風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

タクシー業界の試練

2016-06-08 01:00:53 | ビジネスパーソンとして
 先日、業界団体の懇親会だの中学時代の同級生の集まりだのハシゴになって、同じ港区内で会場を移動するのに、地下鉄の乗換えで迂回するよりタクシーの方が早いだろうと、タクシーを拾ったらいきなり渋滞にはまって、そう言えば金曜日の夜だったと後悔しても時すでに遅く、2000円を越える痛い出費となってしまった。時間がかかったもう一つの理由は、タクシーの運ちゃんがナビ頼みの正攻法だったせいもある。ついシドニーを思い出してしまった。
 シドニーで生活したのはリーマンショックの頃のことだが、既に当時からナビゲーション・システムのないタクシーを探すのが難しいくらいナビ全盛の感があった。移民国家オーストラリアで、特段のビジネス・スキルもない移民にとって、車さえ運転できれば、都会でもナビの指示通りに走るのはワケないことだ。言わば参入障壁の低い(その分、給料も低い)仕事なのだ(多分)。日本では、かつてタクシーの運ちゃんと言えば何曜日の何時台はどの抜け道が早いなんていう職人芸が売りだったが、高齢化でそういったノウハウある方々が減っているのかも知れない。勿論、昔から転職したての運ちゃんが道に迷うなんてこともあるにはあったが、もはや日本でもナビ頼みは当たり前になって行くのかも知れない。
 前置きはこのくらいにして・・・そのタクシー業界が、試練に直面している。民泊と並んで白タクはシェアリング・エコノミーの代表格だからだ。アメリカ発のUberは、スマホ・アプリの位置情報から一般人が運転する近くの自家用車を利用できる仕組みで、一足先に導入が進んでいる欧米では商売が脅かされるタクシー業界との間で裁判沙汰になっていると聞く。日本では特区であってもタクシー業界の反発でガチガチに縛りをかけられているが、何と言ってもシェアリング・エコノミーは政府の経済成長戦略の一つとして位置づけられており、今後が注目される。それにしてもネットの破壊力は凄まじい。
 もう一つは、そもそも構造的にタクシー需要が頭打ちで、2007年頃からは漸減している問題だ。初乗り料金の値下げが検討されているのは、訪日外国人観光客が増える中で、海外の主要都市と比べて日本の初乗り料金の設定が明らかに割高に見えるからだったり、今後、高齢化社会に向かう中で、買い物や通院など近距離移動の需要が増えることも期待されたりするからで、なんとか閉塞的な現状を打開したいのだろう。そのため、現在、都心では2キロまで730円、以後280メートル当たり90円加算となっているところ、280メートル当たり90円加算は変えないで、初乗りの距離を例えば880メートルまで刻んで370円に設定して、少しでもニューヨーク(320メートルまで2.5ドル)やロンドン(260メートルまで2.4ポンド)に近づけて、新たな需要の掘り起こしを狙っているようだ。もしかしたら、こちらはそれなりに化けるかも知れない。が、国交省は実証実験を行って効果を検証するのだそうで、ご丁寧なことである。
コメント
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