秋の終りをもう80回近く迎えているが、年々その感じ方は変わってくる。今年は木枯らしが吹いても、また季節が逆戻りしたようになって、次の季節を迎えることをためらっているようである。夏が終わって一気に冬というイメージがここに来て少し長い秋を楽しませてくれる。ベランダから見る山々も、まだ葉を落とさずに最後の彩りを見せている。夕陽を美しく感じるのも一入である。先日、夕日を沈むのを追いかけるようにして、三ケ月が出たのが感動的であった。あたり前の景色に、感情を移入するという経験の記憶はないが、これも高齢になったせいであろうか。
「あかね色の空は、濃く朱がかかったところもあり、薄く紅がかかったところもあり、それに薄紫や薄あい色のところも少しあった。もっとほかの色もあって、夕もやのなかに溶けあい、じっと垂れているようでもあり、消えてゆきそうであった。」(川端康成『舞姫』)
皇居の森の夕焼けを、川端はこんな風に描いている。その観察眼は、詳細で時間の経過も書き込んで余すところがない。夕方に散歩をするようになって、朝とは違う風景を見ることが多くなった。夕焼けの暖色は、秋の景色のなかで心を和ませてくれるものがある。
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