わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 28 採取した粘土は使えるか2?

2014-11-15 22:00:45 | 素朴な疑問
 ② 採取した粘土が使えるかどうかは、実際に作品を作り、焼成して確認する事です。

   (前回の続きです。)

  ) 焼成(試し焼き)による確認。

   試し焼きは最初素焼きを行い、結果が良ければ、本焼きへと続けます。

   a) 素焼きは700~800℃で行うのが一般的です。鉄分を多く含む赤土などでは、素焼きの

    段階で、綺麗な赤色に発色する事があります。それ故、本焼きに向かない土でも、素焼きの

    作品を作るのに適すかも知れません。

   b) 素焼きの段階では土はさほど焼き締まりませんが、強度的には強くなります。

    但し、素焼きの段階で大きな割れが発生する場合も有ります。この様な土は素焼きにも

    適さないかも知れません。他の利用方法を考えます。

   c) 本焼きは、採取した土100%で行う物と、普段使用している粘土と半々に混ぜ合わせた

    土、更には7~8割混ぜ合わせた土に、透明釉を掛け、いつもの温度で一緒に焼成します。

   d) 100%の土の作品を焼成する場合は、受け皿の上で焼成する事です。

    耐火度の低い粘土では、いつもの温度で焼成すると、形が崩れ水飴の様に熔ける事も珍しく

    は有りません。熔けた土が棚板に流れ、棚板を痛める事を防ぎます。

   e) 窯出し後に、土の様子を観察します。先ず100%の土で作った作品は、無事に形を保って

     いるか? 本焼き後の素地の色はどのように発色しているか?。赤土の場合、素焼きでは

     綺麗な赤色であっても、本焼きでは黒くなりがちです。更に、本焼きで表面に黒い斑点や

     痘痕(あばた)が出ていないか?。即ち表面が泡を吹いた様に荒れていないか?

     痘痕があるのは、粘土に有機物や不純物、さらには、水溶性のアルカリ成分が含まれて

     いる為ですので、水簸(すいひ)等の処理を行う必要があります。

   f) 釉との相性はどうか?。釉剥げ等が無く、素地に密着しているか?等を観察します。

    これは、土の収縮率と関係します。土が十分に焼き締まらない場合には、釉に貫入が入り

    易く、縮み率が大きい時は。釉が表面に密着せず、釉剥げの原因に成ります。

    それ故、本焼き後の縮率を見る為に、作品の寸法を測ります。

   g) 100%の土では、良い結果が出なくても、いつも使っている土を半々に混ぜた物や、

     7~8割り混ぜた物(採取した土が2~3割)が使えるかを観察します。

     耐熱性(作品が歪まない事)や釉との相性など問題が無ければ、この土単独では無理

     ですが、他の耐火性のある土と混ぜ合わせれば使える事に成ります。

  ③ どんな粘土であっても、基本的には作品作りに使えます。

   ) 例えば、耐火度の低い土でも、低い温度で焼成すれば、形を保ったまま焼成できますが

    一窯その土のみで焼成する事になります。多くの場合、色々の土と一緒に焼成しますので、

    その温度で焼成できる様に、採取した土を調整する必要があります。

   ) 低い温度で焼成すると成ると、釉の熔ける温度も調整する必要があります。

    こうなると、結構手間隙の掛かる事になります。それ故、大量に採取できる土で有れば

    そこまで行う価値が有るかも知れませんが、少量の場合は他の土と混ぜ合わせて使う事です

   ) 身近な所から、今までに無い土を見出す事もありますので、少量であっても試してみる

     価値がありそうです。

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素朴な疑問 27 採取した粘土は使えるか1?

