金木犀が咲くと秋が深まった印象が強い。天予報では、今日の最高気温は16℃、北海道では降雪が予想されている。安達太良山、谷川岳。今年訪れた山々に紅葉の見ごろになった、との知らせもある。雪が来る前に、短い秋を楽しみたい。そんなことを考えていると、山の仲間が立派な天然マイタケを届けてくれた。散歩の途中、城址の桜の木の根元で見つけたのとのこと。人生初めての収穫と言っていた。やはり、戸外に出なければ、こんな僥倖にもめぐり会うことはない。秋を楽しむとはこういうことか。
蛤のふたみに別れ行秋ぞ 芭蕉
芭蕉、「おくのほそ道」の大団円。大垣に着き、旅を終えて伊勢へ向かう芭蕉の門人たちとの別れの句だ。長谷川櫂の「日めくり四季のうた」にも採られている。NHKの「英雄たちの選択」という番組で、芭蕉が取り上げていた。この番組に俳人の長谷川櫂氏が出演していた。今年、この人の本2冊を買った。本を読んだ印象がテレビの番組の語りで強化される。おくのほそ道の最初の句
「行春や鳥啼き魚の目は泪」とこの最後の行秋の句を対比させ、芭蕉の「おくのほそ道」は、単なる紀行文学ではなく、歩いた土地と句をどう配置するかを練に練った文学であることを強調されていた。
番組では、俳諧が頓智や滑稽を詠むことにとらわれ行き詰ったとき、芭蕉がそのこだわりを解き放ち、新しい文芸の形が提出された。その流れが、現在の俳句につながっている。興味深い話で、まだまだ若い長谷川櫂の実像に接することができた楽しい時間であった。