秋晴れと秋雨が交互にくるようになった。一雨ごとに、気温が下がる。昨日、テレビで札幌の雪虫が写っていた。子どもの頃、雪の降る前に、この虫がまるで雪が降るように飛んでいたのを思い出す。この季節になると、雪迎えという現象が起きる。これは、空を飛ぶ白い糸である。南陽市に住む錦三郎先生が、長年研究したものである。錦三郎の著書『雪迎え』から引用する。
「晩秋の晴れた日、無数の子グモが、脚をつっぱり腹部を空にもちあげクモイボから糸を吐く。糸がある長さになると、クモは脚を放す。すると糸に引かれて雲は空のかなたへ飛んでゆく。その時の糸の集まりがつまり「雪迎え」である。」
この現象は山形県の置賜地方で見られる。秋の「雪迎え」は飯豊の方から、蔵王の方面へと飛んで行った。冬をどこかの山中で越すためであろうか。春には「雪送り」と呼ばれて、秋とは逆の方角に飛ぶ。こうして、子グモはどこかで越冬して、古巣に帰っていくらしい。
中原中也の詩の一節が、秋を越す身に浸みわたる。
秋の夜は、はるかの彼方に、
小石ばかりの、河原があって、
それに陽は、さらさらと
さらさらと射してゐるのでありました
(中略)
さて小石の上に、今しもひとつの蝶がとまり、
淡い、それでゐてくっきりとした
影を落としてゐるのでした。
やがてその蝶が見えなくなると、いつのまにか、
今まで流れてもゐなかった川床に、水は
さらさらと、さらさらと流れてゐるのでありました。
(中原中也『在りし日の歌』)