福井県議会予算特別委員会での佐藤正雄県議の質疑です。2013年10月3日。
台風災害での被災者支援、ブラック企業対策、生活保護行政、原発問題
「県民の命と暮らしを守る県政になっているのか」 佐藤 正雄 委員
◯佐藤委員 一般質問から今回の台風18号災害についての質問が続いている。知事を初め、皆さんも現場を見たと思うが、私自身もいろいろ見て回ったが、やはりお宅をなくされた、あるいは繰り返し2回も3回も同じような水害に遭うというつらさ、苦しみというのは、これは何とかしなければいけないと思った。例えば小浜市の江古川の新興住宅地の方とも話したが、知事も行かれたそうだが、3回も水害に遭って、今回も家財道具、床上浸水で全部パーになってしまったと、本当にもう涙しかないとおっしゃっていた。小浜市忠野の集落では間一髪で年老いたお母さんを背負って逃げて、美浜町丹生のような最悪の事態は何とか避けられたという話も聞いた。被災された方へどういう支援をするかということが非常に大事だと思う。
同じように被災された京都府では、ちょうど同じように議会中であるが、補正予算が上程され、その中身を見ると、被災住宅の再建等に要する支援ということで、建てかえで700万円、補修で450万円、災害弔慰金の支給に関するもので、被災者に対して350万円を限度に市町村を通じて融資をするというような内容がある。
先ほどの質問に、知事は半壊で20万円、一部損壊で10万円という制度もつくって支援をしていくというようなことも答えた。しかし、家は壊れていないけれども床上浸水で家財道具が全部パーになってしまって、それだけでも何十万円、あるいは100万円近い損害を受けたお宅もあるということなので、そういう被害の実態に照らして、引き続き、きめ細かな支援策を考えていくことがどうしても必要だと思うが、見解をお尋ねする。
◯知 事 今回の被害については、京都府のように災害救助法が全体に適用されるということでもなかったわけであるが、やはり市町が地域の方の要請を考え、また過去の例を考えながら、どのような応援をするのが今回は適当かという考えを聞き、それを我々が応援するという方法を講じているところである。
また、それぞれ災害によっていろいろ状況は違うので、そのときに応じて、皆さんのお気持ちに十分沿うような方向で努力したいと考える。
◯佐藤委員 県の補正予算も上程されるとは思うが、補正予算は補正予算として十分なものをつくっていただき、さらに引き続き実態に合った支援策についても検討していただきたいと思う。
次に2つ目であるが、いわゆるブラック企業という問題についてお尋ねしたいと思う。
県の相談窓口にも相談があると思うし、私ども議員のところにもいろいろな相談が来るが、いわゆる残業代が払われないとか、あるいはパワハラ、セクハラ、言葉の暴力等々、が全国的にも大きな問題になっている。最悪の場合は自殺に追い込まれるというようなケースも福井県内でもあるわけである。
だから、いわゆるブラック企業と呼ばれているが、こういう企業が県民を苦しめている、福井県内のこういう企業実態をどのように県として把握をして、どのような対策を講じているか、また今後講じようとしているのかお尋ねする。
◯産業労働部長 いわゆるブラック企業ということで、共通の確立した定義があるわけではないが、一般には働くことができなくなるほど厳しい過酷な労働を強いるとか、あるいはパワハラで離職に追い込むとかいったことを恒常的に行うような企業を指すというふうに言われているかと思う。
県においては、ふくいジョブカフェで早期離職をされた若者の方の相談を受けており、賃金の不払いの残業であるとか、長時間の過重労働、パワハラなどの理由で離職されたといった話が入っている。ことしの4月から9月で8件、そういった相談があったと把握をしている。実は、国でも先月、全国的に情報収集、調査を行い、福井労働局管内では2件の情報提供があったと聞いている。
こうした情報を県で把握した場合には、やはり権限を有する国に連絡すると同時に、大学、高校、あるいは就職を一緒に応援している関係団体と連携して、就職相談や就職支援を行う際に活用するといったことを考えている。
国ではさらに、法令違反がある場合には、それが是正されるまでは職業紹介をしない、あるいは重大悪質な場合には送検するなどの措置を徹底するとなっているので、国との連携もしっかりとやっていきたいと考えている。
◯佐藤委員 今の話の統計は、いつごろからこういうのをとっているかわからないが、昨年度や一昨年度はどうか。
◯産業労働部長 こういった相談というのは、必ずしもブラック企業という視点で整理しているものではないので、今、手元にあるのはことしの4月以降の状況を整理したものである。過去にそういった類例がないかどうかというのは、今後また調べたいと思っている。
◯佐藤委員 新聞等でも大きく報道されたケースが県内にもある。今日持ってきたのは日刊県民福井の新聞のコピーであるが、御存じかも知れないが、19歳自殺はパワハラ、遺族の労災申請を認定という大きな記事になっている。消防設備販売保守管理の暁産業という、この近くにある会社に高卒で就職して間もなくの19歳の男性が自殺したのは、上司からのいじめが原因だということで、遺族から出されていた労災申請を福井労働基準監督署が認定したという新聞報道である。
先日、この方のお父さんの話を間接的に聞く機会があった。直接お見えにならずに、いわゆる代理人、弁護士の方がお父さんのお気持ちを代読されるということでお聞きをしたが、お父さんはこう述べられているわけである。
気違いにも似た社風の集団組織だと。狂気のパワハラを毎日毎日受け続けて、針の山にいるような地獄の会社。一人苦しんで19歳の夢も希望もなく、あげく会社をやめるという退路まで断たれ、そのように洗脳されてしまい、ただただ死んで会社をやめることができたと。息子の死に顔には険しい眉の跡だけが残ったと、安らかな顔だったということで、ずっといろいろ書いてあり、福井においてもブラック企業はまだたくさんあると思われる。福井は住みよいところと言われている。それにふさわしいよいところになるよう願ってならない。息子の魂よ、今はどこにいると。ちょっと長文で、全部は読まないが、こういうお父さんの話を聞いた。