2014-11-14 22:07:47 | 素朴な疑問
粘土又は粘土質の物は、川筋や水辺、泥濘(ぬかるみ)のある場所で見つかる事があります。

大量の場合は少ないですが、注意して上記の近辺を観察すると、少量なら見つける事も可能です。

陶芸をやっている方なら、これらの粘土が使えない物なのかと、思っても不思議ではありません。

縄文や弥生式土器も、基本的には自分の住んでいた近辺の粘土を使っていますので、見つける事は

不可能とは思われません。但し、現在の陶芸では1200℃以上で焼成していますので、それと全く

同じ状態で焼成する事は、難しいと思われますが、何らかの方法で利用が可能かどうか知りたい

所です。多くの場合、水に濡れた状態でないと、粘土である事が見抜けません。

1) 明治大正の頃には、屋根瓦を焼く窯が各地にありました。即ち地元で利用する為に焼成された

  ものです。多くは川筋から採取した有色(主に赤土)の粘土を利用しています。

  その他、場所によっては、「レンガ」も焼かれていました。

 ① 屋根瓦は、瓦の形状に圧縮成形し、乾燥後に1,000~1,250℃程度の高温度で焼成して得 られる

   のが一般的ですが、石州瓦(石見)では1,300℃の高温で焼成されています。

   又、杉の葉を使って黒くいぶす瓦などは、900~1,100 ℃程度で焼成されています。

   当然、焼成温度が高いほど強い瓦となります。

   但し、成形方法も異なりますので、瓦の土がそのまま使える訳ではありません。

 ② 採取した粘土が使えるかどうかは、実際に作品を作り、焼成して確認する事です。

  ) 不純物の確認。

    見付けた粘土には、腐食した植物や木片、小石、砂などが含まれている事が多いです。

   a) 少量の場合は、粘土に水を加え、やや軟らかくしてから、指を使って取り除きます。

   b) カラカラに乾燥させてから、粉々に砕き目の細かい篩(ふるい)に通し、不純物を除去

    します。篩を通った土に水を加え、練ってから使用する。

   c) 粉々に粉砕した土を、水簸(すいひ)し砂などの不純物を減らす。 

   但し、a)から行い、成形のし易さ、焼成温度の確認などを行った後に、b)、c)へと順次駒を

   進めた方が良いです。 

  ) 成形し易い事を確認。

   a) 最初に、上記 a)の方法で、少量の粘土の塊(湯呑み一個分程度)を作ります。

    水の量を調節して、普段使っている程度の軟らかさにしておきます。

    この段階で、粘土を触ると肌理の細かさや粗さ、「砂っぽい」かどうかが解かります。

    又指で押す事である程度の粘性も解かります。

   b) 直径が1cm程度、長さ15~20cmの細い紐を作ります。紐の両端を持ち、ゆっくり

    「Uの字」状に曲げて行きます。 曲げで「ひび」が入るかどうかを確認します。

    「ポッキリ」折れるようだと、粘りがありませんので、成形がし難いですので、このまま

    では、使用が難しいです。全く「ひび」が入らない場合や、「ちいさなひび」程度でしたら

    曲げる半径を徐々に小さくして行きます。当然曲げの強度が強くなりますので、「ひび」

    が入り易くなります。 曲げる量でその柔軟性(可塑性)が判断できます。 

  ) 乾燥による割れ、ひびの確認。

   a) 成形し易いと判断した場合、実際に作品を作ります。手捻りの場合と、轆轤の場合の両方

     試して見たいですが、手捻りだけでも十分です。その際、土の伸び具合も見る事ができ

     ます。

   b) 作品を作り終えたら口径と背の高さを測定しておきます。乾燥でどの程度縮むか後で

     確認する為です。

   c) 作品は自然乾燥させます。生渇きの段階で、底削りなどを行うと、肌荒れの状態から、

     砂の有無も確認できます。乾燥させると、徐々に「ひび」の入る粘土もあります。

     一般に「ひび」は成長する性質があります。「ひび」が徐々に広がるようですと、このまま

     では使用できない可能性が大きいです。

  ) 焼成(試し焼き)による確認。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 26 灰釉と石灰釉の違い 2?

