2011年7月8日 予算特別委員会
「県民の命と健康、県土の安全を守る行政について-原子力、社会
福祉を中心に-」
佐藤 正雄 委員
◯佐藤委員 今ほど恐竜博物館の話があった。今、日本では、原発事故の妖怪が放射能を伴って徘回している。これから高レベルの放射性廃棄物などを5,000年後あるいは1万年後ということで管理していかなければならないが、5,000年先、1万年先の人類が掘り出したらどうなるかというと、恐竜の化石みたいには喜べないなと思っている。
質問に入るが、今回の事故を見れば、世界で活断層の上や活断層の近傍に原発をつくっているような非科学的な国は日本だけである。もともとつくるときには活断層が見当たらないとかいうことでの技術水準があったと思うが、今の技術水準だと、下に活断層があるとか、近傍に活断層があるということがわかっていても、そのままつくる、動かすということをやっている。そういう国は、日本だけなのである。だから、地震大国、津波大国の日本で、原発の安全基準を決めるということが果たして可能なのかどうかということも今問われてくるわけである。だから、ここまでやれば安全だという基準が果たしてあるのかどうかということも、今回の事故を見れば、率直に思わざるを得ないし、世界はそんなことはやっていないのである。だから、新しい基準、知事も提案されているし、政府もいろいろとまた提案されるみたいであるが、これで大丈夫ということにはならない。新たな安全神話になるのではないかというように懸念するが、知事の見解を尋ねる。
◯知 事 世界には400ないし500基近くの原子力発電所があると思うが、それぞれの国あるいは地理的条件のもとで原子力発電所を設け、また安全に気を配っていると思う。福井県あるいは我が日本の問題について申し上げると、国の原子力安全委員会は、6月16日に今回の事故を受けて、安全設計審査指針、耐震設計審査指針などの見直しに着手したが、この見直しには相応の時間が要すると見られる。
そこで今、御指摘もあったが、県としては国が現在までに明らかになっている原因、そしてその対策のもとに、今できることをまず示し、これを新たな安全基準として設定し、事業者の対応を確認するよう求めている。
また、今後の事故の原因究明の進捗によって新たに得られた知見については、その都度、原子力発電所の安全対策に反映するシステムを構築するなど、安全性の向上に不断の努力を傾けるよう、国に強く要請をしているところである。
◯佐藤委員 余り私の質問には正面から答えてはいないと思う。私もいろいろこういう事故が起こって調べて見たが、昭和48年当時、衆議院の科学技術振興対策特別委員会でこういう議論がなされている。アメリカの研究成果として紹介されているのであるが、冷却剤がなくなった後、核燃料の燃料ピンの表面は10秒から15秒のうちに燃料の損傷が始まり、1分以内に被覆管、覆っている管は溶けて、燃料ピン自体も溶け始める。この最初の1分間のうちに緊急炉心冷却装置が効果的に働かなければ、全炉心、燃料、支持構造体は溶け始めて、原子炉容器の底に落ち込み、この段階で水を注入すると、被害は一層大きくなると書いてあるのである。
だから、今回の1号機がそうだったのだろうと思うが、この段階で水を入れると、被害は一層大きくなる。というのは、溶けたばかりの金属が水と激しく反応して、大量熱を発生し、蒸気と水素を大量に出して、格納容器を吹き飛ばす、そういう圧力になる。もし、格納容器が爆発しないとしても、どんどんどんどん下に溶けた燃料が落ち続ける。事故のこの段階においては、溶融をとめるのに十分な工学技術は全く存在しない、制御不可能なのであるということで、昭和48年当時であるが、国会でもこういうふうに、アメリカの研究成果であるけれども、報告されている。
だから、やはりこういうことが、当時はある意味では冷静に国会でも議論されていたのであるが、いつの間にか原発だということになって、そういうことがきちんと検証されないまま、核事故対策が検証されないまま、どんどんどんどんつくられてきたというのが実態だと思う。だから、もう一回知事に問うが、福島で起こったような過酷事故、これは福井で起こるかもしれないと、そういう危険が常につきまとうと、こういう危険と一緒に福井県民がずっと暮らしていてよいのか。
◯知 事 昭和48年の例を上げられたが、こういうことが実際アメリカの原発でどのように反映されているのかということを調べないとわからないが、ともあれいろいろな知見をその都度それぞれの国が、国際的な機関もあるけれども、反映しながら、人類がこれまで得てきた技術をいかに、安全を第一にしながら、エネルギー供給に活かしていくかと、こういう努力をこれまで積み重ねているということであり、その経過の中でさまざまな事故やいろいろなことが起きた時代があるけれども、これを教訓に具体的な対応していくというのがこれまでの歴史であり、これからもそのような必要があると思う。
◯佐藤委員 アメリカの研究成果は、昭和48年の国会で報告されたものであるが、実際はこういうことになってしまって手の打ちようがないということが当時の技術水準とか研究水準でも報告されているというである。だから、そういう過酷事故の危険が常に、常にというか、あり得る原子力発電所というのは、やはりこれは見直すという方向に踏み出すべきだと思う。
それで今、問題になっているのは、ストレステストの問題である。これは二つ問題があると思う。内容がどうなるかという問題と、もう一つは、どこがちゃんと責任を持ってこういうことをやるのかということである。知事は、内容の問題で、福井県の要望にもこたえないで、また別に新たなそういうテストを出してけしからんと、その内容もさっぱりわからないということでお怒りになっているが、もう一つは、どこがそういうことをきちんと客観的にやるかという問題があると思う。新聞報道だと、原子力安全委員会が原子力安全・保安院に言って、原子力安全・保安院がやるのだと、こういうことになっているみたいである。そうすると、これまで原発をやれ行けそれ行けと進めてきたところがやるわけであるから、全く信用ができないように思う。