ジョブカフェに相談があったという数字だけはなくて、例えば県庁だけではなく、仕事上の理由による自殺なのかどうかというのは県警も関係してくると思うが、やはり県内でも、自殺統計というのはとっていると思う。全国的には、例えば昨年度でいっても自殺者は減っているが、福井県は自殺者がふえているわけである。もちろん、こういう関係の自殺がふえているとは断定はしないが、やはり自殺が高どまりしている中で、そういう問題もあると思う。
また、せっかく高校、大学を卒業して、あこがれの会社に就職した若者が、こういう形で夢を絶たれていくことは、なくしていかなければいけないと思っている。
そこで知事にお尋ねするが、前途ある若者がこういう形で夢が絶たれてしまうということは、県を挙げて、そういう企業に対しても働きかけを強めていく必要があると思うが、いかがか。
◯産業労働部長 産業労働部だけではないかもしれないが、窓口としては労働相談、ふくいジョブカフェ、若者の就職支援、さまざまある中で対応していくことを考えている。各部局との連携もその中でやっていきたいと思う。
◯佐藤委員 雇用の問題を重視している知事がみずから答弁に立たないのは非常に残念だが、そこで1点土木部長に尋ねる。
いわゆる労災事故を、例えば現場で起こした会社に対してはどんなペナルティがあるか。
◯土木部長 労災事故の程度による。安全対策を施しても避けられないような事故を起こした場合とは異なり、朝の朝礼もしない、転落防止のロープもしないなど、労災事故が起きないための努力を何もしないところで起きた場合には、やはり一定のペナルティを科して、指名停止や、営業停止もあるという対応である。
◯佐藤委員 では、例えば今回の実名が報道されている会社、労災事故というか、自殺が労災認定されたということだが、この企業は、公共、自治体のいろいろな仕事、実際に県の仕事もしている。それから、県が行っている合同面接、就職紹介、県の就職ナビのホームページでも紹介されているが、こういう事故を起こした後に、福井県として、この会社に対してはどういうペナルティを科したか。
◯産業労働部長 個別の事案のことについては、正確に把握していないので、答弁を差し控えさせていただきたいと思う。
◯佐藤委員 こんな事故は、再三これだけ大きな新聞沙汰にはならないと思う。土木の現場では労災事故に対してぴりぴりしているし、行政側もしっかりしている。しかし、一方で、そういう普通の会社の環境でのこういう労災の案件に対しては感覚が鈍いということではだめではないか。
◯産業労働部長 繰り返しになるが、個別の事案の詳細を正確に把握していないので、お答えを差し控えさせていただく。
◯佐藤委員 では、福井県として、本当にブラック企業を根絶していくため、若者を死に追いやるような会社はだめだと、何らかのペナルティをかけなければ、会社は何も怖くない。こういう事故を起こしても、合同就職の面接会では堂々と営業できる。県が関係しているホームページ、就職ナビでも堂々と紹介してもらえるというのなら、全然何の影響もないではないか。おかしいと思わないか。
◯産業労働部長 一般論であるが、具体的な、労働基準法等の法令違反等があるのであれば、労働局、国がしかるべき法的措置をとるということになると思うし、十分注意したいと思う。
◯佐藤委員 私は福井県の態度を問うている。ここは県議会である。福井県として、そういう問題にしっかり取り組む体制を強める気はないのか。
◯産業労働部長 状況の把握については、十分努めたいと思っている。
◯佐藤委員 当然である。そういう問題で自殺された方は、今私が聞いているだけでも一人や二人ではない。自殺に至るまで、いろいろな方もたくさんいらっしゃると思う。しっかり対応していかないと、県自身がブラックと言われる。強く要望しておきたい。
それから、3つ目は生活保護の問題について質問をする。
福井県の各地にある健康福祉センターが、町にお住まいの方の受付窓口ということになっている。例えばこういうケースを聞いた。生活保護の申請に3回行ったけれども、3回断られた。職員が、生活保護というのは自由がなくなる、受けないで精いっぱい頑張れと言って申請を受け付けなかったという。こういう水際作戦は法律違反である。
さらに、結果的には代理人を立てて、生活保護の受給に至ったという方に対して、いわゆる指導書を発行して、あなたは車を使用してはいけない、仮に就職の面接などで使用する場合は、健康福祉センターの許可を得ないと生活保護を打ち切られることもあると、こういう文書をわざわざ出して県民を恫喝するというひどいことをやっている。なぜこんなおかしなことをやっているのか。
◯健康福祉部長 県の健康福祉センターは6カ所あるが、申請と保護の開始の状況をまず説明させていただきたいと思う。
まず、生活保護申請の意思を確認させていただく。平成24年度の受け付けは、町分で50件あり、うち40件について保護の開始をしたということである。開始率に直すと80%である。
その中で、保護の開始に至らなかったケースは、やはり預貯金や株券などの資産があったケースや、世帯収入が保護基準を上回っているなどのケースであった。また、車は資産であり、売却して活用することや維持費に問題があることから、原則として保護受給者には車の保有は認められていない。ただ、法律及び厚生事務次官通知等で、6カ月以内であるが、事業用、通勤用、通院用、あるいは求職活動の場合に例外的に認められている。
今、指摘があった件については、申請者から求職活動を含め、日常生活でも車の使用をしたい旨の申し出があったわけである。口頭で、日常生活では無理であるという話もさせていただいたが、本人はなかなかということもあり、センターにおいて、使用目的が求職活動であると確認する必要があるということで、文書で指導を行ったという状況である。
◯佐藤委員 原則として車の保有はだめと言うが、町部では、バスも1日数便など、不便な地域に住んでいる場合も少なくないわけである。そうなると就職活動、あるいは買い物に行く、ましてや身体障害があるケースを考えると、車なしにはなかなか難しい場合もあると思う。やはりそういうことをきちんと考慮しなければいけないと思う。