2014-11-13 22:14:10 | 素朴な疑問
5) 草木灰の種類。

  灰は何かの物質の燃え残り、即ち燃え滓(かす)という事です。灰は数千倍~数万倍の量の

  物質を燃焼させて、わづかな量しか得る事ができません。それ故、継続的に同じ釉として利用

  するには工業的には適しませんので、天然の灰は量産的な作品には、ほとんど利用されてい

  ません。使われているのは、合成灰です。

 ① 灰は一種の産業廃棄物を燃やした物です。

  天然の松灰は、燃料の赤松の残り滓から得られ、藁(わら)や糠、籾殻なども、稲刈り、脱穀、

  精米時に発生した不要物を燃焼して得られます。

  土灰(どばい)は雑木の灰ですが、山の薪(たきぎ)や間伐材を燃料にしたものです。

  昔ならば竈(かまど)や、風呂焚き時に発生し回収した灰でした。

 ② 良い灰はなるべく一種類の樹木から出来た灰から得られると言われています。

  焼き鳥やの炭や、炭焼きで出た灰、暖を取る火鉢などからは出た灰は、灰の材料が特定できる為

  大変貴重なものですが、近年得難くなっています。

  柞(いす)灰は鉄分が少ない為、磁器の釉として使われていますが、この樹木は特別灰をとる為

  に植林されているそうです。

 ③ 木の種類として、 松、杉、樫(かし)、楢(なら)、橡(くぬぎ)等の樹木。

  椿、橙(だいだい)、みかん等の果樹や花木。更には樹皮である栗皮(これも不要品)などで、

  基本的には、どんな樹木の灰であっても、釉の原料に成ります。

  松や樫の灰には、黒さを増すマンガンが多く含まれ、黒釉を作るのに適します。

 ④ 草の灰も、不要な物質を燃やした物です。禾科の稲(藁、糠、籾殻)などが著名ですが、

  落ち葉や、少量の枯れた野菜くずや、選定された小枝や葉っぱなども利用できます。

6) 灰の主成分は、似たりよったりですが、微量ですが、その灰特有の鉱物(元素)が入って

   いますので、灰を使う人はどの様な灰か、その由来に拘る(こだわる)人も多いです。

 ① 植物はその生えている土地から、養分を吸収し、同時にその土地に多く含まれる元素を吸収

  することに成ります。有機物は焼成する事で、炭酸ガスとして空気中に放逐されますが、無機物

  は灰の中に残る事に成ります。それ故、同じ銘柄の灰であっても、それが採取された場所に

  よって成分が異なりましので、その経路も大切です。

 ② 採取した時期や草木の部位の違いも重要です。

   部位とは、樹木の幹や樹皮、根、枝、葉などで、樹皮や枝、葉には石灰分が多く、幹には

   珪酸が根には燐酸が多く含まれています。

 ③ 土灰にはマグネシアや鉄分が多く含まれています。マグネシア成分はマット釉を作るのに

   適しています。

 ④ 禾科の植物の灰には、珪酸が70~80%含まれ、乳濁釉に多く使われています。

7) 天然灰と合成灰。

  ① 今まで述べてきたのは、天然の灰の話ですが、上記の様に品質にバラツキが多い為、量産品

   には向きません。そこで天然灰を化学分析し、各鉱物を混ぜ合わせ、品質の安定した合成灰が

   作られています。天然灰と共に市販されています。値段的には、当然天然物の方が高価です。

  ② 市販されている釉にも、灰釉と謳われた釉があります。これら、ほとんど合成灰を使った

   釉です。

  ③ 天然の灰をご自分で作る人もいますが、材料集めから、焼成、篩掛けで異物の除去、

   灰汁(あく)抜き等作業工程が多く、かなりの労力が必要です。

   但し、民芸の陶芸家などでは、ご自分専用の灰を作っている人も多い様です。
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質問 13 酸化青磁釉について

2014-11-12 13:20:37 | 質問、問い合わせ、相談事
周防優美 様より、以下のご質問をお受けしました。

 近年、あちこちで酸化でも焼ける青磁釉というのを目にする機会が非常に多くなりました。

 これのカラクリが気になっています。鉄で発色させているのではないのでしょうか?

