常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

雪迎え

2023年10月19日 | 日記
秋晴れと秋雨が交互にくるようになった。一雨ごとに、気温が下がる。昨日、テレビで札幌の雪虫が写っていた。子どもの頃、雪の降る前に、この虫がまるで雪が降るように飛んでいたのを思い出す。この季節になると、雪迎えという現象が起きる。これは、空を飛ぶ白い糸である。南陽市に住む錦三郎先生が、長年研究したものである。錦三郎の著書『雪迎え』から引用する。

「晩秋の晴れた日、無数の子グモが、脚をつっぱり腹部を空にもちあげクモイボから糸を吐く。糸がある長さになると、クモは脚を放す。すると糸に引かれて雲は空のかなたへ飛んでゆく。その時の糸の集まりがつまり「雪迎え」である。」

この現象は山形県の置賜地方で見られる。秋の「雪迎え」は飯豊の方から、蔵王の方面へと飛んで行った。冬をどこかの山中で越すためであろうか。春には「雪送り」と呼ばれて、秋とは逆の方角に飛ぶ。こうして、子グモはどこかで越冬して、古巣に帰っていくらしい。

中原中也の詩の一節が、秋を越す身に浸みわたる。

秋の夜は、はるかの彼方に、
小石ばかりの、河原があって、
それに陽は、さらさらと
さらさらと射してゐるのでありました
(中略)
さて小石の上に、今しもひとつの蝶がとまり、
淡い、それでゐてくっきりとした
影を落としてゐるのでした。

やがてその蝶が見えなくなると、いつのまにか、
今まで流れてもゐなかった川床に、水は
さらさらと、さらさらと流れてゐるのでありました。
(中原中也『在りし日の歌』)

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金木犀

2023年10月15日 | 登山
金木犀が咲くと秋が深まった印象が強い。天予報では、今日の最高気温は16℃、北海道では降雪が予想されている。安達太良山、谷川岳。今年訪れた山々に紅葉の見ごろになった、との知らせもある。雪が来る前に、短い秋を楽しみたい。そんなことを考えていると、山の仲間が立派な天然マイタケを届けてくれた。散歩の途中、城址の桜の木の根元で見つけたのとのこと。人生初めての収穫と言っていた。やはり、戸外に出なければ、こんな僥倖にもめぐり会うことはない。秋を楽しむとはこういうことか。

蛤のふたみに別れ行秋ぞ 芭蕉

芭蕉、「おくのほそ道」の大団円。大垣に着き、旅を終えて伊勢へ向かう芭蕉の門人たちとの別れの句だ。長谷川櫂の「日めくり四季のうた」にも採られている。NHKの「英雄たちの選択」という番組で、芭蕉が取り上げていた。この番組に俳人の長谷川櫂氏が出演していた。今年、この人の本2冊を買った。本を読んだ印象がテレビの番組の語りで強化される。おくのほそ道の最初の句
「行春や鳥啼き魚の目は泪」とこの最後の行秋の句を対比させ、芭蕉の「おくのほそ道」は、単なる紀行文学ではなく、歩いた土地と句をどう配置するかを練に練った文学であることを強調されていた。

番組では、俳諧が頓智や滑稽を詠むことにとらわれ行き詰ったとき、芭蕉がそのこだわりを解き放ち、新しい文芸の形が提出された。その流れが、現在の俳句につながっている。興味深い話で、まだまだ若い長谷川櫂の実像に接することができた楽しい時間であった。
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秋晴れ

2023年10月13日 | 登山

ここ3日間秋晴れが続いている。短い秋に、このような日々は貴重だ。暑からず、寒からず、冷たい風も吹かない長閑な日和だ。仲間と西黒森山を、歩いてきた。登山ではあるが、夏の高山に比べると歩きと言った方がいい。山中にはハナイグチ、スギカノカなどの初秋のキノコが大量発生していた。まだ、紅葉は低山であるので、ほとんど見られない。

