カレンダーを一枚と切り取った。9月の蕎麦の花から、10月は赤湯の熊野大社の風花に変わった。たくさんの風車が回り、若者の思いを神様に届けてくれのが、風花であるらしい。曼珠沙華が咲き、山には紅葉が始まる季節。年老いた身には、秋の夜長に本を開くのも楽しみの一つだ。イギリスの詩人、ゴールドスミスにこんな言葉がある。
良書を初めて読むときには、新しい友を得たようである。前にも読んだ書物を読み直すときには、旧友に会うのにと似ている。
いつか読みたい本や一度読んで、も一度読もうと思う本は、本棚に溢れている。秋の夜長、司馬遼太郎の『街道をゆく』を開く。街道を歩け、そこに先人の歩んだ跡を訪ね、日本の国の辿った歴史を思いやる。もう、司馬のように日本中を歩き回る体力はないが、本のなかで街道を歩いている自分がいる。