風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

BREXITの行方・続

2016-06-26 16:15:25 | 時事放談
 英国・下院の請願サイトで、投票のやり直しを求める署名が250万人を超え、一時はサイトがダウンするほどだったらしい(なお、請願は昨年11月から出されており、23日の投票率が75%未満で、多数だった方の得票率が60%未満だった場合に、やり直しを求める内容で、今回の投票率は約72%で、多数だった離脱支持は約52%だったため、確かに請願の条件を満たす)。それほどの衝撃が、英国のみならず、世界を揺さぶった。24日の日経夕刊一面を飾った「英、EU離脱へ」の文字の大きさから、経済専門誌としての日経の驚きの大きさが知れるとともに、私自身の意外な思いも大いに増幅されて却って動揺するほどだった。
 それにしても、英国民はやってしまったなあ・・・という印象だ。中国・国営新華社通信は、「キャメロン首相の政治的な大ばくちが失敗」とする評論を配信し、「西側が誇りとしている民主主義の制度が、ポピュリズムや民族主義、極右主義の影響にはまったくもろいことが示された」として、これみよがしに国民投票の結果を否定的に伝えたが、もとより制度の問題ではない。後知恵ではあるが、結果として微妙な差だったとは言え、私たちが思う以上に英国民は栄光の大英帝国の残滓としての独立意識が強く、他人とは距離を置きたがる、良くも悪くも英国民だったのだろうと思う。離脱を主導したある幹部は、「英国人は外部から指示されればされるほど、拒否する気性がある。論理的に正しくても、感情的に反発する」と説明したらしいが、ギリシャ危機での財政政策にせよ、イラクやシリア混乱に伴う移民政策にせよ、EU官僚が決める規則に縛られるという国民の不満は予想を超えるものなのだろう。こういうときこそ、経験主義の浅はかさを思う。ビスマルクが言ったように「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」のだ。後で振り返れば歴史的な出来事だったと言われるのか。まあ、如何ようにも言い訳できることであるが。
 起こってしまったことをつべこべ言っても仕方ない。今後のEUの動きは注目されるところだ。世界経済への影響を抑えるためにはEUの強さを示しつつ穏便に英国のEU離脱を進めた方が良いと思う一方、英国が離脱して自立してやって行けるようではEU離脱のドミノ現象を誘発しかねない、所謂ジレンマに陥る。フランスやオランダなどの極右政党は注視するところだろう。英国が抜けるEUの混乱が利するのはロシアや中国か。あるいはEUの影響力が落ちるのと裏腹に、中国のEUへの影響力も落ちるのか。中国は英国との接近が水を差されるのではないかと憂慮するかも知れない。間違いなく英国なきEUと米国との関係はやや冷めて離れたものになるだろう。サミットで安倍首相が先進国の結束を世界に示そうとして、なかなか思うようには行かなかったが、日本にとって遠い国の出来事が、まさに先進国の結束を揺るがす事態となり、世界情勢は流動化する懸念がある。これは危機なのかどうか。危機だとして私たちはこの危機をマネージ出来るのかどうか。
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