前福井県議会議員 さとう正雄 福井県政に喝!

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「福井空港」の「成功」

2010年03月17日 | Weblog
読売新聞・・・・開港時に国内定期便が1便も飛ばない空港が誕生した。前途は多難というしかない。 国内98番目となる茨城空港が開港した。羽田、成田に続く「首都圏第三空港」という触れこみだが、4月中旬に就航する神戸便を加えても、定期便は2路線しか決まっていない。・・・・  着工前には札幌、大阪便などが就航し、年間81万人が利用すると見込んでいたが、実際の利用者は20万人前後にとどまりそうだ。空港ビルは早くも年2000万円程度の赤字が確実だという。
 昨年開港したばかりの静岡空港も、日本航空が撤退を表明するなど、綱渡りの運営が続いている。採算がとれない空港が、なぜ次々に開港してしまうのだろうか。
 それは、着工前に立てる需要予測が甘すぎるためだ。
 国土交通省のまとめによると、2008年度の利用実績が開港、拡張前の予測を上回ったのは、熊本、那覇など8空港だけだ。国交省は、「不況で予想以上に需要が落ち込んだ」などと説明する。
 だが、予測の多くを受託する財団法人には、国交省OBが天下りしている。国内航空網の拡充を急ぎたい同省の意向を踏まえ、「建設ありき」の水ぶくれした予測を意図的にこしらえていた面も否定できまい。
 公共事業がほしい地方の政界や産業界が空港建設の声をあげ、官僚も省益のため、それを後押しする――。こんな、もたれあいの構図も透けて見える。
  だが、国や地方の財政が逼迫(ひっぱく)する中、赤字の垂れ流しは、もう許されない。地域住民の暮らしを支える離島などを除き、不採算空港は近接空港との統合や廃止を進めることが必要だろう。
 各空港が収支を公表し、大甘の需要予測を厳格に検証し直すことが不可欠だ。特別会計も抜本的に見直し、羽田のハブ化など、拠点空港に予算を集中する仕組みに改めるべきだ。(2010年3月15日00時58分 読売新聞)

・・・このようなことが報道されるのが増えて、「福井空港は止めてよかったね」と最近も声をかけられる。当時の福井県議会で中止を求めていたのは、40名の議員のなかで共産党の二人だけだった。

需要予測について、当時の県議会での論戦の一部を紹介しよう。
当時の知事は栗田知事、副知事は現知事の西川氏である。

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2000年6月福井県議会 予算特別委員会

◯佐藤委員  日本共産党の佐藤である。福井空港問題と敦賀のごみ処分場の問題についてお尋ねをする。
 まず最初に、空港問題で知事にお尋ねをする。一般質問で私はいろいろな数字を出して質問をした。実際に福井県の産業を見ても、また経営者のアンケート調査結果を見ても、空港がどうしても必要不可欠だという結論にはなかなかならないのではないかと、こういうことをお尋ねした。しかし、それでも知事は必要不可欠ということで進められようとしているが、いずれにしても需要予測調査で今回の開発効果の調査が出たわけで、議論の材料というか、それが出たところだと思う。だから今の、いろんな委員のお話を伺っていても、地元に入れば反対論もかなり根強いということだから、やはり県民理解はまだとれていないと思う。だから、県民への説明責任、これをやはり知事としてきちっと果たすという点でどうお考えか。

◯知  事  需要予測調査あるいは空港整備の全体像については、県の広報媒体、またパンフレットの配布を通じて、広く県民の方々にお知らせし、パンフレットや県のホームページである「インターふくい」で県民の意見、質問を求め、疑問についてお答えするということで進めている。このような方法で県民の意見を聞くということは重要であると考えていて、そういった中で、最重要課題である地元の同意ということについて、全力を傾注しているところである。