この方の場合も、8月7日に、いわゆる指導書が健康福祉センターの所長名で本人に出されたわけである。その後、生活保護を3回申請に行って断られたから、相談会に行って代理人の方に相談をしたところ、健康福祉センターの対応がおかしいではないかということで、質問書を当該健康福祉センターに出されたわけである。その結果、9月3日付で、さきの指導書は指導の手続において誤りがあったため取り下げるという通知を出しているわけである。
だから、誤りがあったため取り下げるというような、すぐ撤回しなければいけないような指導書を簡単に出してはいかんと思うし、職員も県民の命と暮らしを守るという立場に立って、話を聞いて、貯金やこれまでの仕事の実態などを見れば、悪質に生活保護を受給するとかではないことはわかるわけであるから、もっと丁寧にきちんとやるべきではないか。
◯健康福祉部長 委員がおっしゃったように、指導の書類については取り下げたということである。この中に、事前に了解を得た場合に限り使用を認めるとした指導があり、これが指導の手続として認められていなかったので取り下げたということである。
ただ、車の保有については、国の法令あるいは通達等によって、生活保護の場合はある程度限定されていることを御理解いただきたいということで、懇切に、また現場において対応させていただいている状況である。
◯佐藤委員 ここで車の問題を部長と議論するつもりはないが、以前は例えばクーラーだってだめだ、贅沢品だと言われていた。だけど、もうクーラーがない家はほとんどない。そうなるとクーラーは贅沢品ではない。福井では、車は贅沢品とは言えない。日本一保有率が高い。なぜかと言えば、不便だからである。車がないと生活できないという環境があるわけである。だから、東京の厚生労働省の指示どおりやればいいというものではない。福井の実態に応じて、そういう行政をやっていただきたいということを強く要望しておく。
今回の予算で、生活困窮者就労・自立支援モデル事業というのがある。これは全員協議会でも質問したが、部長の答弁では、しっかりしたNPOに委託をして就労支援をするという話だった。
ただ、前の国会で廃案になったが、10月15日に再度招集される国会に出される生活保護の改悪の中の一つに、自立支援関係の法律がある。これまでは役所の窓口が水際だったが、直接役所は受付窓口にならずに、自立相談支援事業の窓口でまず相談してくださいということで、民間に任せてしまうという大きな問題があると、私は反対をしている。それの先取り的なことになりはしないかという懸念に対してどう答えるか。
◯健康福祉部長 予算案を出しているが、その運営に当たっては、今後市町とも連携していく必要がある。生活困窮者就労・自立支援モデル事業を利用される方は、当然市町の福祉センターにも行く。協議会などを設け、連携の場を持っていきたいと考えている。
◯佐藤委員 今は直接、例えば福井市役所が窓口になっていても、はっきり言って不十分さがある。それがNPO法人に丸投げするようなことでは、一層、生活保護の申請が実態としてやりにくくなることが出てくるという懸念は、十分あるということを指摘をしておきたいと思う。
最後であるが、原子力の問題で質問する。
西川知事は、従来、福井県の原子力行政の原則であった国民合意というものを事実上かなぐり捨てている。今、どの新聞社の調査でも、原発をやめたほうがいいという方が半分は超えている。だから、原子力の推進ということに国民合意はもうなくなっているというのは事実である。しかし、知事は原発再稼働を進める、あるいは原発の海外輸出を進めるという立場なので、国民合意がないまま進めるという立場に今変わられたとように思う。
なぜ福井県の西川知事が日本の原子力の推進行政のフロントランナーにならなければいけないのか、なろうとしているのかというあたりの真意を、まず、最初に尋ねたいと思う。
◯知 事 余り決めつけられても困るが、そういう事実もないし、そのつもりもない。福井県ではこれまで40年余り原発立地地域に安全神話はないという姿勢で、原発の安全を国任せ、事業者任せにせず、県みずから昼夜を問わず厳しく監視をし、県民の安全安心を実現してきたわけである。
大飯3・4号機の再稼働についても、昨年6月の野田総理の記者会見で、原発を今とめてしまっては、日本社会は立ち行かないという言葉を重く受けとめて、県議会での議論、また地元おおい町の意見を総合的に勘案して、十分な意見を総合的に勘案して同意をさせていただいたものであり、県としてはエネルギーの安全保障、地球温暖化防止、日本の技術力を結集した世界的貢献、あるいは早急にエネルギー政策における原子力発電の位置づけを明確にするよう、こうしたことを今厳しく国に対して求めていると、こういう対応である。
◯佐藤委員 それが一般国民から見れば、原発推進だということになるわけである。何も私が決めつけているのではなく、事実としてそうだということは、まず指摘しておきたいと思う。
きのうの知事の、総合資源エネルギー基本政策分科会での意見書を読んだ。温室効果ガスの排出量の3分の1が電力生産だということを述べて、IPCC-気候変動に関する政府間パネル-第5次報告書の問題の解決策としても原子力の位置づけをきちんとしていかなければいけないというのが、この意見書の趣旨だと思う。
このIPCCの地球温暖化に対する問題を、原発の推進とすぐリンクしてしまうのは大きな問題だと思うので、別の見方もあるということを紹介しておきたい。これは気候ネットワークという、気候問題に関する著名な特定非営利活動法人であるが、平成23年の東日本大震災以降、原発の停止が火力発電所の稼働につながって、温室効果ガス排出量増の一部要因にはなっているものの、グリーン経済を成長させ、大幅削減に向けるための抜本的対策を先送りしてきたことが最大の要因だということを述べ、日本政府がこれまでのように原子力や化石燃料に依存するのではなく、再生可能エネルギーと省エネルギーを地球温暖化対策の柱に位置づけるべきだと言っているわけである。