 お答え出来る範囲で構いませんので、ご教授いただけると有難いです。


明窓窯より

 ご存知の様に、青磁釉には1%程度の酸化鉄が含まれます。還元焼成する事で、所定の色に発色

 しまうが、 酸化焼成では、黄色やクリーム色になり、青磁の色にはなりません。

 現在では、酸化焼成でも各種の青磁に発色する釉薬が市販されてます。場合によってはご自分で

 調合する事も可能との事です。

 ◎ 但し、これらは本来の青磁ではありません。

  即ち、人工的に作られた青磁色の顔料を釉に添加した物です。

  銅青磁と呼ばれる釉は、酸化銅を呈色剤として青磁色に発色させたものです。

  これらの生の釉を見ると、すでに青磁色をしていますので、容易に見分ける事が出来ます。


  本物の青磁を発色させるには、かなり難しい為、どなたでも容易に青磁らしき色を出す為に、

  この様な釉が開発されたものです。

以上、参考まで!
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素朴な疑問 25 灰釉と石灰釉の違い 1?

2014-11-11 22:14:45 | 素朴な疑問
釉には、自然の灰を原料とした釉と、長石や珪石、石灰(その他のアルカリ成分)等の鉱物で調合

された釉があります。現在多く使われているのは石灰(炭酸カルシウム)系の釉で、市販品も多いです

理由は品質が安定し、常に一定の色やガラス質が得られる為で、更に、ある程度の調合が計算式か

ら導き出せれる事で、調合し易い事も大きな原因です。

灰釉は東洋独特の釉で、西洋での釉(石灰釉、長石釉)とは異なります。

当然、灰釉薬と石灰釉では色や趣(おもむき)などに違いがあります。

その違いに付いて述べたいと思います。

1) 歴史的には釉の発祥は,灰釉(かいゆ、はいゆ)から始まります。

  焼き締め陶器の一種の器(せっき)が焼成された、紀元前10~3世紀の中国では、作品に降り

  掛る燃料の灰が、高温で熔け光沢のある、ガラス質を形成する事が発見されます。

  即ち、この発見以降、灰が釉として始めて使われる事になります。

2) 灰釉は中国の唐や宋の時代に、目覚しく発展します。

  わが国に於いても、5世紀に朝鮮半島より、窖窯(あながま)が導入され、器(須恵器等)が

  焼成される様になります。窯の温度も1000℃を超える様になると、燃料の灰の中の石灰や

  アルカリ成分が、素地の珪酸部と化合し、ガラス質を生成し、表面を覆う様になります。

  初期の頃は、草木灰を水で溶き、意図的に器に塗り、釉にしていました。

  やがて、灰と他の長石などの原料と混合し、更に釉としての完成度を増してゆきます。 

3) 16世紀に茶の湯が流行し、千利休や小堀遠州などの茶人の下、禅の美意識と伴に「自然の美」

 が求められる様になります。炎に任せ不規則で地味な色の灰釉陶器が、人気を博す事に成ります。

 西洋でも来日していたバーナード・リーチなどの影響で、盛んに使われる様に成ります。

 ① 自然釉による焼き締め陶器。

  我が国での窖窯では、燃料に薪(まき)を使います。最終段階では、火力が強い赤松を使う事が

  多いです。その灰が作品に降り掛り、緑や黄色の色の付いたガラス質となっています。

 ② 偶然による自然に任せる事から、意図的に灰を掛ける方向に発展してゆきます。

 ③ 同じ自然釉でも、窯の位置や酸素量の有無、温度の差などによって、表情は色々に変化する

  事が発見され更に、焼成方法に工夫が凝らされる様になります。

4) 草木灰の成分。

  草木灰には次に述べる様に、多くの種類があり、その成分にも違いがあるのですが、おおむね

  次の様になっています。

 ① 石灰分が20~50%以上含まれています。

 ② 禾本科(稲科の植物)の藁(わら)や糠(ぬか)、籾殻(もみがら)等の灰には、シリカ

  (珪酸)成分が80%程度含まれています。

 ③ その他、マグネシウム等のアルカリ成分、マンガン、鉄、燐酸(リンサン)成分など多くの

  物質が含まれています。この成分の多様性が石灰系の釉と大きく異なり、釉の違いになります。

5) 草木灰の種類。

以下次回に続きます。

 
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素朴な疑問 24 土器での煮炊き 2?

