「京都のお祭りに登場する剣鉾…すごく豪華で素晴らしいでしょ!」と、ミモロがそばで…。
これは「剣鉾」という祭具のひとつ。神輿渡御の前を進み、氏子町を清めるのがお役目です。
夜、20時近くに「粟田神社」に到着したミモロ。
石段の上の境内から、カ~ン、カ~ンという涼やかな鈴(リン)の音が風にのって聞こえています。
「やってるんだ~」と、石段を勢いよく上がります。
そこでは、「粟田神社剣鉾奉賛会」や吉田神社、八大神社、大豊神社、岩倉神社など、京都の東側で剣鉾を奉納する神社の差し手の皆さんが集まって、剣鉾差し上げの練習をなさっているのです。
平安時代の創建と伝わる「粟田神社」。ご祭神は、スサノオノミコト(牛頭天王)と大己貴命(オオナムチノミコト)です。
現在の「八坂神社」(感神院祇園社)とのゆかりが深く、旧社名が「感神院新宮」ということからも伺えます。室町時代の動乱の折は、祇園会に変わり、祇園祭を行ったとも。
さて、ミモロが京都に暮らし始めて、初めてその存在を知った「剣鉾」。以来、その音色と差し上げる姿に魅了され、よく追っかけをしていました。
見事な錺細工による「剣鉾」は、穢れを祓う祭具。「粟田神社」には、江戸時代の「剣鉾」も…。
竿の側面にも、素晴らしい細工…まさに錺職人たちの技が…。
「お祭りの神輿も剣鉾も、京都のものは、みんな素晴らしい・・・芸術品だよね~」とミモロ。
毎年行われる祭りのために、奉賛会の人たちは、剣鉾に関するさまざまなことを、受け継いで行くのです。
「綱のかけ方も決まりがあるんだって~」と、そばで真剣に見るミモロ。
先端部分には、鋭い剣が…。
ピカピカの表面は鏡のよう…ミモロの顔も映ります。
ミモロ、触っちゃだめよ!「うん、もちろんわかってるよ!何年、京都のお祭り見てると思うの!」とミモロ。これは失礼…。
祭りの祭具には、決して触ってはいけません。また、紐などを跨ぐこともNG行為です。
ところで、金色の錺のデザインは、それぞれ異なり、差し上げの人の装束も変わります。もともと各氏子町が保有していたという祭具で、「粟田祭」の期間中、町会所が設けられ、そこで昔の剣鉾などをお祀りして、見学することができます。
なんで鈴がなるかというと…金色の錺から紐で下げた鈴を、差し竿の上部の金具に充てて、音を出すのです。
「差し手の技術によって、音違うんだよね~」と、すでに何年もその音を聞いているミモロ。「あ、上手になってる~」とか「う~ちょっと響きがないね~」と、しっかり聞き分けています。
だから、差し手の人たちは練習が大切。この日も拝殿の周りを、腰を安定させながら、ステップを踏むトレーニングが行われていました。
「体幹が大切なんだって~。グラグラすると、全然、鈴、鳴らないんだよね」
高さ6mほどの剣鉾、その重さは30キロ以上とも…それを腰に付けた差し上げ帯に受けて、真っすぐ立たせるだけでも、なかなか技術が必要。
そのためのトレーニングは必須です。「イチニ~イチニ~」と、ミモロも…
「以前に比べらた、随分、若い人が参加してくれるようになりました」と笑顔で見守る奉賛会の廉屋さん。
そう、ミモロが初めて剣鉾の練習を見学した10年前に比べ、参加人数は倍増。剣鉾の差し上げも、いろいろな神社で復活したり、盛んになったりと、その存在を高めています。京都でも、東山エリア以外でも、剣鉾を奉納する神社は多く、滋賀県などでも行われているそう。「それぞれの地域で差し上げの仕方に違いがあるんですよ」と廉屋さん。
「剣鉾」の存在が多くの人に知られるようになり、各地で復活。さらに「熱田神宮」などでも奉納するということにも発展しているそう。「本当に、うれしいことですね」と。「廉屋さんは、剣鉾差し上げないんですか?」と、以前、巧みな技で見事な音色を響かせていた差し手の廉屋さんです。「う~もう若い人に譲りました…」と、誇らしげな表情に、ちょっと寂しさも感じたミモロです。
「剣鉾」の復活に尽力なさった大西先生が亡くなって、その活動は、次世代へとしっかりと受け継がれています。
ミモロも、お世話になった大西先生。剣鉾に縛り付けられ、差し上げられた日を懐かしく思い出すミモロでした。
「これからも、どうぞ差し手になりたい人は、遠慮なくいらしてください~」と廉屋さん。
練習日は、10月の「粟田神社」のお祭りまで、集中しています。気軽に見学に…。
観光で京都旅をなさっている方も、ぜひ、夜見学に来ませんか?「感激するよ~」とミモロ。
この日も、夜9時まで、境内に響く鈴の音。
10月8日から10日まで連日続く祭事は、見ごたえのあるもの。
また、15日は、例大祭で、神事のほか、式包丁の奉納、さらに抹茶の接待も行われます。
「毎日、通わなくちゃ~」と、3年ぶりの本来の姿に近い「粟田祭」です。
*「粟田神社」の詳しい情報はホームページで
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