知事もいろいろ意見はあると思うが、ストレステストをやるということは政府が決めたことであるから、これを中止してとはなかなか言えないと思う。やる以上は、原子力安全・保安院が中心になってやるのではなくて、もっと幅広く研究者も集めて、第三者の機関でこういうものをきちんとやっていくということを求めるべきではないか。
◯知 事 今回のストレステストというものが、まだどういうもので、どういう中身で、どういう期間を要するもので、そしてどういう評価をするものかよくわからないので、残念ながら十分にお答えできないというのが現状である。
◯佐藤委員 政府はやるということをもう発表している。十分答えられない、内容がわからないというのはわかっている。私が言っているのは、内容ともう一つはどこがやるのかという問題で尋ねている。原子力安全・保安院だけではだめではないかと思わないかということを尋ねている。
◯知 事 どのようなことをするかによって、だれがするかということがわかるわけであって、それを詰めないとわからないと思う。
◯佐藤委員 内容の問題とともに、どこがやるのかという体制の問題も厳しくチェックしていただきたいと思う。
次に、知事が言っている高経年問題である老朽化問題であるが、原発は使っているうちに中性子を浴びてもろくなってくる、壊れやすくなってくるという問題がある。通称脆性遷移温度と言われているが、これは福井県で古い、例えば敦賀1号、美浜1号でいうと、運転開始時は何度であって、現在は何度になっているのか。県内の原発で一番高くなっている原発はどこか尋ねる。
◯安全環境部長 原子炉容器の材料が中性子の照射を受けて、粘り強さというか、それが徐々に変化する脆性遷移温度であるが、敦賀1号機では、運転開始時にはマイナス12度、直近の電力業者の評価、平成15年と伺っているが、そこでは77度になっている。美浜1号機については、運転開始時ではマイナス50度、同じく直近の検査を行った平成13年の評価では81度になっている。県内の発電所でどれが一番高いかということであるが、今説明した美浜1号機の数値が一番高くなっている。
◯佐藤委員 今説明いただいたように、当初から見ると、敦賀1号機で80度以上、90度近く高くなっているし、美浜1号機に至っては130度ぐらい高くなっている。いざというときにECCSで冷たい水を入れたときに、ガラスの熱いコップが一気に冷たい水を入れるとぱりんと割れる現象と同じようなことが起こり得る危険があると専門家から指摘されているわけであるが、やはり老朽化原発の問題で、こういう欠点がどんどん拡大しているという原発は運転をやめてもらうことが必要ではないか。
◯安全環境部長 高経年化の炉については、これまで福井県としても国に強く安全対策を要望してきたところである。敦賀1号機については、私ども、40年を超える際に中間安全確認ということで特別な検査も要求している。国においても、このような高経年の炉についてはさまざまな安全対策を実施し、検査、評価していただく必要があると思っている。
◯佐藤委員 幾ら高経年対策をやられても、この温度を下げているわけではない。この温度はずっと上がってきているのである。要するに原子炉そのものが壊れやすく、だんだんもろくなってきているということをとめられてはいない。だから、そういう危ない原発はとめたらどうかと言っているのである。
◯安全環境部長 原子炉の運用に当たっては、脆性遷移温度を把握して、これの温度に下がらないように運転するという、こういう運転規定というか、そのように対応していると聞いている。
◯佐藤委員 いざというときには冷たい水を入れるであろう。そのときにぱりんといったらどうするのか。ふだんはいい。ふだんはそうやって温度管理に気をつけてやっていればいいけれども、いざというときに、冷たい水を入れなければいけないときに、こういう問題が焦点になるわけであるから、今の部長の答弁はおかしいのではないか。
◯安全環境部長 運転の温度について、その対応策というか、温度管理というものをしっかりして、緊急の場合の安全も加えるということである。
◯佐藤委員 答えられないということは、打つ手がないということなのである、はっきり言えば。部長を責めるわけではないが、これに打つ手がないのである。打つ手がないものは、やっぱり県民の安全のためにはとめることが必要である。交換するとか、改修するとか、そういうことはこれまでもいろいろ県も要求しているが、これは打つ手がないのである。打つ手がないものはとめるということを強く要求したいと思う。
次に、今回の福島事故と津波対策の問題が取り上げられたが、実は2005年、2006年の県議会で私も質問し、福井の原発について対応を求めていた。そのときの議事録を読んでみると、要するにちゃんと検証して、県民に対してちゃんと情報を公開してほしいということも要求していた。今回こういう事故が起こって、福井県も福井県内の電力事業者も慌てて対応しているという状況を見ると、2005年、2006年の県議会での質疑、これをまともに受けとめていなかったということか。
◯安全環境部長 その当時の質問については、津波の際の引き波で海水が取水できなくなるのではないかというお尋ねだったと思う。その際、国は、平成14年の土木学会の手法を用いて評価を行い、引き波のときでも海水の取水は可能と評価をしているが、当時、敦賀発電所ではさらなる対策工事を行って、海水の取水を確保するための工事を実施している。その後、平成18年9月に兵庫県南部地震等を契機として、地震安全性に対する耐震設計審査指針の改定が行われ、津波や地震に伴う考慮すべき事項として示されたところである。現在、国において、その評価の審議が進められていて、これまでに活断層及び地震の揺れであるとか、主要機器の評価は終了しているが、津波の評価はまだ完了していないので、県としてはこの評価が早期に完了するように国に求めていく。