2014-11-10 21:42:28 | 素朴な疑問
2) 土器が直火に強い訳。

  縄文式土器では、初期には底が砲弾型の様式のものや、極端に底が細いものが多い様です。

  (尚、時代と伴に、底を平らにし、直接地面に置ける様になっていきます。)

  これは、地面や囲炉裏に穴を掘って底を埋め込み使用した為と思われています。煮炊き用の

  土器も同じ様な形状ですので、穴に差し込んだ土器の周辺に、薪などを並べ側面から暖めたと

  考えられます。現在では、底から火を当てて煮炊きするのとは、異なる方法です。

 ① 土器作りで一番の問題は、制作時や焼成時に作品が破損する事です。その為の工夫がなされて

  います。縄文の文様を付けるのも、模様を付ける効果の他に、表面に縄文を押し付ける事で

  土を締め、強度を持たせる効果もあります。

 ) 制作時や乾燥時、焼成時に、割れる最大の原因は、粘土が縮む事です。

   それ故、縮む量を少なくするか、縮みに対して抵抗力を持たせる事です。

  a) 後者の場合には、植物や動物の繊維質のものを粘土に混ぜ込ませる方法が取られています。

    低温で焼成する事で、原形は留めませんが、焼成後でも繊維質の効果は残っている様です。

  b) 前者の場合は、粘土に砂(川砂)を混ぜ込ませる方法が取られています。

   その割合は20~30%程度と大量に含まれる場合も珍しくないとの事です。

  c) 焼成による縮み量は、上記の様に砂を混ぜる以外に、焼成温度が低い為、縮み量は少なく

   なります。更に、片方のみに熱が集中しない様に、燃料の供給を調節し、焼成の破損を防い

   でいます。

 ② 直火で煮炊きしても破損しないのは、上記の様に砂が混入されている事で、急熱急冷に耐える

   組成になっている事も大きな原因です。更に、火勢が弱い事も原因です。未だ竈(かまど)が

   発明されておらず、火を直接土器に当てる事も少なく、周囲から遠火で暖めている状態に

   近いものでした。その為、直火の煮炊きが可能になったと思われています。

 ③ 直火でも、器が急熱な急冷に成らる事も、重要な要素です。

   即ち、土器は手作りの為、肉厚が厚くなり易いです。更に、器に冷えた液体が入っている場合

   器は中々熱くなりません。良く行う実験に、紙の器に水を入れ、火に掛けても紙の容器が

   燃ずに、水が沸騰するのと同じです。土器でも水を入れて煮炊きすれば、器は急激には温度

   上昇せず、温まり難く、冷え難くくなっています。それ故、空焚きし無ければ、温度は一定

   温度までしか上昇しません。

   即ち、土器は急激な温度変化に対応出来ていると、考えられています。

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素朴な疑問 23 土器での煮炊き 1?

