清水寺の森清範貫主によって揮毫された今年の漢字一字は「北」だったらしい。「北」海道日本ハムの大谷翔平が大リーグに移籍することが決まり、入れ替わるように清宮幸太郎が入団することが決まるなど話題になったが、なんと言っても「北」朝鮮に振り回された一年だった。4月には米朝の軍事衝突が懸念され、9月には6度目の核実験があった。最近は北朝鮮籍とみられる木造船の漂着が相次いでいる。
それに対して日本人の意識は変わっただろうか。北朝鮮が対峙するのは、飽くまでアメリカであって日本ではなく、万一の場合、在日米軍基地が狙われることがあっても日本の都市は無傷だと信じ(それほど北朝鮮のミサイルの性能が良いとは思わないが)、そのくせ日本の安全保障は米軍を主力とする日米安全保障条約によって守られていることに安住している。その代わりに、独善的ではあるが、専守防衛の基本方針の旗は降ろさず、集団的自衛権を認めても自衛のためという制約に拘り、今なお非核三原則を堅持し、武器輸出三原則等に代わる防衛装備移転三原則でも健気なまでに厳格に武器輸出を抑制している。朝鮮半島は歴史的に鬼門であって、日清戦争、日露戦争と、朝鮮半島を巡る安全保障問題に首を突っ込むとロクなことはないと観念している。こうした日本人のナイーブさは言うまでもなく歴史的なものだ。
その昔、比較法の講義で、交渉のスタンスとして、日本人は0対0からスタートして、50対50で折り合うのに対し、アメリカ人は100対100からスタートして(すなわち自己主張100%)、50対50で折り合うものだと聞いた。単純化し過ぎた形容だが、今から30年前のことだから、よしとしよう。日本人は逃れるところのない島国で、何世代にもわたって同じところに暮らし、毎年、台風がやってくるだけでなく、たまに大地震や火山噴火にも見舞われて、助け合って生きて行かざるを得なかったのだろうと、大雑把に想像してみる。峻厳な山や急流の川に阻まれて、強大な権力が生まれる素地は乏しかったから、穏やかに暮らして行けたのだろう。その証拠に、例外的な事象を除いて異民族から襲撃される経験がなかったからではあるが、西欧や中国では当たり前の城壁なるものが日本にはない。余談になるが、城壁内では凄惨な殺戮が行わるという経験がない日本人が南京市街で30万人も虐殺したというデマを誰が流したか、少なくとも日本人の発想にはないものだ。中国大陸とそれに続く朝鮮半島の厳しさは、歴史を振り返れば明らかである。
そのため日本人は三戦に弱い。輿論戦、心理戦、法律戦のことだが、これに関しては稿を改める。
従って、産経新聞電子版が中・韓との歴史認識問題を「歴史戦」とシリーズ呼びして報じているのは故なしとしない。歴史認識問題は、日本の左派勢力(=護憲、観念的な絶対平和主義など)に訴え、保守派の主張(=改憲、現実的な安全保障論など)を抑えて、日本の弱体化を図る、輿論戦であり心理戦の一環なのだろう。そして中国は、夷を以て夷を制す、すなわち、事大主義によって米・中の間で揺れる韓国に対して、共闘を呼びかけ、自らはその時々の情勢に応じて引っ込みつつ、韓国には常にオモテに立たせて日本への輿論戦・心理戦を戦わせているように見える。
まあ、中国の暗躍はともかくとして、韓国が俄かに蒸し返している従軍慰安婦問題を巡る日韓合意については、親北で左派の文在寅大統領が、保守の朴槿恵・前政権の業績を全否定するところから始まった当然の帰結だが、そもそも左派政権に限らず世論(=マスコミと市民団体)迎合という韓国政府の脆弱さに根差しており(それでも2年前に合意できたのは、オバマ政権のお陰だが、今はトランプ大統領によって全否定されているから、文在寅大統領はさほど気にしなくてよい)、もっと言えば、ここでいう市民団体は挺対協と通称される挺身隊対策協議会であって、韓国の国家情報院が「北朝鮮工作機関と連携し、北朝鮮の利益を代弁する親北団体」として監視している団体であり(Wikipedia)、北朝鮮もまた暗躍していそうな匂いをぷんぷん感じさせるのである(苦笑)。