◯佐藤委員 当時の委員会で私がどう言ったかというと、福井県というのは、先日の新聞報道によればということで、津波の対策とかそういうのをほとんどしていない県の一つになっており、もし仮にスマトラ沖の地震のときのように来た場合に、原子力発電所はどういう対応ができるのか、どんと押し波が来ても、引き波が来ても大丈夫なのかということを伺っていた。そういう点では、県としてもその時々、いろいろな世界的な問題とかあるいは国内の問題とか考えて県会議員はそれぞれ問題提起もするわけだから、やはり真剣に受けとめていただきたいと思う。
次に、今回、防災対策の問題がいろいろと議論になっているが、原発から放射性物質が放出される事態での住民避難の問題である。かつて福井県が国民保護のプランをつくったときに外注した資料を見ると、最悪の場合は80キロの住民避難が必要になるというような資料が提供されたと思っている。だから、厚生常任委員会でも議論があったし、知事もやりとりでいろいろ答えていたが、何か嶺南地域だけに限定した基礎調査をやるとか、そういうやり方では当然だめなわけで、福井県であるから、当然福井県内全域で、よその県まで調査するわけにはいかないが、そういう基礎調査はやはり福井県内全域にまたがってとやるべきだと思っている。
先ほどの松井議員と知事のやりとりを聞いていると、知事は、県下全域でやっていくものもあると答えているが、この県下全域でやっていくものもあるというのは、ただ単にモニタリングポストをつけるというだけでなく、そういう全県民的な避難が必要になる場合も含めて調査すると考えるということで認識してよろしいか。
◯危機対策監 先ほど、松井委員の質問に知事から答弁申し上げたとおりである。これからいろいろ議論を進めていく過程の中、県下全体について検討していかなければならない項目というのも考慮に入れている。その中にはモニタリングのあり方あるいは道路といったハードのあり方、あるいは食物や水の摂取制限であるとか、健康問題、いろんなファクターが考えられる。そこを今の段階では柔軟にとらえていかなければならないと考えており、そうした趣旨で答弁を申し上げたところである。
◯佐藤委員 先般の厚生常任委員会の議論も踏まえて、ぜひそのようにやっていただきたい。
◯危機対策監 今、佐藤委員が指摘された80キロの話であるが、平成16年に福井県が国民保護計画をつくる際、参考資料としたアメリカの飲食物摂取制限区域が80キロであり、これを一つのケーススタディーとしてコンサル側が提示したものである。県としてこれを認め、県の計画に反映させたものではないということをつけ加えさせていただく。
◯佐藤委員 県の計画がそうなっていないということはわかっている。しかし、実際に、例えば今回のような地震、津波とか、あるいはその想定はテロであるが、どちらにしても大量の放射性物質が飛び散ったときに、そうしたことが必要になるということであるから、そういうのも一つの参考だと思う。
今、福井県は消防の統合というか、広域化を進めているが、やっぱり今回の事態を踏まえると、これ自体も見直す必要があると思う。というのは、消防広域化というのは、結局資機材は落ちるのである。資機材の整備、表向き率は上がるが、一カ所一カ所の住民当たりの消防車とか、いろんな消防資機材の数は落ちるわけであり、この際、今回のような大震災、大津波、原発災害を踏まえて、県のそういう計画は改めて見直しも含めて考えるべきではないか。
◯危機対策監 広域化については、県の重要課題として推進計画の検討に着手しているところである。平成20年には消防管理者会において県内3消防本部体制に持っていこうということを全管理者が了承し、今後、広域化の実現に努力することで合意をしている。また、同じく平成20年であるが、嶺北北部、丹南及び嶺南の3消防本部体制を柱とする県の消防広域化推進計画を策定しているところである。御承知かと思うが、広域化の期限が平成24年度末に迫っている。また、消防の情勢も今回の大震災などで刻々と変化しているという事情もあるので、今後こうした合併のための準備協議会の設置等、強力に働きかけていく必要があると考えている。
◯佐藤委員 今回の災害を踏まえたら、そういう広域化は見直すべきではないか。要するに、小浜から消防署なくすとか、そんなことはだめだと思う、はっきり言えば。例えば、原発地域の隣接地域で消防署がなくなってしまうことはいけないと思う。
◯知 事 消防の機能を高めるために集中した方がよいのではないかと質問をされて、答弁したのではないか。
◯佐藤委員 逆なのである。広域化というのは、機能を高めるという名目であるが、実際は各地域の消防署がなくなっていく。実際、今、福井県にある台数よりも、いろんな資機材の整備台数は、率では名目的には上がっても、台数そのものは落としていくのである。そういうことはだめではないかということをお尋ねする。
◯危機対策監 今回、広域化を進めているけれども、この一つの目的は、消防力の基盤強化である。単に効率化、削減といった観点ではなくて、そうした基盤強化も目標にしているので、そうした観点も加えた広域化の推進というのに留意していきたいと考えている。
◯佐藤委員 結局、広域化で拠点がなくなるということは、いざというときにはそこに災害対応の拠点がなくなるということである。幾ら敦賀市に集めるとか、福井市に集めるとかいっても、それぞれの地域の拠点がなくなったら、いざというときの対応は遅くなるのである。今回のように、あっという間に事故が進展したときには対応できないである。そこは、今の計画をやめるとは言えないかもしれないけれども、真剣に今回の災害を踏まえて、見直していただきたいと思う。
次に、社会保障関係の問題に移る。以前の任期のときにも国民健康保険問題を繰り返し取り上げさせていただいていた。国民健康保険の保険証が、要するに役所から取られてしまった、病気だけれどもお医者さんにかかれない、私どもにそういう相談が結構実はあるのである。だから、実態を尋ねるが、国保税の滞納世帯に対する資格証明書、これは医療が実質上は受けられないというケースが多いのであるが、資格証明書とか短期保険証の発行の状況、そして資格証明書での医療機関を受診された件数、これはこの数年間、どのような状況かお尋ねする。