2014-11-09 21:39:38 | 素朴な疑問
土器と呼ばれる焼き物は、一般に700~1000℃程度で焼成されています。

縄文や弥生式土器は、基本的には野焼きですので、700~800℃程度が多い様です。

この温度は素焼きの焼成温度と同じ程度ですので、当然水を透し水漏れを起こします。

しかし、この様な焼きの甘い焼き物も、古代では煮炊き用として利用されていました。発掘品には、

穀物や動物の肉、貝などを煮炊きした痕跡が見られと言う事です。即ち、この様な土器も十分使用に

耐える焼き物となっています。水の漏れる容器でいかにして煮炊きが出来たのか、不思議に感じます

又、土器を直接火に掛けた(当てた)とみなされています。現在の陶磁器は土鍋などの特殊な粘土を

使ったものしか、直火に掛ける事が出来ません。これも不思議に思う素朴な疑問です。

1) 水漏れ防止方法。

 現在ならば、水漏れ防止剤もありますが、古代ではその様な薬品は有りませんでしたが、それに

 代わるものがありました。

 ① 煮炊きした残りの液体を使う。

  ) 新しく焼かれた作品は当然水を透し、そのままでは煮炊きや水の貯蔵などには、使用できま

   せん。そこで煮炊きした残りの暖かい液体を注ぎ込み、内部に浸透させ素地に吸い込ませます

   一度処理を施せば、煮炊きを重ねる事で、更に強固になりますので、壊れるまで使えます。

  ) 吸い込まれた液体は当然外に漏れ出します。即ち素地の隙間を通り抜けます。

   煮炊きした残りの液体には、穀物の粒や貝などには、溶けたものにはデンプン質、肉類の脂

  (あぶら)などが含まれています。これらが素地の隙間に引っ掛かります。

  ) 注ぎ込まれた液体を他の容器に空けてから、作品を乾燥させます。

   乾燥すると、デンプン質や脂類は硬く固まり、素地の隙間を埋める事に成ります。

   現在でも新たに使う土鍋は、長持ちさせる為に、お粥を炊くと良いと言われているのと同じ

   事です。一度で上手く水漏れ防止が出来ない場合には、同じ事を数度繰り返した様です。

  ) 但し、煮炊きした液体が無い場合は、どうしたのかの疑問が残ります。

 ② 磨製土器(つや出し土器)

  つや出しは粘土の表面に光沢を与えるだけでなく、表面を石などで擦り付ける事で、素地の隙間

  に目詰まりを起こし、吸水性の少ない、丈夫な壁を作ります。

  我が国でも、弥生式土器などでは、表面を磨いて水漏れを防ぐ方法がとられていた様です。

  ) つや出し土器の歴史は古く、世界の各地で行われており、中東では7千年以前の作品の

    破片が発見されています。

  ) 現代でも「水甕(みずがめ)」として利用されています。特に表面に水が染み出し、

    蒸発する事で、甕の水を冷却する働きがあり、重宝に利用されています。

    特にアフリカでは現在でも制作続けられているとの事です。

  ) つや出しは粘土の生乾きの段階で行います。

   a) 目の細かな泥漿(でいしょう)でコーティングしてから行うと、より強固に成ります。

   b) 古くから使われている道具は、川原などで採取した丸みのある自然石です。

   c) 現在では、スプーンのの背中や、市販されているゴム箆(へら)、動物の革の切れ端、

     フェルト等の繊維類などが使われています。

  ) 乾燥が進んだ場合には、金属製のへら、鋸(のこぎり)の刃、瓢箪(ひょうたん)の皮

    などで磨いて艶を出しています。

2) 土器が直火に強い訳。

以下次回に続きます。
 
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素朴な疑問 22 高台の役割?

2014-11-08 21:53:39 | 素朴な疑問
多くの焼き物には高台が付いています。なぜ高台が必要なのでしょうか?

1) 高台は焼き物の底に付けられている、凸状のものや凹状の形状の部分です。

 特に、食器類に多く見られます。 その役割は以下の様な事が考えられます。

 ① 使い勝手を良くする為。これが一番の理由かもしれません。

  使い勝手が良いとは、持ち易い事や持ち運びや、収納が便利な事などです。

  ) 高台部分は細くくびれている場合が多いです。(但し、碁笥底高台ではくびれません)

