驚いた。そして恐ろしくなった。文科省の前次官、前川喜平さんが名古屋市の公立中学校で講演した記事を前に読んだが、そのことで文科省から名古屋市の教育委員会に、話した内容など15項目の回答と録音データの提出を求めてきたという。個々の学校の取り組みに対して、文科省が講師に問題があるとか、何を話したかなどと調査することは絶対にあってはならないことだ。
文科省は全国の教育に責任があるのだから、問い合わせて当然と思うのは大きな間違いだ。文科省は教育基本法に従って、全体の指針は立てるが中身については口出ししないことになっている。それは戦争に突入した戦前の教育への反省からだ。教育を国が管理すれば、軍国主義教育のような国家統一のための教育になってしまう。
しかし今、文科省の行為に反発が少ないのは、平然と憲法改正が唱えられる風潮と類似して、国が現場の教育に口を出しても当然と思われているからだ。文科省官僚は、「天下り問題で引責辞任した人を講師に呼ぶ必要があったのか、事実確認するため」と説明するが、問い合わせる行為がいかなる意味を持つのかを考えていない。
財務省の官僚答弁も、自分たちはしっかり働いているという自負が強く働いている。働いている人は誰もが皆、しっかりと働いている訳で、だから何なの?と言いたくなる。ちょっと飛躍するが、昨日の至学館大学の谷岡学長の記者会見にはガッカリした。谷岡さんは身近で話を聞いたこともあり、国会議員時代のブログはとても面白く読ませてもらっていたので、どうしてあんな記者会見になってしまうのかと思った。
親から譲り受けた至学館大学を守りたい、その一心しかない気がした。誰もが自分の立場を守りたいと思う。けれど、そのために相手を非難するばかりでは決して守ることもできない。自分の側に非はないのか、見渡せる包容力が必要だ。谷岡さんはそんな資質を持った人だと私は思うので、残念でならない。