◯健康福祉部長 国民健康保険税の滞納世帯に対する被保険者資格証明書の発行状況であるが、平成19年度から平成21年度までの3年間を申し上げると、それぞれ平成19年度が2,885世帯、平成20年度が2,631世帯、平成21年度が2,284世帯と減少してきている。一方で、短期保険証というものがあるが、それは逆に5,241世帯、5,437世帯、5,530世帯という形で、発行数をふやしているという状況である。それと、被保険者のいわゆる資格証明書での医療機関の受診ということであるが、同じく3年間で、平成19年度が1,009件、平成20年度が898件、平成21年度が644件という状況である。
◯佐藤委員 このように、実際には滞納世帯もふえていく中で、短期証が発行されたり、資格証が発行されたり、そういうことになっているのだと思う。それで、実際、資格証明書で受診された件数が1,009件から644件に減っているが、実際にこの資格証明書では10割全額を窓口で払わなければいけないから、なかなか医療機関にかかれないという問題がある。
それで、実際どれぐらい大変なのかということで、いろいろ資料もいただいたが、1人当たりの税額というのが、平成21年度は8万4,565円で、そういう方の世帯の平均所得が幾らかというと、120万円である。だから、120万円で、例えば二人家族なら17万円ぐらいを国民健康保険税だけで払わなければいけないということで、結果的にどうなっているかというと、1世帯当たりの滞納額が平成17年度は7万5,000円だったのが、平成21年度は10万2,000円と、ぐっとふえてきているわけである。だから、やっぱりこの根底には、収入が少ない、収入が減っている世帯に対して税金だけはどんどんかけていくという矛盾がどうしても出ていると思う。見解を伺う。
◯健康福祉部長 確かに経済状況が厳しい中で、国保の対象者に所得の低い方が入ってきているという現状がある。そういう方々であっても、国民健康保険税については、滞納されても基本的にはそれぞれの市町の窓口あるいは担当と相談していただければ、すぐにそういう資格証明書ということにはならない。基本的には所得の範囲の中で分納を誓約していただくことなどをそういう方にはお願いしている。それと、国保税の条例には減免規定というのがある。本当に資力がない方とか、事情があって収入よりも資力がないと認められる方、あるいは医療がどうしても必要という方については、そういう減免規定もある。ただ、市町の担当と相談していただけない、あるいは何回相談に来ていただきたいと督促をしても来ない方がどうしてもいる。その段階に応じて、短期証であるとか、これは普通の保険証と基本的に同じであるが、資格証明書、これは10割払っていただき、後で7割返すという制度であるが、そういう方々については、国保財政には税と公費の投入があり、負担と公平のバランスもある。そういう事情をきめ細かくやるようにという、国からもあるいは県からも市町へ指導している状況の中で、短期証がふえて資格証明書が減っているという状況になっている。
◯佐藤委員 部長が言われるように、きめ細かく現場でもやっているかというと、現場は必ずしもそうではない。では尋ねるが、国保税の減免条例を持っている保険者の数、それから免除規定を持っている保険者の数、実際どれぐらい減免されているのか。
◯健康福祉部長 災害等があったときなど特別な事情がある場合に適用できる国保税の減免については、平成22年度末現在で、全市町が条例に規定している。その中で、具体的に保険税を全額免除という規定まで持っているところは10市町で、あとは減免である。平成19年度からの3年間の減免世帯数と減免額を申し上げると、平成19年度が43世帯で約2,000万円、平成20年度が332世帯で約1億1,000万円、平成21年度が364世帯で約1億2,000万円という状況である。
◯佐藤委員 そのように、減免規定を持って活用されているにもかかわらず、実際には滞納世帯、滞納額がふえ続けているというのが実態なのである。だから、主には市町であるけれども、行政の機能として市民生活の実態に合っていないという問題があると思う。実際その背景で何がやられているかというと、強権的な差し押さえである。これもお聞きしたら、平成17年度は488件、平成21年度は1,396件ということで、そういうように強権的な徴税行政をやって、ある意味では市民をおどして、やっているわけである。
そもそも年収が、福井市でいうと100万円未満の世帯が2分の1なのである。100万円未満の世帯が2分の1のところに、二人子供がいるところに20万円も税金をかけて、まともに払えるはずがないのである。やっぱりそういうことは見直さなければいけないと思う。見直しは国の責任が大きいのであるが、ここは県議会であるから、県として役割を果たしてほしい。県としてはこれを支援するということで、県独自の財政支援というものをぜひ考えていただきたい。
これは市がやることだ、町がやることだということで、市町任せではなく、県として独自に考えてほしい。福井県としては、独自のそういう財政投入は1円もしていないわけであるから、やはりそういう財政投入はやるべきである。そして、県民の生活、市民の生活を支えるべきだというように思う。
◯健康福祉部長 県独自の国保への助成は確かに行っていないが、今現在も県からは国保の会計へ毎年法令に基づいて40億円を超える財政支援をしている。これは高額な医療費がかかった場合であるとか、それこそ今、委員が御指摘の低所得者の保険料の軽減の財源にするためにやっていて、この金額もここ毎年数億円ぐらいずつ増額している状況にある。
そして、県独自でのそういう国保財政の支援というのは、全都道府県調べても、現状のところ、やっていない。ただ、先ほども申し上げたように、国保のいわゆる加入者の構造的な問題というのは、全国的な状況である。今、国では社会保障と税の一体改革の中で、保険料の軽減の部分についても議論されているので、そういう議論も見ながら、そういう制度ができるように県としても要望していきたいと思っている。
◯佐藤委員 全都道府県がやっていないということはない。やっている都道府県もあるはずである。だから、やはりきちんと県として県民の命と健康に責任を持っていただくことを再度要望して終わる。