    くびれた部分に指先や、小指の付け根などが入り込み、上に持ち上げる際、手や指が引っ掛り

    滑らずに持てる為、持ち易くとても便利です。

  ) 高台部分は本体より小さく出来ていますので、器同士を重ね易くなっています。

    即ち、収納場所を取らない事に成ります。当然口縁の形によって重ねる事が出来ない器も

    あります。

  ) 作品を軽く出来る。底周辺には不要な土が残っている事が多いです。(特に轆轤作業では

    残しておかないと、上の土を保持できません。)高台部は一般には削り作業になります。

    削る事で贅肉(ぜいにく)を落とし、軽くする事になります。

 ② 施釉作業がし易くする為に必要。

   釉を掛ける際、常に指跡が問題に成ります。但し、吹き掛けでは問題に成りません。

   指跡はその部分のみ、他とは異なる釉の濃度となり易く、中々平滑にし目立たなくする事は

   困難です。それ故、指跡が残らない様に、作品を持つ必要があります。

   尚、わざと指跡を強調し、景色とした作品もあります。

  ) 一般的には、高台を持って施釉します。高台部分は例え指跡が付いても、目立たない所

   です。又、高台は持ち易い程度の大きさと、高さに成っている場合が多いです。更に、高台は

   底の中心に設けられていますので、ここを片手で持つ事は、作品の重心の真上を持ち事に

   成ります。それ故、持ち上げても安定感があります。

  ) 慣れた方ならば、「ガバ漬け」と言って、高台を持って一度で器の内外を塗る事が出来

   ます。手を持ち替える手間と指跡を少なくします。

  ) 施釉薬する範囲が広がります。

    焼成時に棚板に接する部分には、釉が棚板に固着するのを防ぐ為、釉は塗れません。

    それ故、出来るだけ少ない面積で棚板に接する様にしたいです。

    「べた高台」は接する面積が大きくなりますので、同じ様な形にしたい場合には、碁笥底

    高台にし、高台の内側を削り、施釉出来る様にします。

 ③  高台が有ると、作品の見栄えが良くなります。

  ) 高台は作品をテーブル等の置き場所から、作品を浮き上がらせる効果があります。

   径の小さな高台や背の高い高台は、浮き上がりを強調します。即ち、足元がすっきりした

   形になり、作品に動きが現れ、軽やかさが生じます。尚、小さ過ぎる高台は不安定ですので、

   裾広がりの「撥(ばち)高台」にします。

  ) 茶道などでは、お道具拝見の際、茶碗の底を見るのが普通です。

   それ故、決まりきった形ではなく、特殊な形の高台を付ける事も多いです。これも見栄えを

   考えた造詣です。

以上高台は諸々な効果がありますので、設ける事が多いです。

   
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素朴な疑問 21 マット(艶消し)釉

2014-11-07 22:34:11 | 素朴な疑問
釉の種類は大きく分けて、透明釉、乳白釉、艶消(マット)釉に分類されます。

前者の二種類の釉は、光沢釉になります。光沢の無い釉をマット釉と言います。

マット系の釉を好んで使用する人も多いです。しかし光沢のある釉が圧倒的に多く存在しています。

尚、光沢のある釉を、他の材料を添加する事で、マット系の釉に変える事も出来ます。

1) マット釉はどうして光沢が無いのか?

  光沢があるとは、光が規則的な反射をする事です。その為には、表面が平滑である事と、釉内部

  に光を乱反射する物質(結晶など)が存在しないか、有ったとしても、極細かい結晶である事です。

 ① 光沢の無い釉(マット釉)は、釉の表面や内部で光の乱反射を起こす事で発生します。

   釉は高温に熔けた段階では、液化し表面は滑らかで結晶もありませんから、光沢があります。

   しかし、温度が下がるにつれて、釉は固まり始め、釉の成分によっては、光沢が徐々に無く

   なっていきます。即ち、マットは冷却時に発生するものです。

 ② マットには表面で乱反射するものと、釉の内部で乱反射する二種類があります。

  ) 表面で乱反射する場合。

    一般にどんな釉であっても、十分に熔けきっていない場合には、マット状態に成ります。

    即ち、窯から出した場合、表面が「ざらついて」いる時は、熔け不足ですのでマット状態に

    なります。表面に細かい凹凸が出来ている状態ですので、「ざらつき」が発生します。

    この様な平滑でない状態の釉では、外部からの光は乱反射を起こし、マット(艶消し)状

    になります。その為、ラップ(サランラップ等)が張付かない場合があります。

  ) 表面が平滑であってもマット状に成るのは、釉の内部で乱反射が起こるからです。

    乱反射させる物質は、釉の内部に発生する結晶です。目に見える程大きな結晶の場合は

    マットとは呼ばず、結晶釉として取り扱います。見た目にも結晶と確認できない程、

    細かい結晶の場合には、マット釉と呼びます。その為、釉は不透明又は、半透明の釉に

    成ります。

2) マット釉を作る。

  ① ゼーゲル式をグラフ化した「アルミナーシリカ関係図」から解かる様に、アルミナ成分

    (Al2O3)を多くし、珪酸成分(SiO2)を少なくすると、マット釉に成ります。

  ② アルミナ質のマット釉。

    韓国カオリン 30%程度と、マグネサイトと炭酸バリウム を数%添加する事で、マット釉が

    出来ます。この釉は質感の柔らかい釉です。

  ③ 珪酸質のマット釉。やや冷たい印象を与える艶消しです。

    マグネサイト 12~15%程度添加します。

  ④ バリウム系のマット釉。

    炭酸バリウム 12~17%程度添加してます。

  ⑤ 石灰系の釉には蝋石(ろうせき)を添加するのが一般的です。

  ⑥ 滑石(タルク)を30~50%程度添加したマット釉です。

    尚、タルクは生ではなく、焼きタルクを使います。

3) 窯の冷却スピードを遅くした方が、良いマットになります。
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素朴な疑問 20 歪み(ゆがみ)とは 2?

