風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

帰国子女の悩み・3

2015-05-19 01:06:40 | 日々の生活
 時事放談続きで疲れてしまいましたので、気分を変えて、久しぶりに子供の教育を巡るボヤキです。パート3としたのは、マレーシア&オーストラリアから帰国した当初の2009年9月に学校探しを巡って一度、その半年後の2010年2月に帰国子女入試で気を揉んだ二度目のボヤキに続くもの、という意味です。あれから5年経って、なお、いろいろ思うところがあります。
 帰国子女にもいろいろあって・・・とは以前にも触れました。海外にいても日本人学校に通わせて(つまり外国語教育を受けなくて)も、帰国後、帰国子女として受け入れられる現実があります。そのため、一口に帰国子女と言っても問題は様々で、子供のどの年代をどのような形で海外で過ごすかによって問題の性質は変わってきます。とりわけ帰国後の中・高・大学受験が切実であることは分かり切っていますので、はじめから日本人学校に通わせて、折角の海外経験を諦める・・・なんてご家庭は多いですし、逆に現地校でしっかり現地の勉強をさせて、そのまま海外の教育制度に乗っかるとか、現地校でも日本の勉強を怠らない二刀流を通して、帰国子女入試“制度”を利用して、すんなり日本の社会に復帰する・・・といった理想的なご家庭も多いことでしょう。
 しかし帰国子女は、決して得なばかりでも、また綺麗ごとばかりでもありません。英語の発音がいくら良くても、Brush-upしないと、子供っぽい語彙のままではビジネスで使えない・・・なんてことにもなりかねません。とりわけ最近は帰国子女が増えているにも関わらず、相変わらず受入れ体制が不十分で、帰国子女なりに苦労することが多いものです。
 一般に、子供が例えば園児や小学校低学年で十分に小さければ、現地に適応するのは早いですし、その分、忘れるのも早く、帰国してもすぐに日本の生活に慣れて、問題になりようがなく、良い思い出だったね、と哀しく笑って済ませることになりがちです。上の子がアメリカで生まれて5年間過ごしたときがそうでした。他方、年齢がずっと上がって中学生前後にまでなると、現地に適応するのは容易なことではなく(マレーシアで身近にいたご家族がそうだったのですが)、限られた選択肢の中でやって行かなければならない難しさがあり、さらに年齢が上がると、もはや子供(と母親)は日本に残す(つまりお父ちゃんは単身赴任)というように、予め帰国子女問題の芽が出ないよう摘んでおくケースが多くなります。こうして、これらの中間的な領域で、中途半端になりがちなところが悩ましいことと言えます。
 我が家の場合、上の子は小5~中3夏まで、下の子は小学生の間ずっと、といった微妙なお年頃を、インターナショナル・スクールや現地校で外国語教育を受けて育ちました。こうした柔軟で現地への適応が早いものの、その後の人生に影響を与える大事な時期を海外で過ごす場合は、今、思うともっと慎重に考え対処すべきだったと思います。しかし当時の私は迷うことなくインターや現地校の外国語教育を選び、しかも子供たちが現地にうまく適応してくれたために、日本語の勉強は殆どさせず、自由放任し、却って現地に過剰適応してしまいました。その場合、現地への適応の裏返しで、日本の社会への不適応、いわば感覚のズレを抱えることになります。「お箸を一膳頂けますか」などと、現代の日本人が忘れてしまったような正しい日本語を使いこなす、一種の反動のような帰国子女もいますが、一般には、多かれ少なかれ現地への適応の度合いに応じて、帰国後の日本の社会に馴染めなくて、それがちょっとした文化的なズレ程度であればご愛嬌ですが、根本的に異質な感覚を育ててしまって、問題を深刻にする場合も少なくありません。勿論、子供の性格にもよるのですが、例えば現地で自由裁量を与えられた教師の創意工夫ある授業を当たり前と思ってしまうと、日本の詰め込み式の授業には全く馴染めず、コツコツ積み重ねていくことが苦手で、諦めが早い・・・(必ずしも海外暮らしのせいではないかも知れませんが・・・笑)。そんなわけで、高校は帰国子女枠ですんなり入れたとしても、その後三年以上も日本で暮らせば、もはや大学入試で帰国子女と認定されるケースは少なく、辛うじて認められる限られた枠(例えば上智大学など)に殺到する“狭き門”になるため、日本の勉強をよほど頑張らない限り、困難は避けられません。
 実のところ、上の子のように、小学校高学年から中学二年半くらいまで抜けていると、とりわけ国語や社会だけでなく理科などの教科でも、いかにもあやふやな土台の上に堅牢な建物を積み重ねるのは容易なことではありませんでした。何しろ本人に自覚がないものですから、周囲(私)が気遣うほかありません。我が身を振り返っても、日本の教育制度でうまくやって行くためには、少なくとも中1から高3までの6年間のしっかりした積み重ねは必須です。その点、下の子は、中学1年から日本の学校に戻したので、小学校6年間が丸々抜けて苦労していますが、何とかついて行けているように思います。5歳の差で、問題の質は変わって来ます。
 いずれにしても、子供たちにはとんだ苦労をさせてしまいました。現地に行って、すぐに慣れたとは言え、慣れるまでは大変そうでしたし、帰国したらしたで、なかなか慣れずに戸惑っていて大変そうでした。もっとも、人生は悪い事ばかりではなく、かと言って良い事ばかりでもなく、プラス・マイナス相殺されて、結局、気の持ちよう・・・ということなのでしょう。受験という制度的なところでは、どちらかと言うと性格的に馴染めず、うまく行かなかったとしても、表面的なことに囚われるのではなく、大事なことは素の人間性そのものであり、その点では私自らの選択を信じていますし、また子供たちのPotentialも信じている親馬鹿者で、その後の人生が幸多いことを祈るばかり・・・の私です。
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