だから、同じIPCCの報告書を受けても、西川知事はちゃんと原子力を位置づけなければいけないと考えるし、一方、気候ネットワークは、政府としてのきちんとしたCO2削減の位置づけ、目標がないことが問題だというふうに言っているわけである。
だから、いろいろな議論はあると思うが、やはり知事がいろいろな理由で原子力を選択肢として強調していることは間違いないと思う。しかし、最近の報道を読むと、今朝の朝日新聞にも書いてあったが、小泉元総理大臣ですら、各地で大声で原発をなくそうと言い始めているということである。自由民主党の元総理大臣経験者が大声で言い始めているというような状況もあるわけだから、福島第一原子力発電所の事故を見れば、そういう選択肢も出てくるということを冷静に考えることが必要ではないか。
◯知 事 IPCCの報告書も見ながら、地球温暖化による影響とその問題の解決策を明確にしろと言っているのが意見書の趣旨である。かつ、前からも言っているが、原子力の位置づけがいつまでも曖昧な状態で、原発停止が長引くことは、福井県の、地元としての安全管理、しっかりしたコントロールにも影響があるので、国はエネルギー政策にとって原子力が要るのか要らないのか、早急に明確にしろと我々は言っているわけである。
◯佐藤委員 かつての鳩山総理大臣時代は温室効果ガスを1990年比で25%削減するということを国際公約にしていたが、安倍政権はこの国際公約を投げ捨てて、新たな削減目標は何も考えていない。こういう政府の態度は無責任だと思う。
それで、原発についてもう一点尋ねる。
原子力規制庁の説明も県議会として聞き、私も質問をしたが、原発の新規制基準は、従来と変わらない基準地震動の値の設定や、原発敷地境界での線量目安をなくしたことなど、福井県民、原発立地地域の住民から見れば、極めて不完全な指針だと言わざるを得ないと思う。この点について、県としてきちんと改善を求めるべきではないか。
◯安全環境部長 原子力規制委員会の新規制基準であるが、福島第一原子力発電所事故の直後から、福井県が事業者に対し要請をし、大飯原発3、4号機の再稼働に当たって実現させてきた緊急安全対策、並びに免震事務棟、フィルターベント、防潮堤等々、中長期対策がもとになっているものと認識をしている。
しかしながら、我々も原子力規制委員会にはさまざまな課題があると思っている。特に破砕帯や活断層の評価に関しては、その都度限られた分野の専門家で議論している状況であり、新規制基準もそうであるが、審査の体制そのものも不十分ではないかと考えている。このため、地震や活断層といったことを調査、評価するための専門の評価機関を設置するよう、国に対して強く改善を申し入れているところである。
◯佐藤委員 私が質問した趣旨とちょっと違う。要するに、福島第一原子力発電事故も地震か津波かという議論はあるが、どちらにしたって東日本大震災である。今いろいろ議論になっているのは、敷地の中での活断層ばかりに目が行って、それも大事だが、きちんとした基準地震動はどうするのかという議論が抜けていることが問題ではないかと聞いているのである。
もう一つは、福島第一原子力発電所事故の前には、敷地境界で例えば250ミリシーベルト、国際的には100ミリシーベルトというような基準があって、やはりこれは被曝を考えてそういう基準にしていたわけである。今、そういう議論が全くなくなってしまって、一体幾らなら許容するのというようなことになってしまっている。新規制基準ではベントをつくればいいということになっているが、ベントをつくれば被曝するということとセットであるから、そういうのはおかしいのではないのかということを言っている。
◯安全環境部長 原子炉立地審査指針の問題については、国会でもさまざまな議論があるということは私どもも十分承知している。これまでは、昭和39年につくった原子炉立地審査指針で敷地境界で250ミリシーベルトという値であったが、新規制基準では、受ける量ではなく、放出する量を100テラベクレル、福島第一原子力発電所事故のおおむね100分の1で想定したもので規制をかけようという基準に切りかわったということで、国会においても田中原子力規制委員会委員長が答弁しており、そういう状況にあると認識している。
◯佐藤委員 知事、県民の安全を最優先で考えなければいけない。これからは受ける量ではなく出す量で規制するのだとすると受ける量の規制はなくなる。要するに県民の被曝を考えた場合の規制がなくなる。これはおかしいのではないか。
◯知 事 原子力規制委員会に根拠があるのか何か知らないが、明瞭な基準、自分たちがどういう基準で何を要求しているのかというのがはっきりしないから、我々は言っているわけであり、これを我々におっしゃられても、ちょっと方向が違うと思う。
◯佐藤委員 そうではない。これはやっぱり知事も言ってもらわなければだめである。もちろん私も言うが、福井県も言ってもらわないと。私も反対するが、曖昧な基準で原発再稼働がどんどん進んでいくようでは非常にまずいと思う。そこはしっかり要望してもらわなければ困る。従来あった基準がなくなったわけであるから、おかしいと思わないか。
◯知 事 いろいろあるが、原子力規制委員会がいろいろ安全だとか、あるいは地震だとか、あるいはいろいろな基準をいつまでにつくると、そういう問題は一つ一つ課題が多い。委員も私も同じだと思うが、科学性ということに立脚しないとこの問題は解決できないわけであるから、そこをはっきりして、国民のために方向を出そうということを願っているということである。
◯佐藤委員 今朝の新聞でも報道されていたように、関西電力の大飯原子力発電所の3連動の否定は認めないと、きのうの原子力規制委員会で議論になった。県としては、部長が言ったとおりの見解だと思う。しかし、例えば以前は活断層は認定されてこなかったわけだから、知事が言われた科学性ということを考えれば、集団的な議論と県民への説明責任ということをきっちり求めるべきではないか。
◯知 事 さっき福島の問題が地震か津波かどちらでもいいというようなことをおっしゃったが、そうではなくて、どういう原因で何が問題なのかということを認識してこの問題に対処しなければならないと思う。
