民放しか見ない人は知らないだろうが、NHKテレビはリオ五輪・パラリンピックをよく放送している。障害のある人が懸命に頑張っている姿はとても感動的だが、私は同時に痛ましくさえ感じてしまう。それは障害への偏見だと思うけれど、障害を見世物にしているようで寂しくなってしまうのだ。優勝者が「うれしい」と言っているのだから、素直に「おめでとう」と言うべきなのに。
「お孫さんは可愛い?」と聞かれて、「ひょっとしたら、子どもよりも可愛いかも知れない」と言ってしまってから、それを娘たちが聞いたらどう思うだろうと考えてしまった。娘たちは自分の子を、父親が「可愛い」と言うのを嬉しく思うかも知れないが、「私たちよりとまで言わなくてもいいのに」と配慮の無さをなじる気持ちもあるだろう。娘たちを可愛いがったが、どういう子になって欲しいという気持ちが立ち過ぎた。孫の子育ての権限はジジババにはないので、安心しているのかも知れない。
今日の中日新聞に、私が最近になって気になる思想家の内田樹さんが出ていた。1950年生まれだから姜尚中さんと同じ歳だ。内田さんは東京生まれの東大文学部フランス学科卒だが、ここに至るまでは紆余曲折がある。詳しいことは分からないが、日比谷高校に入学したが卒業はしていない。70年安保闘争で東京の大学や高校は荒れていた頃だから、そんな渦の中にいたのかも知れない。内田さんが出ていたのは『家族のこと話そう』の生活欄だった。
のっけから「27年前に離婚して、当時6歳だったひとり娘を引き取って12年間、男手ひとつで育てました」とある。「娘は母親を選ぶだろうと思っていたが、父親を選んでくれたのには驚いた」とあり、後に理由を聞くと娘さんは「お父さんなら頼めばいつでもお母さんに合わせてくれると思ったから」と言う。内田さんは娘さんと「小さい時から一緒に暮らすのは18歳までと約束していた」ので、娘さんは高校を卒業すると家を出た。その最後の1年は「お互いにずいぶん気を遣うようになり、大人同士の関係になった」と話す。
「学校の成績なんか気にしたこともありません。生きてくれていればそれでいい」と言う。内田さんは2009年に再婚しているので、時々里帰りしてくる娘さんは新しいお母さんともよい関係なのだろう。いろんな人がいていろんな人生がある。絶対も完璧もない。「生きてくれていればそれでいい」。