
隙間が有る場合は土を詰め込みます。
b) 「こて」(シリガイ)を使って、内側より張り出して形を整えます。
一般に壷などは、削り作業は行わないとの事です。
) 桃山~江戸初期に掛けて茶道具類も製作されていますが、底(高台)を削る作業は行って
いなかった為、水指や茶入、花生などが多く、茶碗類は少なかった様です。
大名で茶人でもある、小堀遠州(1579~1647)は各地の窯元に茶道具を作らせて
います。遠州丹波もその一つで、茶碗も底削りが施されています。
大上氏もこの流れを汲み、優しい茶碗を作っています。
④ 赤土部釉を掛ける。
) 赤土部釉とは、黄土に灰を混ぜた一種の化粧土で、丹波焼きの特徴の一つです。
釉と同様に水漏れ防止と、装飾を兼ねたもので、朱赤や紫掛かった赤色になります。
温度が高過ぎる場合には、暗い紫色に、低く過ぎると赤く発色しないとの事です。
この色を出すのに苦労するそうです。中々思い通りの色には成らない様です。
) 赤土部釉を内外に、一度で生掛けします。
水気の引いた、やや乾燥した作品の内側に釉を流し込み、外に捨てた後、素早く口縁を
浸し掛けし、更に口を下に向けて、外側に釉を流し掛けします。
短時間に処理しないと作品が壊れますので、一番緊張する場面です。
⑤ 白化粧(丹波白釉)を施す。
以下次回に続きます。