台風災害での被災者支援、ブラック企業対策、生活保護行政、原発問題
「県民の命と暮らしを守る県政になっているのか」 佐藤 正雄 委員
◯佐藤委員 一般質問から今回の台風18号災害についての質問が続いている。知事を初め、皆さんも現場を見たと思うが、私自身もいろいろ見て回ったが、やはりお宅をなくされた、あるいは繰り返し2回も3回も同じような水害に遭うというつらさ、苦しみというのは、これは何とかしなければいけないと思った。例えば小浜市の江古川の新興住宅地の方とも話したが、知事も行かれたそうだが、3回も水害に遭って、今回も家財道具、床上浸水で全部パーになってしまったと、本当にもう涙しかないとおっしゃっていた。小浜市忠野の集落では間一髪で年老いたお母さんを背負って逃げて、美浜町丹生のような最悪の事態は何とか避けられたという話も聞いた。被災された方へどういう支援をするかということが非常に大事だと思う。
同じように被災された京都府では、ちょうど同じように議会中であるが、補正予算が上程され、その中身を見ると、被災住宅の再建等に要する支援ということで、建てかえで700万円、補修で450万円、災害弔慰金の支給に関するもので、被災者に対して350万円を限度に市町村を通じて融資をするというような内容がある。
先ほどの質問に、知事は半壊で20万円、一部損壊で10万円という制度もつくって支援をしていくというようなことも答えた。しかし、家は壊れていないけれども床上浸水で家財道具が全部パーになってしまって、それだけでも何十万円、あるいは100万円近い損害を受けたお宅もあるということなので、そういう被害の実態に照らして、引き続き、きめ細かな支援策を考えていくことがどうしても必要だと思うが、見解をお尋ねする。
◯知 事 今回の被害については、京都府のように災害救助法が全体に適用されるということでもなかったわけであるが、やはり市町が地域の方の要請を考え、また過去の例を考えながら、どのような応援をするのが今回は適当かという考えを聞き、それを我々が応援するという方法を講じているところである。
また、それぞれ災害によっていろいろ状況は違うので、そのときに応じて、皆さんのお気持ちに十分沿うような方向で努力したいと考える。
◯佐藤委員 県の補正予算も上程されるとは思うが、補正予算は補正予算として十分なものをつくっていただき、さらに引き続き実態に合った支援策についても検討していただきたいと思う。
次に2つ目であるが、いわゆるブラック企業という問題についてお尋ねしたいと思う。
県の相談窓口にも相談があると思うし、私ども議員のところにもいろいろな相談が来るが、いわゆる残業代が払われないとか、あるいはパワハラ、セクハラ、言葉の暴力等々、が全国的にも大きな問題になっている。最悪の場合は自殺に追い込まれるというようなケースも福井県内でもあるわけである。
だから、いわゆるブラック企業と呼ばれているが、こういう企業が県民を苦しめている、福井県内のこういう企業実態をどのように県として把握をして、どのような対策を講じているか、また今後講じようとしているのかお尋ねする。
◯産業労働部長 いわゆるブラック企業ということで、共通の確立した定義があるわけではないが、一般には働くことができなくなるほど厳しい過酷な労働を強いるとか、あるいはパワハラで離職に追い込むとかいったことを恒常的に行うような企業を指すというふうに言われているかと思う。
県においては、ふくいジョブカフェで早期離職をされた若者の方の相談を受けており、賃金の不払いの残業であるとか、長時間の過重労働、パワハラなどの理由で離職されたといった話が入っている。ことしの4月から9月で8件、そういった相談があったと把握をしている。実は、国でも先月、全国的に情報収集、調査を行い、福井労働局管内では2件の情報提供があったと聞いている。
こうした情報を県で把握した場合には、やはり権限を有する国に連絡すると同時に、大学、高校、あるいは就職を一緒に応援している関係団体と連携して、就職相談や就職支援を行う際に活用するといったことを考えている。
国ではさらに、法令違反がある場合には、それが是正されるまでは職業紹介をしない、あるいは重大悪質な場合には送検するなどの措置を徹底するとなっているので、国との連携もしっかりとやっていきたいと考えている。
◯佐藤委員 今の話の統計は、いつごろからこういうのをとっているかわからないが、昨年度や一昨年度はどうか。
◯産業労働部長 こういった相談というのは、必ずしもブラック企業という視点で整理しているものではないので、今、手元にあるのはことしの4月以降の状況を整理したものである。過去にそういった類例がないかどうかというのは、今後また調べたいと思っている。
◯佐藤委員 新聞等でも大きく報道されたケースが県内にもある。今日持ってきたのは日刊県民福井の新聞のコピーであるが、御存じかも知れないが、19歳自殺はパワハラ、遺族の労災申請を認定という大きな記事になっている。消防設備販売保守管理の暁産業という、この近くにある会社に高卒で就職して間もなくの19歳の男性が自殺したのは、上司からのいじめが原因だということで、遺族から出されていた労災申請を福井労働基準監督署が認定したという新聞報道である。
先日、この方のお父さんの話を間接的に聞く機会があった。直接お見えにならずに、いわゆる代理人、弁護士の方がお父さんのお気持ちを代読されるということでお聞きをしたが、お父さんはこう述べられているわけである。
気違いにも似た社風の集団組織だと。狂気のパワハラを毎日毎日受け続けて、針の山にいるような地獄の会社。一人苦しんで19歳の夢も希望もなく、あげく会社をやめるという退路まで断たれ、そのように洗脳されてしまい、ただただ死んで会社をやめることができたと。息子の死に顔には険しい眉の跡だけが残ったと、安らかな顔だったということで、ずっといろいろ書いてあり、福井においてもブラック企業はまだたくさんあると思われる。福井は住みよいところと言われている。それにふさわしいよいところになるよう願ってならない。息子の魂よ、今はどこにいると。ちょっと長文で、全部は読まないが、こういうお父さんの話を聞いた。
