風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

靖国問題

2020-09-20 23:41:20 | 時事放談
 安倍晋三・前首相が昨日、靖国神社を参拝されたそうだ。モーニング姿で昇殿して参拝する写真を添えて、「16日に首相を退任したことをご英霊にご報告致しました」とツイッターに投稿されたという(時事)。もともと、第一次政権のときに参拝を見送ったことを「痛恨の極み」として、第二次政権発足からちょうど一年の節目となる2013年12月26日に参拝すると、近隣国だけではなく、なんと同盟国であるオバマ政権からも「失望」の声があがって、衝撃が走ったものだ。その理由は、近隣国のそれとは異なり、「日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動をとったことに失望」するという、些か回りくどいものだった(笑)。今のトランプ政権では考えられない、如何にもリベラルでナイーブなオバマ政権らしいコメントだ。でもまあ、この気持ちは分からなくはなかったので、その後、安倍さんは首相在任期間中の靖国参拝を自粛された。日本の保守派には不満の残る決断の一つだったが、安倍さんの信念を曲げてまでの現実感覚が揺るがなかったのは、ある意味でご立派だった。
 中国は、もともと首相と官房長官と外務大臣の三役に参拝しないよう求めていたので、今回は報道を見かけない。ところが韓国は期待に違わず、毎度の判で押したような反応を見せた。保守系メディアの中央日報によると、韓国外交部は論評を通じ「安倍前首相が日本の植民侵奪と侵略戦争を美化する象徴的施設である靖国神社を退任直後に参拝したことに対し深い懸念と遺憾を表わす」「日本の指導者級の人々が歴史を正しく直視し過去史に対する謙虚な省察と真の反省を行動で示す時、周辺国と国際社会が日本を信頼できるという点をもう一度厳重に指摘」したという。
 韓国の論評からは、いい加減、「国際社会」という単語を外してもらいたいものだ(苦笑)。文句を言うのは近隣国以外にないのだから・・・などと言っても、もはや詮無いことかも知れない。そもそも韓国の言う「日本の植民侵奪と侵略戦争を美化する象徴的施設」なる大仰な形容や、「歴史を正しく直視し過去史に対する謙虚な省察と真の反省を行動で示す」などといった説教じみた言説は、メッキが剥げてしまったと感じざるを得ないからだ。徴用工問題では、戦後の日韓関係の枠組みを反故にする修正主義のような主張をしながら、相変わらずA級戦犯を祀る靖国神社に拘り続けるのは、ご都合主義以外の何物でもない。従軍慰安婦問題では、2015年に一応の妥結に至った(はずだった)のに続き、数日前に正義連(元・挺対協)の元・理事長で与党議員の尹美香さんが業務上横領などの容疑で起訴されて、結局、活動団体が元・慰安婦の方々を政治利用しただけだったのではないか・・・という実態が明らかになりつつある。韓国政府やメディアは、今なお韓国の「正義」を信じて疑わないのだろうが、日本国民はすっかり白けてしまった(と、日本国民の一人の私は思う)。
 これは、70年談話こそ当初の目論見から後退したのだろうが、日本(の自信)を取り戻すという、安倍政権7年8ヶ月の努力の賜物と言えなくもない。
 いや、もっと言うと、一時期、日本の南京大虐殺などの侵略行為を、ドイツ・ナチスのユダヤ人虐殺と同列に非難する論調が、中・韓や日本の左翼に見られたものだが、事実として日本人が裁かれたのは、A級(平和に対する罪)、B級(通例の戦争犯罪)、C級(人道に対する罪)の内、殆どがB級であって、そんな日本をナチスのホロコーストという絶対悪(C級)と同一視することは、却ってホロコーストを相対化しかねないとして、最近のイスラエルや欧米諸国の歴史認識では警戒され受け入れられなくなっている。おまけに最近の中国の新疆ウィグルでの所業こそナチス並みとして非難されるご時世である。時代も変わっているのである。
 なお、毎度、総裁選に名を連ねる割りに影の薄い岸田文雄さんは、靖国問題に関して良いことを言われた。(安倍さんの昨日の靖国神社参拝について)「国のために尊い命を捧げられた方々に尊崇の念を示すのは、政治家にとって誠に大事なことだ。尊崇の念をどういった形で示すかというのは、まさに心の問題だから、それぞれが自分の立場、考え方に基づいて様々な形で示している。これは心の問題だから、少なくとも外交問題化するべき話ではないと思っている。政府においても外務省においても、国際社会に対して心の問題であるということ、国際問題化させるものではないということを丁寧にしっかりと説明をする努力は大事なのではないか」(朝日新聞デジタル)。とは言え、やっぱり岸田さんの発言はいかにも弱い。ここでも「国際社会」ではなく「近隣国」に置き換えるべきだし(笑)、「近隣国」こそ政治問題化しないよう、あるいは、今さら政治問題化しても無駄であると釘を刺すべきだ。岸田さんの正論よりも時代は既に先を行っているのではなかろうか。
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