◯佐藤委員  だからもちろんインターネットとかの活用は大事である。だけども、知事の今の進め方はタイムスケジュールを区切ってそれでとにかく進めるというやり方である。だからこれは七次空整の関係があるからそうなるんだが、しかし私が言っているのは、時間をかけてようやく材料が出たと。実際、県会議員がそれぞれの地域に入れば反対論が根強いとおっしゃっているわけだから、時間をかけて議論をするということが必要ではないか。

◯知  事  空港の必要性について県民の理解、協力を求めていくことはもちろん大事なことであるが、第七次空港整備7箇年計画の期間内に何としても着手したいということで今、地元同意の取得に懸命に努力をしているところである。県民の理解、協力を求めると同時に、並行して地元同意ということで進めることによって、何としても来年、空港整備7箇年計画期間内に事業着手できるように頑張っていきたいと考えている。

◯佐藤委員  それで、県民に対するフォーラムを開かない。足羽川ダムのときにつくったような審議会もつくらない。こういう態度では県民理解を求めているという姿には映らないと思う。
 それで、西川副知事にお尋ねするが、3月15日、当時の土木部長の小林部長とともに需要予測調査の説明に運輸省の航空局長を訪れたことになっている。航空局長からは県の説明に対してどういうコメントが出されたか。

◯副知事  運輸省の航空局長にお会いした事情であるが、今般の2月議会で福井空港問題についていろいろ議論があったので、そうした議論の経緯、それから県として今後のいろんな考え方、予定、スケジュール等について状況を説明に行ったところである。そしてその際、運輸省からはいろんなお話があったが、私ども福井県で現在、空港整備問題に取り組んでいる状況については十分理解をしていただいているところであるが、あわせて他のいろんな空港の状況なり、さらには最近の新しい航空需要というか、割合小型のジェット機が都市間を飛行するとか、空港の視点も変わってきたので、そういうことについて、運輸省自身も十分指導していただけると思うけれども、福井県全体としても十分いろんな研究なりあるいは検討をしていただきたいという話があったところである。その他、若干いろいろあった。

◯佐藤委員  いただいた資料と同じ答弁なんだが、そうすると要するに運輸省の航空局長は、小型機により利用の実績をつくることが必要だと、こうおっしゃったと。それから他県の動きなどの情報も集めてもっと勉強してほしいと、こうおっしゃったわけである。ということは、今、福井県が進めている計画に対して、そのとおりにはいかない面もあるよということをおっしゃったんじゃないのか。

◯副知事  基本的に地元同意が大前提であるので、そうした議論を福井県の地元とのいろんな交渉の努力、そうしたことを前提にしてそういうお話をおっしゃったということで、それは単独に切り離してどうだということをおっしゃったわけでない。

◯佐藤委員  それではさらに具体的に伺うが、前回需要予測に基づく本体事業費なら、どうして前回の予測に基づいて算出した平成8年5月の運輸省の数字と食い違ってくるのかということをお尋ねしたい。というのは、要するにこの福井空港拡張整備の概算事業費を出された。本体事業費391億円、うち滑走路、ターミナル257億円ということで出された。土木常任委員会や総合交通対策特別委員会の中で圧縮するんだというお話だった。それは、圧縮できる理由というのは需要予測が前回のときよりも減っているというのが一つの理由に挙げられていた。だからそうすると、そういうことならば、なぜ前回の運輸省の数字、これは294億円というように本体事業費がなっているけれども、294億円というのは今の391億円よりもはるかに低い数字で、前回は運輸省に出されている。今回は本体事業費が391億円で、97億円プラスで議会には説明をされている。だからその辺の、前回の運輸省に出された数字と、今回議会に出された数字の整合性は一体どうなるのか。

◯土木部長  今回公表した空港本体の概算事業費については、前回の需要予測調査果に基づいた平成5年2月の空港土木施設基本設計をもとに時点修正を行い、算定したものである。また、周辺整備事業についても、平成4年3月に策定した「福井空港周辺整備構想」等をもとに試算したものであって、今後、地元同意をいただいた上で各施設の内容について具体化し、事業費を見直すこととなる。空港建設費の圧縮という見出しで新聞に出たけれども、あれは委員の方々からそういうことも考えられるなということに対して、当然コスト縮減の視点から、今後新しい技術工法の導入だとか施設の規模、内容を具体化していく中で精査して事業費を算出していくとお答えしている。