ジョブカフェに相談があったという数字だけはなくて、例えば県庁だけではなく、仕事上の理由による自殺なのかどうかというのは県警も関係してくると思うが、やはり県内でも、自殺統計というのはとっていると思う。全国的には、例えば昨年度でいっても自殺者は減っているが、福井県は自殺者がふえているわけである。もちろん、こういう関係の自殺がふえているとは断定はしないが、やはり自殺が高どまりしている中で、そういう問題もあると思う。
また、せっかく高校、大学を卒業して、あこがれの会社に就職した若者が、こういう形で夢を絶たれていくことは、なくしていかなければいけないと思っている。
そこで知事にお尋ねするが、前途ある若者がこういう形で夢が絶たれてしまうということは、県を挙げて、そういう企業に対しても働きかけを強めていく必要があると思うが、いかがか。
◯産業労働部長 産業労働部だけではないかもしれないが、窓口としては労働相談、ふくいジョブカフェ、若者の就職支援、さまざまある中で対応していくことを考えている。各部局との連携もその中でやっていきたいと思う。
◯佐藤委員 雇用の問題を重視している知事がみずから答弁に立たないのは非常に残念だが、そこで1点土木部長に尋ねる。
いわゆる労災事故を、例えば現場で起こした会社に対してはどんなペナルティがあるか。
◯土木部長 労災事故の程度による。安全対策を施しても避けられないような事故を起こした場合とは異なり、朝の朝礼もしない、転落防止のロープもしないなど、労災事故が起きないための努力を何もしないところで起きた場合には、やはり一定のペナルティを科して、指名停止や、営業停止もあるという対応である。
◯佐藤委員 では、例えば今回の実名が報道されている会社、労災事故というか、自殺が労災認定されたということだが、この企業は、公共、自治体のいろいろな仕事、実際に県の仕事もしている。それから、県が行っている合同面接、就職紹介、県の就職ナビのホームページでも紹介されているが、こういう事故を起こした後に、福井県として、この会社に対してはどういうペナルティを科したか。
◯産業労働部長 個別の事案のことについては、正確に把握していないので、答弁を差し控えさせていただきたいと思う。
◯佐藤委員 こんな事故は、再三これだけ大きな新聞沙汰にはならないと思う。土木の現場では労災事故に対してぴりぴりしているし、行政側もしっかりしている。しかし、一方で、そういう普通の会社の環境でのこういう労災の案件に対しては感覚が鈍いということではだめではないか。
◯産業労働部長 繰り返しになるが、個別の事案の詳細を正確に把握していないので、お答えを差し控えさせていただく。
◯佐藤委員 では、福井県として、本当にブラック企業を根絶していくため、若者を死に追いやるような会社はだめだと、何らかのペナルティをかけなければ、会社は何も怖くない。こういう事故を起こしても、合同就職の面接会では堂々と営業できる。県が関係しているホームページ、就職ナビでも堂々と紹介してもらえるというのなら、全然何の影響もないではないか。おかしいと思わないか。
◯産業労働部長 一般論であるが、具体的な、労働基準法等の法令違反等があるのであれば、労働局、国がしかるべき法的措置をとるということになると思うし、十分注意したいと思う。
◯佐藤委員 私は福井県の態度を問うている。ここは県議会である。福井県として、そういう問題にしっかり取り組む体制を強める気はないのか。
◯産業労働部長 状況の把握については、十分努めたいと思っている。
◯佐藤委員 当然である。そういう問題で自殺された方は、今私が聞いているだけでも一人や二人ではない。自殺に至るまで、いろいろな方もたくさんいらっしゃると思う。しっかり対応していかないと、県自身がブラックと言われる。強く要望しておきたい。
それから、3つ目は生活保護の問題について質問をする。
福井県の各地にある健康福祉センターが、町にお住まいの方の受付窓口ということになっている。例えばこういうケースを聞いた。生活保護の申請に3回行ったけれども、3回断られた。職員が、生活保護というのは自由がなくなる、受けないで精いっぱい頑張れと言って申請を受け付けなかったという。こういう水際作戦は法律違反である。
さらに、結果的には代理人を立てて、生活保護の受給に至ったという方に対して、いわゆる指導書を発行して、あなたは車を使用してはいけない、仮に就職の面接などで使用する場合は、健康福祉センターの許可を得ないと生活保護を打ち切られることもあると、こういう文書をわざわざ出して県民を恫喝するというひどいことをやっている。なぜこんなおかしなことをやっているのか。
◯健康福祉部長 県の健康福祉センターは6カ所あるが、申請と保護の開始の状況をまず説明させていただきたいと思う。
まず、生活保護申請の意思を確認させていただく。平成24年度の受け付けは、町分で50件あり、うち40件について保護の開始をしたということである。開始率に直すと80%である。
その中で、保護の開始に至らなかったケースは、やはり預貯金や株券などの資産があったケースや、世帯収入が保護基準を上回っているなどのケースであった。また、車は資産であり、売却して活用することや維持費に問題があることから、原則として保護受給者には車の保有は認められていない。ただ、法律及び厚生事務次官通知等で、6カ月以内であるが、事業用、通勤用、通院用、あるいは求職活動の場合に例外的に認められている。
今、指摘があった件については、申請者から求職活動を含め、日常生活でも車の使用をしたい旨の申し出があったわけである。口頭で、日常生活では無理であるという話もさせていただいたが、本人はなかなかということもあり、センターにおいて、使用目的が求職活動であると確認する必要があるということで、文書で指導を行ったという状況である。
◯佐藤委員 原則として車の保有はだめと言うが、町部では、バスも1日数便など、不便な地域に住んでいる場合も少なくないわけである。そうなると就職活動、あるいは買い物に行く、ましてや身体障害があるケースを考えると、車なしにはなかなか難しい場合もあると思う。やはりそういうことをきちんと考慮しなければいけないと思う。