「県民の命と健康、県土の安全を守る行政について-原子力、社会
福祉を中心に-」
佐藤 正雄 委員
◯佐藤委員 今ほど恐竜博物館の話があった。今、日本では、原発事故の妖怪が放射能を伴って徘回している。これから高レベルの放射性廃棄物などを5,000年後あるいは1万年後ということで管理していかなければならないが、5,000年先、1万年先の人類が掘り出したらどうなるかというと、恐竜の化石みたいには喜べないなと思っている。
質問に入るが、今回の事故を見れば、世界で活断層の上や活断層の近傍に原発をつくっているような非科学的な国は日本だけである。もともとつくるときには活断層が見当たらないとかいうことでの技術水準があったと思うが、今の技術水準だと、下に活断層があるとか、近傍に活断層があるということがわかっていても、そのままつくる、動かすということをやっている。そういう国は、日本だけなのである。だから、地震大国、津波大国の日本で、原発の安全基準を決めるということが果たして可能なのかどうかということも今問われてくるわけである。だから、ここまでやれば安全だという基準が果たしてあるのかどうかということも、今回の事故を見れば、率直に思わざるを得ないし、世界はそんなことはやっていないのである。だから、新しい基準、知事も提案されているし、政府もいろいろとまた提案されるみたいであるが、これで大丈夫ということにはならない。新たな安全神話になるのではないかというように懸念するが、知事の見解を尋ねる。
◯知 事 世界には400ないし500基近くの原子力発電所があると思うが、それぞれの国あるいは地理的条件のもとで原子力発電所を設け、また安全に気を配っていると思う。福井県あるいは我が日本の問題について申し上げると、国の原子力安全委員会は、6月16日に今回の事故を受けて、安全設計審査指針、耐震設計審査指針などの見直しに着手したが、この見直しには相応の時間が要すると見られる。
そこで今、御指摘もあったが、県としては国が現在までに明らかになっている原因、そしてその対策のもとに、今できることをまず示し、これを新たな安全基準として設定し、事業者の対応を確認するよう求めている。
また、今後の事故の原因究明の進捗によって新たに得られた知見については、その都度、原子力発電所の安全対策に反映するシステムを構築するなど、安全性の向上に不断の努力を傾けるよう、国に強く要請をしているところである。
◯佐藤委員 余り私の質問には正面から答えてはいないと思う。私もいろいろこういう事故が起こって調べて見たが、昭和48年当時、衆議院の科学技術振興対策特別委員会でこういう議論がなされている。アメリカの研究成果として紹介されているのであるが、冷却剤がなくなった後、核燃料の燃料ピンの表面は10秒から15秒のうちに燃料の損傷が始まり、1分以内に被覆管、覆っている管は溶けて、燃料ピン自体も溶け始める。この最初の1分間のうちに緊急炉心冷却装置が効果的に働かなければ、全炉心、燃料、支持構造体は溶け始めて、原子炉容器の底に落ち込み、この段階で水を注入すると、被害は一層大きくなると書いてあるのである。
だから、今回の1号機がそうだったのだろうと思うが、この段階で水を入れると、被害は一層大きくなる。というのは、溶けたばかりの金属が水と激しく反応して、大量熱を発生し、蒸気と水素を大量に出して、格納容器を吹き飛ばす、そういう圧力になる。もし、格納容器が爆発しないとしても、どんどんどんどん下に溶けた燃料が落ち続ける。事故のこの段階においては、溶融をとめるのに十分な工学技術は全く存在しない、制御不可能なのであるということで、昭和48年当時であるが、国会でもこういうふうに、アメリカの研究成果であるけれども、報告されている。
だから、やはりこういうことが、当時はある意味では冷静に国会でも議論されていたのであるが、いつの間にか原発だということになって、そういうことがきちんと検証されないまま、核事故対策が検証されないまま、どんどんどんどんつくられてきたというのが実態だと思う。だから、もう一回知事に問うが、福島で起こったような過酷事故、これは福井で起こるかもしれないと、そういう危険が常につきまとうと、こういう危険と一緒に福井県民がずっと暮らしていてよいのか。
◯知 事 昭和48年の例を上げられたが、こういうことが実際アメリカの原発でどのように反映されているのかということを調べないとわからないが、ともあれいろいろな知見をその都度それぞれの国が、国際的な機関もあるけれども、反映しながら、人類がこれまで得てきた技術をいかに、安全を第一にしながら、エネルギー供給に活かしていくかと、こういう努力をこれまで積み重ねているということであり、その経過の中でさまざまな事故やいろいろなことが起きた時代があるけれども、これを教訓に具体的な対応していくというのがこれまでの歴史であり、これからもそのような必要があると思う。
◯佐藤委員 アメリカの研究成果は、昭和48年の国会で報告されたものであるが、実際はこういうことになってしまって手の打ちようがないということが当時の技術水準とか研究水準でも報告されているというである。だから、そういう過酷事故の危険が常に、常にというか、あり得る原子力発電所というのは、やはりこれは見直すという方向に踏み出すべきだと思う。
それで今、問題になっているのは、ストレステストの問題である。これは二つ問題があると思う。内容がどうなるかという問題と、もう一つは、どこがちゃんと責任を持ってこういうことをやるのかということである。知事は、内容の問題で、福井県の要望にもこたえないで、また別に新たなそういうテストを出してけしからんと、その内容もさっぱりわからないということでお怒りになっているが、もう一つは、どこがそういうことをきちんと客観的にやるかという問題があると思う。新聞報道だと、原子力安全委員会が原子力安全・保安院に言って、原子力安全・保安院がやるのだと、こういうことになっているみたいである。そうすると、これまで原発をやれ行けそれ行けと進めてきたところがやるわけであるから、全く信用ができないように思う。