今月になってトレッキングポールを2本使用することにした。昨年の滑落事故以来、特に石の多い岩場の下りでは、恐怖感が先にたってバランスを崩し、高い山は無理と思うようになった。2本のポールの補助で、バランスがとれるようになり、あれほど感じていた恐怖感を抱かずにスムーズに下れるようになった。何より、疲労感がかなり軽減される。2本のポールが、姿勢を正してくれる。比嘉一雄の『姿勢筋トレーニング』によれば、身体に負担の少ない良い姿勢について言及がある。・くるぶしと頭を結ぶ線が身体の中心にあり一直線・背筋が真っすぐに延びている・前後左右にバランスがとれた状態。エネルルギーを無駄に使わず、長時間この姿勢を保っていても疲れない・関節に余計な負担がかからない。

でこぼこ道を登ったり降りたりする登山ほど、よい姿勢をとりずらい運動も見当たらない。2本のポールを持ってみて、山道を歩きながら姿勢を正してくれるツールであることが実感できる。昨日の歩いた距離は7㌔、時間は5時間ほどであったが、一日歩いてみて、疲れがあまりない。ストックを持ったために、腕や肩に多少の疲労感が残ったが、帰宅して入浴してほぼ解消。夜の睡眠もしっかりとれた。適度な運動と、夜の気温が下がったので、睡眠環境もぐっと改善した。秋晴れの一日、やっと爽快な気分で日が過ごせる。
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紅葉幻想

2023年10月08日 | 登山
今日、24節季の寒露。朝の冷気が一段と増す季節である。あれほど暑かった10日前が、朝夕寒い。鳥海山にも初冠雪がきた。異常な気象がやっと暦に追いついた。今日、蔵王のドッコ沼に行った人の話では、沼周辺の紅葉はやっと始まったばかりらしい。例年より1週間から10日遅いようだ。テレビの番組でも、紅葉を特集したものが放映されている。涸沢カールの見事な紅葉が放映された。ここを訪れたのは一昨年だが、紅葉には少し早い時期であった。テレビに撮られているような紅葉を見るには、よほどの幸運がないと不可能だろう。何度も通いつめてやっと見られる景色と思われる。高い視点から見下ろす箱庭のような紅葉の光景は、昨年の秋に見た月山の紅葉を思わせるものであった。

この番組で紹介された紅葉番付は、東の横綱が涸沢カール、そして西の横綱が尾瀬沼となっていた。そこで生成AIで月山の紅葉を作成依頼した。表題の画像であるが、実際に見た月山の紅葉からはかけ離れたものなっている。幻想をみているような光景である。ネットの画像を検索して尾瀬の紅葉を見た。

こちらは、木々や草紅葉が自分の目線で見える。身体ごとすっぽりと紅葉に包まれたような感覚だ。この秋は、夏の異常な高温で紅葉も例年のようではないらしい。京都などより、山岳の紅葉は、夏の気象の影響が小さいかもしれない。

鳥海山や月山に初冠雪が来ると、高山の秋はさらに短い。短い光彩の時を経て、眠りの季節を迎える。紅葉を見るというより幻想のうちに冬山へと姿を変えていくのかも知れない。
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短い秋

2023年10月06日 | 日記
急に冷え込んできたと思ううちに、一昨日大雪山に、昨日は富士山に初冠雪のニュースが流れた。あの暑い日々は、もう記憶のなかのものになっている。ニラの花に蝶が止まっている景色も、懐かしいものになった。秋をすっ飛ばして
冬がやってきた。

二つ折りの恋文が花の番地を捜してゐる。 (ルナール)

蝶を恋文に見立てた、こんな詩句も懐かしい。ひ孫が生まれて1年3か月になる。歩くことを覚えたと思ったら、昨日の動画で走っている姿が写っていた。
言えるようになった言葉が三つ。「お茶、ママ、ワンワン」。日々の早い流れが、そのままひ孫の成長につながっている。
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