この方の場合も、8月7日に、いわゆる指導書が健康福祉センターの所長名で本人に出されたわけである。その後、生活保護を3回申請に行って断られたから、相談会に行って代理人の方に相談をしたところ、健康福祉センターの対応がおかしいではないかということで、質問書を当該健康福祉センターに出されたわけである。その結果、9月3日付で、さきの指導書は指導の手続において誤りがあったため取り下げるという通知を出しているわけである。
だから、誤りがあったため取り下げるというような、すぐ撤回しなければいけないような指導書を簡単に出してはいかんと思うし、職員も県民の命と暮らしを守るという立場に立って、話を聞いて、貯金やこれまでの仕事の実態などを見れば、悪質に生活保護を受給するとかではないことはわかるわけであるから、もっと丁寧にきちんとやるべきではないか。
◯健康福祉部長 委員がおっしゃったように、指導の書類については取り下げたということである。この中に、事前に了解を得た場合に限り使用を認めるとした指導があり、これが指導の手続として認められていなかったので取り下げたということである。
ただ、車の保有については、国の法令あるいは通達等によって、生活保護の場合はある程度限定されていることを御理解いただきたいということで、懇切に、また現場において対応させていただいている状況である。
◯佐藤委員 ここで車の問題を部長と議論するつもりはないが、以前は例えばクーラーだってだめだ、贅沢品だと言われていた。だけど、もうクーラーがない家はほとんどない。そうなるとクーラーは贅沢品ではない。福井では、車は贅沢品とは言えない。日本一保有率が高い。なぜかと言えば、不便だからである。車がないと生活できないという環境があるわけである。だから、東京の厚生労働省の指示どおりやればいいというものではない。福井の実態に応じて、そういう行政をやっていただきたいということを強く要望しておく。
今回の予算で、生活困窮者就労・自立支援モデル事業というのがある。これは全員協議会でも質問したが、部長の答弁では、しっかりしたNPOに委託をして就労支援をするという話だった。
ただ、前の国会で廃案になったが、10月15日に再度招集される国会に出される生活保護の改悪の中の一つに、自立支援関係の法律がある。これまでは役所の窓口が水際だったが、直接役所は受付窓口にならずに、自立相談支援事業の窓口でまず相談してくださいということで、民間に任せてしまうという大きな問題があると、私は反対をしている。それの先取り的なことになりはしないかという懸念に対してどう答えるか。
◯健康福祉部長 予算案を出しているが、その運営に当たっては、今後市町とも連携していく必要がある。生活困窮者就労・自立支援モデル事業を利用される方は、当然市町の福祉センターにも行く。協議会などを設け、連携の場を持っていきたいと考えている。
◯佐藤委員 今は直接、例えば福井市役所が窓口になっていても、はっきり言って不十分さがある。それがNPO法人に丸投げするようなことでは、一層、生活保護の申請が実態としてやりにくくなることが出てくるという懸念は、十分あるということを指摘をしておきたいと思う。
最後であるが、原子力の問題で質問する。
西川知事は、従来、福井県の原子力行政の原則であった国民合意というものを事実上かなぐり捨てている。今、どの新聞社の調査でも、原発をやめたほうがいいという方が半分は超えている。だから、原子力の推進ということに国民合意はもうなくなっているというのは事実である。しかし、知事は原発再稼働を進める、あるいは原発の海外輸出を進めるという立場なので、国民合意がないまま進めるという立場に今変わられたとように思う。
なぜ福井県の西川知事が日本の原子力の推進行政のフロントランナーにならなければいけないのか、なろうとしているのかというあたりの真意を、まず、最初に尋ねたいと思う。
◯知 事 余り決めつけられても困るが、そういう事実もないし、そのつもりもない。福井県ではこれまで40年余り原発立地地域に安全神話はないという姿勢で、原発の安全を国任せ、事業者任せにせず、県みずから昼夜を問わず厳しく監視をし、県民の安全安心を実現してきたわけである。
大飯3・4号機の再稼働についても、昨年6月の野田総理の記者会見で、原発を今とめてしまっては、日本社会は立ち行かないという言葉を重く受けとめて、県議会での議論、また地元おおい町の意見を総合的に勘案して、十分な意見を総合的に勘案して同意をさせていただいたものであり、県としてはエネルギーの安全保障、地球温暖化防止、日本の技術力を結集した世界的貢献、あるいは早急にエネルギー政策における原子力発電の位置づけを明確にするよう、こうしたことを今厳しく国に対して求めていると、こういう対応である。
◯佐藤委員 それが一般国民から見れば、原発推進だということになるわけである。何も私が決めつけているのではなく、事実としてそうだということは、まず指摘しておきたいと思う。
きのうの知事の、総合資源エネルギー基本政策分科会での意見書を読んだ。温室効果ガスの排出量の3分の1が電力生産だということを述べて、IPCC-気候変動に関する政府間パネル-第5次報告書の問題の解決策としても原子力の位置づけをきちんとしていかなければいけないというのが、この意見書の趣旨だと思う。
このIPCCの地球温暖化に対する問題を、原発の推進とすぐリンクしてしまうのは大きな問題だと思うので、別の見方もあるということを紹介しておきたい。これは気候ネットワークという、気候問題に関する著名な特定非営利活動法人であるが、平成23年の東日本大震災以降、原発の停止が火力発電所の稼働につながって、温室効果ガス排出量増の一部要因にはなっているものの、グリーン経済を成長させ、大幅削減に向けるための抜本的対策を先送りしてきたことが最大の要因だということを述べ、日本政府がこれまでのように原子力や化石燃料に依存するのではなく、再生可能エネルギーと省エネルギーを地球温暖化対策の柱に位置づけるべきだと言っているわけである。