知事もいろいろ意見はあると思うが、ストレステストをやるということは政府が決めたことであるから、これを中止してとはなかなか言えないと思う。やる以上は、原子力安全・保安院が中心になってやるのではなくて、もっと幅広く研究者も集めて、第三者の機関でこういうものをきちんとやっていくということを求めるべきではないか。
◯知 事 今回のストレステストというものが、まだどういうもので、どういう中身で、どういう期間を要するもので、そしてどういう評価をするものかよくわからないので、残念ながら十分にお答えできないというのが現状である。
◯佐藤委員 政府はやるということをもう発表している。十分答えられない、内容がわからないというのはわかっている。私が言っているのは、内容ともう一つはどこがやるのかという問題で尋ねている。原子力安全・保安院だけではだめではないかと思わないかということを尋ねている。
◯知 事 どのようなことをするかによって、だれがするかということがわかるわけであって、それを詰めないとわからないと思う。
◯佐藤委員 内容の問題とともに、どこがやるのかという体制の問題も厳しくチェックしていただきたいと思う。
次に、知事が言っている高経年問題である老朽化問題であるが、原発は使っているうちに中性子を浴びてもろくなってくる、壊れやすくなってくるという問題がある。通称脆性遷移温度と言われているが、これは福井県で古い、例えば敦賀1号、美浜1号でいうと、運転開始時は何度であって、現在は何度になっているのか。県内の原発で一番高くなっている原発はどこか尋ねる。
◯安全環境部長 原子炉容器の材料が中性子の照射を受けて、粘り強さというか、それが徐々に変化する脆性遷移温度であるが、敦賀1号機では、運転開始時にはマイナス12度、直近の電力業者の評価、平成15年と伺っているが、そこでは77度になっている。美浜1号機については、運転開始時ではマイナス50度、同じく直近の検査を行った平成13年の評価では81度になっている。県内の発電所でどれが一番高いかということであるが、今説明した美浜1号機の数値が一番高くなっている。
◯佐藤委員 今説明いただいたように、当初から見ると、敦賀1号機で80度以上、90度近く高くなっているし、美浜1号機に至っては130度ぐらい高くなっている。いざというときにECCSで冷たい水を入れたときに、ガラスの熱いコップが一気に冷たい水を入れるとぱりんと割れる現象と同じようなことが起こり得る危険があると専門家から指摘されているわけであるが、やはり老朽化原発の問題で、こういう欠点がどんどん拡大しているという原発は運転をやめてもらうことが必要ではないか。
◯安全環境部長 高経年化の炉については、これまで福井県としても国に強く安全対策を要望してきたところである。敦賀1号機については、私ども、40年を超える際に中間安全確認ということで特別な検査も要求している。国においても、このような高経年の炉についてはさまざまな安全対策を実施し、検査、評価していただく必要があると思っている。
◯佐藤委員 幾ら高経年対策をやられても、この温度を下げているわけではない。この温度はずっと上がってきているのである。要するに原子炉そのものが壊れやすく、だんだんもろくなってきているということをとめられてはいない。だから、そういう危ない原発はとめたらどうかと言っているのである。
◯安全環境部長 原子炉の運用に当たっては、脆性遷移温度を把握して、これの温度に下がらないように運転するという、こういう運転規定というか、そのように対応していると聞いている。
◯佐藤委員 いざというときには冷たい水を入れるであろう。そのときにぱりんといったらどうするのか。ふだんはいい。ふだんはそうやって温度管理に気をつけてやっていればいいけれども、いざというときに、冷たい水を入れなければいけないときに、こういう問題が焦点になるわけであるから、今の部長の答弁はおかしいのではないか。
◯安全環境部長 運転の温度について、その対応策というか、温度管理というものをしっかりして、緊急の場合の安全も加えるということである。
◯佐藤委員 答えられないということは、打つ手がないということなのである、はっきり言えば。部長を責めるわけではないが、これに打つ手がないのである。打つ手がないものは、やっぱり県民の安全のためにはとめることが必要である。交換するとか、改修するとか、そういうことはこれまでもいろいろ県も要求しているが、これは打つ手がないのである。打つ手がないものはとめるということを強く要求したいと思う。
次に、今回の福島事故と津波対策の問題が取り上げられたが、実は2005年、2006年の県議会で私も質問し、福井の原発について対応を求めていた。そのときの議事録を読んでみると、要するにちゃんと検証して、県民に対してちゃんと情報を公開してほしいということも要求していた。今回こういう事故が起こって、福井県も福井県内の電力事業者も慌てて対応しているという状況を見ると、2005年、2006年の県議会での質疑、これをまともに受けとめていなかったということか。
◯安全環境部長 その当時の質問については、津波の際の引き波で海水が取水できなくなるのではないかというお尋ねだったと思う。その際、国は、平成14年の土木学会の手法を用いて評価を行い、引き波のときでも海水の取水は可能と評価をしているが、当時、敦賀発電所ではさらなる対策工事を行って、海水の取水を確保するための工事を実施している。その後、平成18年9月に兵庫県南部地震等を契機として、地震安全性に対する耐震設計審査指針の改定が行われ、津波や地震に伴う考慮すべき事項として示されたところである。現在、国において、その評価の審議が進められていて、これまでに活断層及び地震の揺れであるとか、主要機器の評価は終了しているが、津波の評価はまだ完了していないので、県としてはこの評価が早期に完了するように国に求めていく。