◯佐藤委員  ちょっとよくわからない点もあるんだが、要するに、今回の需要予測ではなくて、前回の需要予測調査で今回の数字を出したとおっしゃったのか。違うのか。

◯土木部長  前回の需要予測調査というのは60万くらいの乗降客の数字だったんだが、それにあわせて、例えばターミナル施設だとか空港施設をすべて考えたものを、現在の時点で見直したということである。

◯佐藤委員  もちろん現在の時点で見直したのはわかる。だから本体事業費は、以前は230億円といっておられたから、そうなると、用地買収をして64億円見込まれていたわけである。平成8年に運輸省に出された資料では64億円の用地買収費が見込まれていたと。今回、用地買収費が129億円だから用買費が倍になったということになる。それでよろしいか。

◯土木部長  今回はそのときの資料をもとに、空港本体の規模等々から時点修正して、単価その物価の上昇分等々、それから用地費を別個に算出して算定をした。

◯佐藤委員  それで、おっしゃるようにいろいろ事業費を縮減するということになってくると、議会で説明されたこの建設段階における経済効果、直接効果257億円、波及効果166億円、合計423億円で、就業者が3,274人、税収が3.3億円とこういうことが議会で説明された。大もとの257億円という産業連関表に入れ込む数字が変わるわけだから、当然就業者の数字も変わってくる。こういう理解でよろしいね。

◯土木部長  今回の効果については、空港を建設する建設費だけ257億円の波及効果を出している。実際にはそのほかにも事業費、780億円等々がかかるわけであるので、一番最少なものとして今回算定させてもらった。本来は780億円等々の投資をすれば波及効果は大きくなる。

◯佐藤委員  僕はそういうことは聞いてはいない。皆さんがこの滑走路の工事とかターミナルの工事を、最新の工法なども使ってもっと縮減できると議会で答弁された。だからこの257億円そのものを縮減されると答弁されたのでないのか。

◯土木部長  257億円についても縮小するように努力はするとは言った。

◯佐藤委員  であるならば、今回開発効果で出した産業連関表に打ち込んだもとの一番スタートの数字が下がるわけだから、就業者とか税収がこれよりも減るという認識に間違いないかということをお尋ねしている。

◯土木部長  257億円が例えば250億円になれば、直接効果、それから第一次波及効果等々の数字は変わってくる。

◯佐藤委員  議会で随分議論して、ようやく県はこういう資料も出された。出したら、即、説明の舌の根も乾かないうちに、この開発効果そのものが見直されると、こういうことになる。何のために三和総研、業者に576万円も払って調査をさせたんだということが問われるわけである。少なくとも建設段階の経済効果の計算をやり直さなければいけないと。空港規模を縮小すれば、それによる空港内の消費などの経済効果の計算もやり直さなければならないということになるわけである。今これは概要版だから、分厚いのが印刷されているそうだが、印刷が回っている途中で、その開発計画が没になっちゃうと、こんなみっともないことをやられている。だから、私は、福井空港の拡張計画、いろいろ報告書も議会に出していただいたわけだが、すぐに手直しが必要になるような、こういう計画では、やっぱりだめだというように思うわけである。そういう点でこういう計画全体の見直しを求めていきたいということを強く要求をしておきたい。

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かなり「無理おし」の質問ではあるが、「予測」の一角を崩した、と思う。それだけ県庁側、他党の議員側にたいしても「説得力」をもつ。
いま、さまざまにすすめられている開発計画や新幹線効果などについても、県民目線での検証が求められている、と痛感する。

   昨今の各地の地方空港の報道をみるにつけ、1000億円の「福井空港拡張計画中止」は、県民と県行政にとっては「成功」だったのだと思う。