だから、同じIPCCの報告書を受けても、西川知事はちゃんと原子力を位置づけなければいけないと考えるし、一方、気候ネットワークは、政府としてのきちんとしたCO2削減の位置づけ、目標がないことが問題だというふうに言っているわけである。
だから、いろいろな議論はあると思うが、やはり知事がいろいろな理由で原子力を選択肢として強調していることは間違いないと思う。しかし、最近の報道を読むと、今朝の朝日新聞にも書いてあったが、小泉元総理大臣ですら、各地で大声で原発をなくそうと言い始めているということである。自由民主党の元総理大臣経験者が大声で言い始めているというような状況もあるわけだから、福島第一原子力発電所の事故を見れば、そういう選択肢も出てくるということを冷静に考えることが必要ではないか。
◯知 事 IPCCの報告書も見ながら、地球温暖化による影響とその問題の解決策を明確にしろと言っているのが意見書の趣旨である。かつ、前からも言っているが、原子力の位置づけがいつまでも曖昧な状態で、原発停止が長引くことは、福井県の、地元としての安全管理、しっかりしたコントロールにも影響があるので、国はエネルギー政策にとって原子力が要るのか要らないのか、早急に明確にしろと我々は言っているわけである。
◯佐藤委員 かつての鳩山総理大臣時代は温室効果ガスを1990年比で25%削減するということを国際公約にしていたが、安倍政権はこの国際公約を投げ捨てて、新たな削減目標は何も考えていない。こういう政府の態度は無責任だと思う。
それで、原発についてもう一点尋ねる。
原子力規制庁の説明も県議会として聞き、私も質問をしたが、原発の新規制基準は、従来と変わらない基準地震動の値の設定や、原発敷地境界での線量目安をなくしたことなど、福井県民、原発立地地域の住民から見れば、極めて不完全な指針だと言わざるを得ないと思う。この点について、県としてきちんと改善を求めるべきではないか。
◯安全環境部長 原子力規制委員会の新規制基準であるが、福島第一原子力発電所事故の直後から、福井県が事業者に対し要請をし、大飯原発3、4号機の再稼働に当たって実現させてきた緊急安全対策、並びに免震事務棟、フィルターベント、防潮堤等々、中長期対策がもとになっているものと認識をしている。
しかしながら、我々も原子力規制委員会にはさまざまな課題があると思っている。特に破砕帯や活断層の評価に関しては、その都度限られた分野の専門家で議論している状況であり、新規制基準もそうであるが、審査の体制そのものも不十分ではないかと考えている。このため、地震や活断層といったことを調査、評価するための専門の評価機関を設置するよう、国に対して強く改善を申し入れているところである。
◯佐藤委員 私が質問した趣旨とちょっと違う。要するに、福島第一原子力発電事故も地震か津波かという議論はあるが、どちらにしたって東日本大震災である。今いろいろ議論になっているのは、敷地の中での活断層ばかりに目が行って、それも大事だが、きちんとした基準地震動はどうするのかという議論が抜けていることが問題ではないかと聞いているのである。
もう一つは、福島第一原子力発電所事故の前には、敷地境界で例えば250ミリシーベルト、国際的には100ミリシーベルトというような基準があって、やはりこれは被曝を考えてそういう基準にしていたわけである。今、そういう議論が全くなくなってしまって、一体幾らなら許容するのというようなことになってしまっている。新規制基準ではベントをつくればいいということになっているが、ベントをつくれば被曝するということとセットであるから、そういうのはおかしいのではないのかということを言っている。
◯安全環境部長 原子炉立地審査指針の問題については、国会でもさまざまな議論があるということは私どもも十分承知している。これまでは、昭和39年につくった原子炉立地審査指針で敷地境界で250ミリシーベルトという値であったが、新規制基準では、受ける量ではなく、放出する量を100テラベクレル、福島第一原子力発電所事故のおおむね100分の1で想定したもので規制をかけようという基準に切りかわったということで、国会においても田中原子力規制委員会委員長が答弁しており、そういう状況にあると認識している。
◯佐藤委員 知事、県民の安全を最優先で考えなければいけない。これからは受ける量ではなく出す量で規制するのだとすると受ける量の規制はなくなる。要するに県民の被曝を考えた場合の規制がなくなる。これはおかしいのではないか。
◯知 事 原子力規制委員会に根拠があるのか何か知らないが、明瞭な基準、自分たちがどういう基準で何を要求しているのかというのがはっきりしないから、我々は言っているわけであり、これを我々におっしゃられても、ちょっと方向が違うと思う。
◯佐藤委員 そうではない。これはやっぱり知事も言ってもらわなければだめである。もちろん私も言うが、福井県も言ってもらわないと。私も反対するが、曖昧な基準で原発再稼働がどんどん進んでいくようでは非常にまずいと思う。そこはしっかり要望してもらわなければ困る。従来あった基準がなくなったわけであるから、おかしいと思わないか。
◯知 事 いろいろあるが、原子力規制委員会がいろいろ安全だとか、あるいは地震だとか、あるいはいろいろな基準をいつまでにつくると、そういう問題は一つ一つ課題が多い。委員も私も同じだと思うが、科学性ということに立脚しないとこの問題は解決できないわけであるから、そこをはっきりして、国民のために方向を出そうということを願っているということである。
◯佐藤委員 今朝の新聞でも報道されていたように、関西電力の大飯原子力発電所の3連動の否定は認めないと、きのうの原子力規制委員会で議論になった。県としては、部長が言ったとおりの見解だと思う。しかし、例えば以前は活断層は認定されてこなかったわけだから、知事が言われた科学性ということを考えれば、集団的な議論と県民への説明責任ということをきっちり求めるべきではないか。
◯知 事 さっき福島の問題が地震か津波かどちらでもいいというようなことをおっしゃったが、そうではなくて、どういう原因で何が問題なのかということを認識してこの問題に対処しなければならないと思う。