風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

東京タワー

2011-06-09 23:15:41 | 日々の生活
 私のオフィスから東京タワーが見えます。九州生まれの大阪育ち、広い意味での関西で生まれ育った私にとって、東京タワーと富士山は、江戸あるいは東京の象徴であり、これに新宿の摩天楼を加えれば、子供の頃からの一種の憧れでもありました。東京タワーは高度成長の象徴であり、富士山は霊性あるいは神性という日本人の原点であり、新宿ビル街は都会の生活の象徴であり、いずれも私たち日本人の原風景です。
 あのゴジラもなぎ倒すのを遠慮した東京タワーのアンテナが、今般の東日本大震災で曲がったとの報道がありましたが、オフィスから見る限りでは、よく分かりませんでした。たまたま夕方、外出して仰ぎ見て、確かに曲がってしまっていることを確認しました。だからといってどうってことはないのが上の写真です。
 1958年10月14日の竣工で、間もなく53歳、早くも肩叩きにあいました。日建設計(株)とともに共同で設計を行った建築設計の構造学専攻の内藤多仲氏は、構造美について「タワーの美しさについて別に作為はしませんでした。無駄のない安定したものを追求していった結果できたものです。いわば数字のつくった美しさとでも言えましょう」と答えているそうですが(Wikipedia)、確かにタワーのシルエットはなめらかで美しい。しかし特別展望台(地上223m)はともかく大展望台(地上120m)のカタチは、ちょっぴり肩肘張って、期せずしてぎこちなく自己主張しているような、高度成長前のニッポンの青臭さを彷彿とさせます。実際に、特別展望台から上の部分に使用されている鉄材の原料には朝鮮戦争後にスクラップされたアメリカ軍の戦車が使われているのは、当時、まだ良質の鉄材が日本にはなかったからであり、そんなエピソードも含めて、全てがあの時代のもつ雑然とした、しかし最近のアジア諸国に漲るパワーをニッポンにおいてそこはかとなくスマートに感じさせ、えも言われぬいとおしさを覚えます。
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