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菊池寛『第二の接吻』その2

2014-08-15 09:27:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 宮田の登場に動揺した倭文子は、その後4人でした麻雀で負け続け、やっと上がった手も「ちょんぼ」で、泣き出してしまう。倭文子が部屋に下がると、村川が訪ねてきた。村川は倭文子からの手紙をもらい、それが誤解からなっている拒絶だったので、かえって勇気を得ていた。村川は倭文子と話がしたいと言ったが、京子はもう休んでいると言い、村川は強引に上がり込み、京子がいた2階に上がっていく。しかしそこには今井と宮田がいて、村川は絶望に追いやられる。京子はその間に倭文子のいる部屋に行き、彼女を慰めるふりをして、部屋に鍵をかけて、2階に向かう。京子や宮田にからかわれた村川は怒りを抱えたまま辞去した。
 京子は今井に「ほうびの品」をやるという条件で、宮田と倭文子が結婚するように仕向ける「結婚促進運動」を進めることに同意させる。そして翌日の午後、京子は買い物に出かけ、今井も用事があると言って一緒に家を出る。その夜、いつまで経っても京子も今井も帰らず、倭文子はしぶしぶ宮田と一緒に夕食を食べ、その後すぐに自室に戻りたかったにもかかわらず、宮田が次々と話しかけてきて、なかなか中座できない。
 やがて宮田は、倭文子の反応が悪いのは、自分たちの間の一番大事な話題である縁談について話していないからだと言い出し、なぜ自分のことが嫌いか言ってほしいと詰問し出した。たまらず倭文子は自室に下がろうとするが、宮田は倭文子の肩に手を伸ばし、ついには電灯のスイッチを消して、倭文子の両肩をつかんだ。倭文子は宮田を突き飛ばし、玄関のドアを烈しい音を立てて開けると、戸外の闇へ走り入った。倭文子は石堤をまたぐと岩の上へ飛び降り、海に飛び込もうとし、一旦は宮田に取り戻されるが、再び海へ迫った。そこで倭文子と宮田がもみあううちに、宮田の右の頬が、すさまじい音を立てて背後から打たれた。「おい! 乱暴なことをするな!」村川だった。彼は、昨夜と今宵と、倭文子に会う少しの機会でもないかと、別荘の周囲を、夜盗のようにうろつきまわっていたのだろう。彼と宮田は烈しい言い合いの末、つかみ合いになり、やがて2人もろとも崖から海に落ちた。しばらくして満身ズブぬれになった村川が現れた。海は浅く、波に持っていかれることもないから、宮田もそのうち上がって来るだろうと言う。
 しかしなかなか宮田は上がって来ず、村川は宮田を探しに再び崖の下に向かったが、宮田を発見することはできなかった。どこかを打って気絶するか、運が悪ければ死んでいるかもしれないと、村川は言う。そして倭文子に彼女名義の手紙を見せ、全ては京子の策略だったことを知らせた。別荘に戻ると、やはり宮田は戻っておらず、二人は冷えきった体を暖めるためにストーブに火を起こした。倭文子は「一瞬たりとも村川と離れて暮らすのは嫌だ。一人になるなら死ぬ」と言い、村川はそれなら結婚するほかないと言い、倭文子にキスをした。そして「結婚することは接吻することなの?」という倭文子を力一杯抱きしめた。
 翌朝、東京に戻っていた京子は、別荘番からの電話で宮田と倭文子がいなくなっていると聞いて、すぐに別荘へ向かうと、倭文子の持ち物はなくなっていて、宮田の持ち物は残されていた。そして京子宛の村川からの手紙があり、宮田が行方不明になったこと、宮田の存否が明らかになれば、自分と倭文子は結婚して会いにいくつもりであること、京子の策略が全て失敗に終ったことが書いてあり、京子は激しい怒りと憎悪に捕われる。その4日後、村川と倭文子は箱根の芦ノ湖に身を投じた。死を求めて止まぬ倭文子に引きづられての投身自殺だったが、倭文子がすぐ窒息したにもかかわらず、泳ぎに長じて頑健な体の持ち主であった村川は一命を取り留めた。京子は倭文子の死に化粧をしたいと申し出て、箱根に向かい、村川に並べてあった倭文子の遺体を別室に運ばせ、村川を看病していると、意識を取り戻した村川は、京子の唇を求めた。京子は夢中になって、唇を差し寄せた。「あなた、許して下さるのですか」京子は狂気のように叫んだ。「許すも。許さないも。ないではありませんか。あなたもよく生きていてくれましたね。倭文子さん」京子は、村川の手をふりほどき、はじかれたように、一間ばかり身を退けると、壁際の長椅子に、崩れるように身を投げたのであった。

 平易な文体で、あっと言う間に読めてしまう小説でした。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/

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