シリアのアサド政権が化学兵器を使用したことへの報復として、米・英・仏3ヶ国は関連施設3ヶ所にミサイル100発以上を撃ち込んだ。
化学兵器の使用は卑劣だ。安上がりで技術的に製造しやすく発見されにくい、それでいて被害は甚大で「貧者の兵器」と言われ、核兵器などと並ぶ大量破壊兵器として国際条約で禁止されている。化学兵器禁止機関(OPCW)は2016年1月にシリアの化学兵器廃棄の完了を宣言したが、その査察前にアサド政権は一部を隠したという元シリア軍高官の証言が報じられていた。
昨年4月に続く攻撃は、有言実行を旨とし、(化学兵器使用に報復することを躊躇した)オバマ前大統領との違いを強調するトランプ大統領としては避けられないものだったが、国防総省によれば、「一回限り」のものといい、シリアの化学兵器関連施設に対する「精密攻撃」であって、シリア国内に展開するロシア軍部隊など外国人兵士の被害を避けるよう配慮したと説明しており、さらにロシアには専用回線で攻撃を事前通告したとされ、ロシア軍との正面衝突はおろか偶発的衝突をも避けるために慎重を期したことが窺われる。国営シリア・アラブ通信(SANA)は、米・英・仏の攻撃を「甚だしい国際法違反」と非難するが、そもそもアサド政権による反体制派地域の住宅地に対する樽爆弾やミサイルなどによる空爆あるいは無差別砲撃こそ戦争犯罪であって、米国として介入による泥沼化は避けつつも牽制する意図はありそうだ。
今回は米国単独とはならなかったのは意外だった。「何の咎めもなく化学兵器を使えると思わせてはならない」と説明するメイ英首相の念頭には、化学兵器が使われたとされる元スパイ(ロシア情報将校)襲撃事件が、さらにはサイバー攻撃や選挙介入などで欧州への攻勢を続けるロシアへの反発があり、強硬姿勢を示すことで、BREXITで地盤沈下が懸念される英国の存在感を誇示する意図もあったことだろう。ただしシリアの体制変換を目指すものではないと断っており、この点では慎重だ。マクロン仏大統領も、化学兵器を使用した民間人虐殺を非難しつつ、シリア攻撃は化学兵器施設を対象とした限定的なものだと説明し、事前にプーチン大統領と電話会談して、国連安保理でのロシアの拒否権行使に遺憾の意を示しつつ、シリア安定化でロシアに協力する意欲を伝えるなど、人道的介入での存在感を示しつつ、周到だ。
それぞれの思惑が渦巻くが、忘れてはならないのは、北朝鮮との関連である。かねてシリアの化学兵器には北朝鮮の関与が噂されて来たという因縁もある。
昨年4月のシリア攻撃は、米中首脳会談中に行われ、北朝鮮が核・ミサイル開発を放棄しなければ実力行使をも辞さないと言わんばかりのトランプ大統領の覚悟を示し、習近平国家主席に対する脅しの効果は予想以上だった。今回もタイミングとしては偶然であろうが、米朝会談が合意された後、トランプ大統領が対話路線のティラーソン国務長官を解任してその後任にタカ派のマイク・ポンぺオCIA長官を指名し、マクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を解任してその後任に「悪魔の化身」とまで呼ばれるタカ派のジョン・ボルトン氏を指名したことに、金正恩委員長はさぞ米朝会談不調の行く末を慮ったことだろう、不和が伝えられていた習近平国家主席を今頃になってわざわざ訪問し、後ろ盾を願い出たものと噂されていた矢先のことである。シリア攻撃に込めたトランプ大統領のメッセージは、今回も確実に金正恩委員長に届いていることだろう。
化学兵器の使用は卑劣だ。安上がりで技術的に製造しやすく発見されにくい、それでいて被害は甚大で「貧者の兵器」と言われ、核兵器などと並ぶ大量破壊兵器として国際条約で禁止されている。化学兵器禁止機関(OPCW)は2016年1月にシリアの化学兵器廃棄の完了を宣言したが、その査察前にアサド政権は一部を隠したという元シリア軍高官の証言が報じられていた。
昨年4月に続く攻撃は、有言実行を旨とし、(化学兵器使用に報復することを躊躇した)オバマ前大統領との違いを強調するトランプ大統領としては避けられないものだったが、国防総省によれば、「一回限り」のものといい、シリアの化学兵器関連施設に対する「精密攻撃」であって、シリア国内に展開するロシア軍部隊など外国人兵士の被害を避けるよう配慮したと説明しており、さらにロシアには専用回線で攻撃を事前通告したとされ、ロシア軍との正面衝突はおろか偶発的衝突をも避けるために慎重を期したことが窺われる。国営シリア・アラブ通信(SANA)は、米・英・仏の攻撃を「甚だしい国際法違反」と非難するが、そもそもアサド政権による反体制派地域の住宅地に対する樽爆弾やミサイルなどによる空爆あるいは無差別砲撃こそ戦争犯罪であって、米国として介入による泥沼化は避けつつも牽制する意図はありそうだ。
今回は米国単独とはならなかったのは意外だった。「何の咎めもなく化学兵器を使えると思わせてはならない」と説明するメイ英首相の念頭には、化学兵器が使われたとされる元スパイ(ロシア情報将校)襲撃事件が、さらにはサイバー攻撃や選挙介入などで欧州への攻勢を続けるロシアへの反発があり、強硬姿勢を示すことで、BREXITで地盤沈下が懸念される英国の存在感を誇示する意図もあったことだろう。ただしシリアの体制変換を目指すものではないと断っており、この点では慎重だ。マクロン仏大統領も、化学兵器を使用した民間人虐殺を非難しつつ、シリア攻撃は化学兵器施設を対象とした限定的なものだと説明し、事前にプーチン大統領と電話会談して、国連安保理でのロシアの拒否権行使に遺憾の意を示しつつ、シリア安定化でロシアに協力する意欲を伝えるなど、人道的介入での存在感を示しつつ、周到だ。
それぞれの思惑が渦巻くが、忘れてはならないのは、北朝鮮との関連である。かねてシリアの化学兵器には北朝鮮の関与が噂されて来たという因縁もある。
昨年4月のシリア攻撃は、米中首脳会談中に行われ、北朝鮮が核・ミサイル開発を放棄しなければ実力行使をも辞さないと言わんばかりのトランプ大統領の覚悟を示し、習近平国家主席に対する脅しの効果は予想以上だった。今回もタイミングとしては偶然であろうが、米朝会談が合意された後、トランプ大統領が対話路線のティラーソン国務長官を解任してその後任にタカ派のマイク・ポンぺオCIA長官を指名し、マクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を解任してその後任に「悪魔の化身」とまで呼ばれるタカ派のジョン・ボルトン氏を指名したことに、金正恩委員長はさぞ米朝会談不調の行く末を慮ったことだろう、不和が伝えられていた習近平国家主席を今頃になってわざわざ訪問し、後ろ盾を願い出たものと噂されていた矢先のことである。シリア攻撃に込めたトランプ大統領のメッセージは、今回も確実に金正恩委員長に届いていることだろう。
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