2014-11-06 22:11:54 | 素朴な疑問
4) 歪ませる方法。

 ① 轆轤作業中に歪ませる。

  電動轆轤の出現以前では、人の手や足を使って轆轤を回していました。その為、必ずしも回転

  速度は一定せず、遅い早いの繰り返しでした。更に、軸受け部も現在ではボールベアリングが

  使用され、スムーズに回転する事ができます。以前であれば、「ガタ付き」のある轆轤も多く

  存在し、その為、轆轤作業で自然に歪む事も稀ではありませんでした。現在では、形の整った

  綺麗過ぎる作品になっている場合も多いです(但し、これは熟練した職人達のことに成ります)

  ) 轆轤をゆっくり回転させて轆轤作業を行うと、作品は振れ易くなります。

  ) 轆轤作業の際、土から急に手を離すと、作品は振れます。

  ) 轆轤作業中に、手の甲側の指を使って作品を真横方向から軽く叩くと、作品は振れます。

    但し、これらの方法は、歪みは偶然性によりますので、好みの歪みに成るとは限りません。

  ) 轆轤目を付ける。轆轤目は肉厚の厚い時に行います。肉が薄いと轆轤目は綺麗に出来ま

    せん。即ち、荒伸ばしの際に行うと轆轤目が付き易いです。作品の内外から指に力を入れ、

    真上に早めに手を挙げます。回転速度と引き上げる手の速度で、轆轤目の粗さが決ります。

    但し、形作りに入ると折角付けた轆轤目が、消える恐れがありますので、内側からのみ膨

    らませる事に成ります。細かい轆轤目は濃い釉を掛けると消える場合があります。

 ② 轆轤作業後に歪ませる。

  ) 作品の上部を切り取り「山道」を作る。

    高さ方向の狂いは初心者で良く見られる現象ですが、熟練した職人達では狂う事は稀です。

    その為、口縁部を針や弓で、好みの量切り取り、凹凸を設けます。

  ) 楕円形や四角形などに変形させる。

   a) 轆轤挽き直後は表面が「ベタツク」きますので、若干乾燥させ「ベトツキ」が無くなって

    から作業する事に成ります。口縁のみを楕円か四角にする方法と、底の部分から楕円などに

    する方法があります。口縁部のみであれば、底を糸切する必要はありませんが。底から変形

    する場合は、糸切後に行う方がやり易いです。

   b) 変形する方法は手のみで行う方法と、板などを利用する方法があります。

    手のみであれば、綺麗な楕円形や四角形にする事は難しくなりますが、軟らかくて味のある

    形に成ります。 木の板などを利用する場合には、平らな板2枚で土を鋏込みます。

    但し、楕円の場合には、湾曲する様に板を回転させる必要があります。

    綺麗な楕円形にするには、石膏型を使います。轆轤挽きした作品を楕円形の石膏型に押し

    付けて楕円にします。

  ) 箆(へら)目を入れる。

    轆轤挽き直後に行うと綺麗なカーブが出易いです。若干乾燥後に行うと、線に固さが残り

    ます。竹箆は水で濡らしてから、作品の側面に押し当て、下から上に又は上から下へ力強く

    移動させます。箆目の数は2箇所程度が多いようです。多過ぎると線が「わずらわしく」

    なります。当然箆を押し当てる面積によって、線や面の形状が変化します。

 ③ 削ぎや面取り、割高台などの作業は、底削り後に行います。

   切れる刃物やカンナを使いますので、底削りが可能な程度の、生乾きの状態で行います。

   削ぎや面取りは一思いに大胆に行うと、綺麗な線や面が出来ます。

 
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