北朝鮮にとって日本そのものと言うより、六カ国協議の一角には圧力をかけておいた方がよいだろうし、包囲網としての日米韓の連携は潰しておきたいはずだし、日米同盟を支える存在としての日本のことは煙たく思っているはずだ。北朝鮮はカネがないから、カネをかけずに効果が得られることなら何でもする。いっぱしの通常戦力を備えるには莫大なカネがかかるので、旧式のまま置いておき、今は、核弾頭搭載長距離弾道ミサイルや、金正男氏を殺害したとされる化学兵器など、「貧者の兵器」と言われ、余程安上がりで効果的な兵器の開発に邁進する(国際社会を敵に回すことを厭わなければ、それもいい)。また、拉致問題が起こっているのは日本だけではなく、韓国や東南アジアでも同様で、その目的は▽工作員教育の教官獲得▽外国人工作員の獲得▽拉致被害者らの配偶者獲得▽特殊技能者の獲得▽身分を盗む「背乗り」・・・など様々だと言われるが(拉致被害者を救う会による)、いずれにしても工作員を送り込んで工作することに主眼がある。日本では、普段は産業スパイとして技術を盗み(この点は公安もこれまで情報開示し警告してきた)、有事の際には破壊工作に従事するであろうことが懸念される(この点は公安も社会不安を招かないよう情報発信を控えているのだろうか)。
こうして、今なお冷戦時代がそのまま冷凍保存された朝鮮半島を、(公式統計上)世界第一・第二・第三の経済大国が世界有数の軍事力を以て取り巻き、表面的な対立(これはトランプ大統領と金正恩委員長の出来レースと揶揄されるが)とともに、裏でも様々な思惑が蠢いている。日韓関係は二国間の関係ではなく、韓国を巡る米中関係の従属変数に過ぎないのではないかと思わせ、そこに何かと南(韓国)との連帯が取り沙汰される北朝鮮が暗躍する。この多元方程式を解くのは簡単ではない。
気の毒なのは、慰安婦問題を巡る日韓合意に従い、韓国政府が設立した「和解・癒やし財団」の民間の理事5人が辞表を提出したと報じられていることだ。いずれも無力感を示していたと伝えられるが、さぞや無念であったろう。
それに対して日本人の意識は変わっただろうか。北朝鮮が対峙するのは、飽くまでアメリカであって日本ではなく、万一の場合、在日米軍基地が狙われることがあっても日本の都市は無傷だと信じ(それほど北朝鮮のミサイルの性能が良いとは思わないが)、そのくせ日本の安全保障は米軍を主力とする日米安全保障条約によって守られていることに安住している。その代わりに、独善的ではあるが、専守防衛の基本方針の旗は降ろさず、集団的自衛権を認めても自衛のためという制約に拘り、今なお非核三原則を堅持し、武器輸出三原則等に代わる防衛装備移転三原則でも健気なまでに厳格に武器輸出を抑制している。朝鮮半島は歴史的に鬼門であって、日清戦争、日露戦争と、朝鮮半島を巡る安全保障問題に首を突っ込むとロクなことはないと観念している。こうした日本人のナイーブさは言うまでもなく歴史的なものだ。
その昔、比較法の講義で、交渉のスタンスとして、日本人は0対0からスタートして、50対50で折り合うのに対し、アメリカ人は100対100からスタートして(すなわち自己主張100%)、50対50で折り合うものだと聞いた。単純化し過ぎた形容だが、今から30年前のことだから、よしとしよう。日本人は逃れるところのない島国で、何世代にもわたって同じところに暮らし、毎年、台風がやってくるだけでなく、たまに大地震や火山噴火にも見舞われて、助け合って生きて行かざるを得なかったのだろうと、大雑把に想像してみる。峻厳な山や急流の川に阻まれて、強大な権力が生まれる素地は乏しかったから、穏やかに暮らして行けたのだろう。その証拠に、例外的な事象を除いて異民族から襲撃される経験がなかったからではあるが、西欧や中国では当たり前の城壁なるものが日本にはない。余談になるが、城壁内では凄惨な殺戮が行わるという経験がない日本人が南京市街で30万人も虐殺したというデマを誰が流したか、少なくとも日本人の発想にはないものだ。中国大陸とそれに続く朝鮮半島の厳しさは、歴史を振り返れば明らかである。
