風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

アメリカ的な(2)シカゴにて

2010-04-26 23:16:32 | 永遠の旅人
 今から8年半前、911同時多発テロの三日後、空港が再開された時には、機内の食事に使われるナイフがプラスチック製に変わっていて驚かされましたが(フォークも立派な武器になるような気がしたのですが、こちらはステンレス製のままという、なんともマニュアル的な対応に呆れたものでした)、それだけではなく、機内持ち込み荷物が厳しくチェックされ、ハサミやカッター等の文房具でも没収されるようになりましたし、その後、テロ未遂をきっかけに100ミリリットル以上の液体の機内持ち込みが禁止されたのはご承知の通りです。
 今回、ダラス・フォートワース空港の入国審査では、両手10本の指紋と両目の虹彩を採られました(成田でも、外国人の二本の指紋を採っていました)。ダラスからシカゴに移動する国内線では、ダラスを出る際、パソコンを鞄から取り出して別に検査すのはもとより、上着・靴・ベルト・時計などの金目のものを外さされました。靴を脱がされても、特に絨毯の類が敷いてあるわけではないのがいかにもアメリカ的です。
 日本にいる限りは余り感じることはないかも知れませんが、アメリカにいると、911以来、物流や人の流れでセキュリティが厳しくなっているのを感じます。人の流れは上に述べた通りですが、物の流れについても、一つには安全保障貿易管理という言葉があります。東西冷戦時代に、西側諸国の先端技術が東側諸国に流出して核兵器・通常兵器などの開発に利用されることを防ぐ目的で、厳格に輸出を管理する枠組みで、東西冷戦の崩壊とともに形骸化するものと思われていましたが、テロとの戦争の中で、テロリストに大量破壊兵器を渡さないという目的で、あらためて厳格な輸出管理が行われています。先週半ば、アメリカ政府はこの枠組みを緩和する方向で検討を開始すると発表しましたが、経済効率とのバランスで、先端技術は益々厳しく管理する、そうでないものは輸出振興のため緩和するというのが意図のようです。また、貨物便で輸送される貨物については、梱包から出荷まで、すなわちサプライ・チェーンの上流から下流まで、全てにわたって危険物の混入や差し替えを許さないほどのセキュリティを保証すれば、輸出入の通関が早くなるという、逆に言うと、自らセキュリティを保全できなければ、その検査作業のために通関において著しい遅延も止む無しという、官民合同で創設した制度があります。この8月からは、旅客便で運ぶ貨物についても100%検査(スクリーニング)が義務付けられるそうで、アメリカの提案により既に98ヶ国が合意しているといいます。
 もとよりテロとの戦争はアメリカが蒔いた種ではないかという意地悪な見方もあり得ますが、アメリカ人はそのようなことをおくびにも出しません。むしろ、テロとの戦いも、かつてテキサス併合のときに叫ばれ、その後の西部侵略や更には帝国主義的な領土拡張を正当化した“Manifest Destiny”だと、信じて疑うことを知らないのかも知れません。
コメント
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