◯佐藤委員 当時の委員会で私がどう言ったかというと、福井県というのは、先日の新聞報道によればということで、津波の対策とかそういうのをほとんどしていない県の一つになっており、もし仮にスマトラ沖の地震のときのように来た場合に、原子力発電所はどういう対応ができるのか、どんと押し波が来ても、引き波が来ても大丈夫なのかということを伺っていた。そういう点では、県としてもその時々、いろいろな世界的な問題とかあるいは国内の問題とか考えて県会議員はそれぞれ問題提起もするわけだから、やはり真剣に受けとめていただきたいと思う。
次に、今回、防災対策の問題がいろいろと議論になっているが、原発から放射性物質が放出される事態での住民避難の問題である。かつて福井県が国民保護のプランをつくったときに外注した資料を見ると、最悪の場合は80キロの住民避難が必要になるというような資料が提供されたと思っている。だから、厚生常任委員会でも議論があったし、知事もやりとりでいろいろ答えていたが、何か嶺南地域だけに限定した基礎調査をやるとか、そういうやり方では当然だめなわけで、福井県であるから、当然福井県内全域で、よその県まで調査するわけにはいかないが、そういう基礎調査はやはり福井県内全域にまたがってとやるべきだと思っている。
先ほどの松井議員と知事のやりとりを聞いていると、知事は、県下全域でやっていくものもあると答えているが、この県下全域でやっていくものもあるというのは、ただ単にモニタリングポストをつけるというだけでなく、そういう全県民的な避難が必要になる場合も含めて調査すると考えるということで認識してよろしいか。
◯危機対策監 先ほど、松井委員の質問に知事から答弁申し上げたとおりである。これからいろいろ議論を進めていく過程の中、県下全体について検討していかなければならない項目というのも考慮に入れている。その中にはモニタリングのあり方あるいは道路といったハードのあり方、あるいは食物や水の摂取制限であるとか、健康問題、いろんなファクターが考えられる。そこを今の段階では柔軟にとらえていかなければならないと考えており、そうした趣旨で答弁を申し上げたところである。
◯佐藤委員 先般の厚生常任委員会の議論も踏まえて、ぜひそのようにやっていただきたい。
◯危機対策監 今、佐藤委員が指摘された80キロの話であるが、平成16年に福井県が国民保護計画をつくる際、参考資料としたアメリカの飲食物摂取制限区域が80キロであり、これを一つのケーススタディーとしてコンサル側が提示したものである。県としてこれを認め、県の計画に反映させたものではないということをつけ加えさせていただく。
◯佐藤委員 県の計画がそうなっていないということはわかっている。しかし、実際に、例えば今回のような地震、津波とか、あるいはその想定はテロであるが、どちらにしても大量の放射性物質が飛び散ったときに、そうしたことが必要になるということであるから、そういうのも一つの参考だと思う。
今、福井県は消防の統合というか、広域化を進めているが、やっぱり今回の事態を踏まえると、これ自体も見直す必要があると思う。というのは、消防広域化というのは、結局資機材は落ちるのである。資機材の整備、表向き率は上がるが、一カ所一カ所の住民当たりの消防車とか、いろんな消防資機材の数は落ちるわけであり、この際、今回のような大震災、大津波、原発災害を踏まえて、県のそういう計画は改めて見直しも含めて考えるべきではないか。
◯危機対策監 広域化については、県の重要課題として推進計画の検討に着手しているところである。平成20年には消防管理者会において県内3消防本部体制に持っていこうということを全管理者が了承し、今後、広域化の実現に努力することで合意をしている。また、同じく平成20年であるが、嶺北北部、丹南及び嶺南の3消防本部体制を柱とする県の消防広域化推進計画を策定しているところである。御承知かと思うが、広域化の期限が平成24年度末に迫っている。また、消防の情勢も今回の大震災などで刻々と変化しているという事情もあるので、今後こうした合併のための準備協議会の設置等、強力に働きかけていく必要があると考えている。
◯佐藤委員 今回の災害を踏まえたら、そういう広域化は見直すべきではないか。要するに、小浜から消防署なくすとか、そんなことはだめだと思う、はっきり言えば。例えば、原発地域の隣接地域で消防署がなくなってしまうことはいけないと思う。
◯知 事 消防の機能を高めるために集中した方がよいのではないかと質問をされて、答弁したのではないか。
◯佐藤委員 逆なのである。広域化というのは、機能を高めるという名目であるが、実際は各地域の消防署がなくなっていく。実際、今、福井県にある台数よりも、いろんな資機材の整備台数は、率では名目的には上がっても、台数そのものは落としていくのである。そういうことはだめではないかということをお尋ねする。
◯危機対策監 今回、広域化を進めているけれども、この一つの目的は、消防力の基盤強化である。単に効率化、削減といった観点ではなくて、そうした基盤強化も目標にしているので、そうした観点も加えた広域化の推進というのに留意していきたいと考えている。
◯佐藤委員 結局、広域化で拠点がなくなるということは、いざというときにはそこに災害対応の拠点がなくなるということである。幾ら敦賀市に集めるとか、福井市に集めるとかいっても、それぞれの地域の拠点がなくなったら、いざというときの対応は遅くなるのである。今回のように、あっという間に事故が進展したときには対応できないである。そこは、今の計画をやめるとは言えないかもしれないけれども、真剣に今回の災害を踏まえて、見直していただきたいと思う。
次に、社会保障関係の問題に移る。以前の任期のときにも国民健康保険問題を繰り返し取り上げさせていただいていた。国民健康保険の保険証が、要するに役所から取られてしまった、病気だけれどもお医者さんにかかれない、私どもにそういう相談が結構実はあるのである。だから、実態を尋ねるが、国保税の滞納世帯に対する資格証明書、これは医療が実質上は受けられないというケースが多いのであるが、資格証明書とか短期保険証の発行の状況、そして資格証明書での医療機関を受診された件数、これはこの数年間、どのような状況かお尋ねする。
