風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

69回目の夏・点描2

2014-08-21 00:04:25 | 日々の生活
 15日の戦没者追悼式典で、安倍首相が「歴代首相が言及してきたアジア諸国の戦争犠牲者への加害責任や『不戦の誓い』には、昨年に続き触れなかった」(毎日新聞)ことが、まるで枕詞のように各紙やテレビのニュース番組で報じられていました。慰安婦報道で叩かれている朝日新聞(「昨年に続きアジア諸国への加害責任には言及がなかった」)はもとより、日経新聞(「歴代首相が表明してきたアジア諸国への加害責任の反省について昨年に続いて明言せず、『不戦の誓い』との文言も使わなかった」)、保守系の読売新聞(「多くの首相が言及してきたアジア諸国への加害責任については、昨年に続き、今年も触れなかった」)や産経新聞(「近年の歴代首相が使用してきたアジア諸国の人々に損害と苦痛を与えたとする『反省』を昨年に続いて踏襲しなかった」)まで、揃い踏みです。産経Webが「加害責任」という言葉を使わないで表現を工夫しているのがある意思を感じさせて目を引きますが、それ以外の各紙は、表現は同じながら、明らかに非難していると見えるところから、年中行事から外れた事実を淡々と、さらにはやや好意的に伝えていると見えるところまで、その間にあってそれぞれの思いを行間に秘めていることを想像すると、なかなか興味深く思います。こうして好意にせよ悪意にせよ揃いもそろって報道されると、一体、日本はいつまで贖罪を意識し続けなければならないのか、あらためて不思議な状況に思いを致します。
 ドイツ人は、明白な「人道に対する罪」を犯したが故に、ナチスという一部の特殊集団の責に帰することが出来て、心置きなく謝罪してしまえます。それに対し、日本は、南京事件に対してすら諸説ある規模の大小に関わらず「人道に対する罪」は適用されないほどであり、単なる「平和に対する罪」を、ニュールンベルグ裁判に倣って東京裁判において軍国主義者という一部の集団の責に帰したのが実態です。戦後のGHQによる日本占領管理政策の一環として行われたWar Guilt Information Programでも、実際には日本と米国ひいては連合国との間で戦われた大戦を、現実には存在しなかった「軍国主義者」と「国民」との間の戦いにすり替える底意が秘められていたと、江藤淳氏は分析しました。日本人も、それに乗っかってしまえば気が楽なものを、まがりなりにも国会は戦時中も機能しており、軍人さんに対する敬意もあって、心情としてなかなか一筋縄には行かない、そして戦後のある時期には一億総懺悔ということも言われて(天皇陛下の戦争責任を回避する意図があったにせよ)、日本人として、内心、忸怩たる思いがあるのは事実です。
 しかし、そもそもの受け止める側の諸外国はどうなのか。20年前、村山元首相の謝罪外交に対し、マレーシアのマハティール首相(当時)はこう述べたと伝えられます。「50年前に起きたことを日本が謝り続けることは理解できない。過去は教訓とすべきだが、現在からさらに将来に向かって歩むべきだ。(略)アジアの平和と安全のために、すべての役割を担ってほしい」 ルック・イースト政策で日本の高度成長を見習った親日家のマハティールさんならでは・・・というわけでもなく、シンガポールやフィリピンやインドネシアやベトナムにしても、また太平洋の島々にしても、日本を非難する声を寡聞にして耳にしたことがありません。ことほど左様に、大東亜戦争のときに日本が戦場とした地域広しと言えども、今なお戦争を心理的に終わらせることが出来ないでいるのは、中国と韓国(及び北朝鮮)だけです。中国に至っては、戦争に勝ったわけでもないのに国連安保理常任理事国の席にちゃっかりおさまり、自分のことはさておいて「戦後秩序に挑戦する日本」などとあらぬ嫌疑をかけて、世界中で反日宣伝を繰り広げているのは周知の通りです。台湾と韓国に対する日本のかつての植民地政策がそれほど異なるわけではないのに、片や功に目を向け感謝し、片や罪に目を向け非難すると、以前、このブログで触れたことがありました。誠に不幸で不自然な状況と言わざるを得ません。
 幸い、第二次世界大戦終結以来、地域的な紛争以外に世界規模の戦争がなく、また日本自身も戦争に関与して来なかったために、残念ながら、日本は、対欧米、対中韓の文脈では、見通せる将来にわたって敗戦国の地位から脱却出来ない運命にあります。国連憲章の敵国条項も削除されるに至っていません。国際関係のある専門家は、日本が敗戦国の地位を克服するためには、アメリカともう一度戦争をして勝利するか、アメリカと共に戦争するしかない、などと冗談交じりに話したことがありました。一体、いつになったら日本は名誉を回復することが出来るのか。
 せめて、国連改革の一つのテーマである敵国条項を削除し、また、中国と韓国が共闘する歴史認識問題で、欧米との共同研究などにより欧米を味方につけて分断し、中国と韓国を逆に孤立させることが出来ないものかと思います。
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