そのため日本人は三戦に弱い。輿論戦、心理戦、法律戦のことだが、これに関しては稿を改める。
従って、産経新聞電子版が中・韓との歴史認識問題を「歴史戦」とシリーズ呼びして報じているのは故なしとしない。歴史認識問題は、日本の左派勢力(=護憲、観念的な絶対平和主義など)に訴え、保守派の主張(=改憲、現実的な安全保障論など)を抑えて、日本の弱体化を図る、輿論戦であり心理戦の一環なのだろう。そして中国は、夷を以て夷を制す、すなわち、事大主義によって米・中の間で揺れる韓国に対して、共闘を呼びかけ、自らはその時々の情勢に応じて引っ込みつつ、韓国には常にオモテに立たせて日本への輿論戦・心理戦を戦わせているように見える。
まあ、中国の暗躍はともかくとして、韓国が俄かに蒸し返している従軍慰安婦問題を巡る日韓合意については、親北で左派の文在寅大統領が、保守の朴槿恵・前政権の業績を全否定するところから始まった当然の帰結だが、そもそも左派政権に限らず世論(=マスコミと市民団体)迎合という韓国政府の脆弱さに根差しており(それでも2年前に合意できたのは、オバマ政権のお陰だが、今はトランプ大統領によって全否定されているから、文在寅大統領はさほど気にしなくてよい)、もっと言えば、ここでいう市民団体は挺対協と通称される挺身隊対策協議会であって、韓国の国家情報院が「北朝鮮工作機関と連携し、北朝鮮の利益を代弁する親北団体」として監視している団体であり(Wikipedia)、北朝鮮もまた暗躍していそうな匂いをぷんぷん感じさせるのである(苦笑)。
北朝鮮にとって日本そのものと言うより、六カ国協議の一角には圧力をかけておいた方がよいだろうし、包囲網としての日米韓の連携は潰しておきたいはずだし、日米同盟を支える存在としての日本のことは煙たく思っているはずだ。北朝鮮はカネがないから、カネをかけずに効果が得られることなら何でもする。いっぱしの通常戦力を備えるには莫大なカネがかかるので、旧式のまま置いておき、今は、核弾頭搭載長距離弾道ミサイルや、金正男氏を殺害したとされる化学兵器など、「貧者の兵器」と言われ、余程安上がりで効果的な兵器の開発に邁進する(国際社会を敵に回すことを厭わなければ、それもいい)。また、拉致問題が起こっているのは日本だけではなく、韓国や東南アジアでも同様で、その目的は▽工作員教育の教官獲得▽外国人工作員の獲得▽拉致被害者らの配偶者獲得▽特殊技能者の獲得▽身分を盗む「背乗り」・・・など様々だと言われるが(拉致被害者を救う会による)、いずれにしても工作員を送り込んで工作することに主眼がある。日本では、普段は産業スパイとして技術を盗み(この点は公安もこれまで情報開示し警告してきた)、有事の際には破壊工作に従事するであろうことが懸念される(この点は公安も社会不安を招かないよう情報発信を控えているのだろうか)。
こうして、今なお冷戦時代がそのまま冷凍保存された朝鮮半島を、(公式統計上)世界第一・第二・第三の経済大国が世界有数の軍事力を以て取り巻き、表面的な対立(これはトランプ大統領と金正恩委員長の出来レースと揶揄されるが)とともに、裏でも様々な思惑が蠢いている。日韓関係は二国間の関係ではなく、韓国を巡る米中関係の従属変数に過ぎないのではないかと思わせ、そこに何かと南(韓国)との連帯が取り沙汰される北朝鮮が暗躍する。この多元方程式を解くのは簡単ではない。
気の毒なのは、慰安婦問題を巡る日韓合意に従い、韓国政府が設立した「和解・癒やし財団」の民間の理事5人が辞表を提出したと報じられていることだ。いずれも無力感を示していたと伝えられるが、さぞや無念であったろう。