◯健康福祉部長 国民健康保険税の滞納世帯に対する被保険者資格証明書の発行状況であるが、平成19年度から平成21年度までの3年間を申し上げると、それぞれ平成19年度が2,885世帯、平成20年度が2,631世帯、平成21年度が2,284世帯と減少してきている。一方で、短期保険証というものがあるが、それは逆に5,241世帯、5,437世帯、5,530世帯という形で、発行数をふやしているという状況である。それと、被保険者のいわゆる資格証明書での医療機関の受診ということであるが、同じく3年間で、平成19年度が1,009件、平成20年度が898件、平成21年度が644件という状況である。
◯佐藤委員 このように、実際には滞納世帯もふえていく中で、短期証が発行されたり、資格証が発行されたり、そういうことになっているのだと思う。それで、実際、資格証明書で受診された件数が1,009件から644件に減っているが、実際にこの資格証明書では10割全額を窓口で払わなければいけないから、なかなか医療機関にかかれないという問題がある。
それで、実際どれぐらい大変なのかということで、いろいろ資料もいただいたが、1人当たりの税額というのが、平成21年度は8万4,565円で、そういう方の世帯の平均所得が幾らかというと、120万円である。だから、120万円で、例えば二人家族なら17万円ぐらいを国民健康保険税だけで払わなければいけないということで、結果的にどうなっているかというと、1世帯当たりの滞納額が平成17年度は7万5,000円だったのが、平成21年度は10万2,000円と、ぐっとふえてきているわけである。だから、やっぱりこの根底には、収入が少ない、収入が減っている世帯に対して税金だけはどんどんかけていくという矛盾がどうしても出ていると思う。見解を伺う。
◯健康福祉部長 確かに経済状況が厳しい中で、国保の対象者に所得の低い方が入ってきているという現状がある。そういう方々であっても、国民健康保険税については、滞納されても基本的にはそれぞれの市町の窓口あるいは担当と相談していただければ、すぐにそういう資格証明書ということにはならない。基本的には所得の範囲の中で分納を誓約していただくことなどをそういう方にはお願いしている。それと、国保税の条例には減免規定というのがある。本当に資力がない方とか、事情があって収入よりも資力がないと認められる方、あるいは医療がどうしても必要という方については、そういう減免規定もある。ただ、市町の担当と相談していただけない、あるいは何回相談に来ていただきたいと督促をしても来ない方がどうしてもいる。その段階に応じて、短期証であるとか、これは普通の保険証と基本的に同じであるが、資格証明書、これは10割払っていただき、後で7割返すという制度であるが、そういう方々については、国保財政には税と公費の投入があり、負担と公平のバランスもある。そういう事情をきめ細かくやるようにという、国からもあるいは県からも市町へ指導している状況の中で、短期証がふえて資格証明書が減っているという状況になっている。
◯佐藤委員 部長が言われるように、きめ細かく現場でもやっているかというと、現場は必ずしもそうではない。では尋ねるが、国保税の減免条例を持っている保険者の数、それから免除規定を持っている保険者の数、実際どれぐらい減免されているのか。
◯健康福祉部長 災害等があったときなど特別な事情がある場合に適用できる国保税の減免については、平成22年度末現在で、全市町が条例に規定している。その中で、具体的に保険税を全額免除という規定まで持っているところは10市町で、あとは減免である。平成19年度からの3年間の減免世帯数と減免額を申し上げると、平成19年度が43世帯で約2,000万円、平成20年度が332世帯で約1億1,000万円、平成21年度が364世帯で約1億2,000万円という状況である。
◯佐藤委員 そのように、減免規定を持って活用されているにもかかわらず、実際には滞納世帯、滞納額がふえ続けているというのが実態なのである。だから、主には市町であるけれども、行政の機能として市民生活の実態に合っていないという問題があると思う。実際その背景で何がやられているかというと、強権的な差し押さえである。これもお聞きしたら、平成17年度は488件、平成21年度は1,396件ということで、そういうように強権的な徴税行政をやって、ある意味では市民をおどして、やっているわけである。
そもそも年収が、福井市でいうと100万円未満の世帯が2分の1なのである。100万円未満の世帯が2分の1のところに、二人子供がいるところに20万円も税金をかけて、まともに払えるはずがないのである。やっぱりそういうことは見直さなければいけないと思う。見直しは国の責任が大きいのであるが、ここは県議会であるから、県として役割を果たしてほしい。県としてはこれを支援するということで、県独自の財政支援というものをぜひ考えていただきたい。
これは市がやることだ、町がやることだということで、市町任せではなく、県として独自に考えてほしい。福井県としては、独自のそういう財政投入は1円もしていないわけであるから、やはりそういう財政投入はやるべきである。そして、県民の生活、市民の生活を支えるべきだというように思う。
◯健康福祉部長 県独自の国保への助成は確かに行っていないが、今現在も県からは国保の会計へ毎年法令に基づいて40億円を超える財政支援をしている。これは高額な医療費がかかった場合であるとか、それこそ今、委員が御指摘の低所得者の保険料の軽減の財源にするためにやっていて、この金額もここ毎年数億円ぐらいずつ増額している状況にある。
そして、県独自でのそういう国保財政の支援というのは、全都道府県調べても、現状のところ、やっていない。ただ、先ほども申し上げたように、国保のいわゆる加入者の構造的な問題というのは、全国的な状況である。今、国では社会保障と税の一体改革の中で、保険料の軽減の部分についても議論されているので、そういう議論も見ながら、そういう制度ができるように県としても要望していきたいと思っている。
◯佐藤委員 全都道府県がやっていないということはない。やっている都道府県もあるはずである。だから、やはりきちんと県として県民の命と健康に責任を持っていただくことを再度要望して終わる。