monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

「瀬際」という単語

2017年06月02日 | 日本国語大辞典-さ行

 「瀬際(せぎわ)」という単語は、日本国語大辞典・第二版には立項していませんが、以下の用例があります。

なはしろにせきとるかはのあたりとて道も瀬きはの春のやま水
(38・文保百首、藤原為実、春二十首、2315)
『新編国歌大観 4私家集編2、定数歌編 歌集』角川書店、1986年、528ページ

であるから、必ず流れを遡る若鮎の群れには大きな鱒がつきまとい、瀬際の揉(も)み合わせに鱒が跳躍するところには必ず若鮎の大群がいた。
(利根川の鮎)
『垢石釣り紀行(つり人ノベルズ)』佐藤垢石、つり人社、1992年、45ページ

殆んど脱衣場や休憩室といふべき場所もないので、晴天の日は人は多く渓の石の頭に衣服を脱ぎ、飛沫のかゝる瀬際に立つて浴後の赤い素肌を晒すのである。
(「追憶と眼前の風景」)
『みなかみ紀行』若山牧水、書房マウンテン、1924年、99ページ

大型のキスはなぜかカケアガリ際とか瀬際などにいることが多い。これはすぐに自分の身を隠すことができるか、または、瀬際ではべルヌーイの定理という物理現象にも似たような現象が起きて、水流の速さが瀬際だけ少し速く変わり、エサなどが多くいるのかもしれない。
(第5章・実戦サビキの実態)
『鍛治泰之の大ギス投げ釣り』鍛治泰之、文芸社、2006年、95ページ


「代掻く」用例

2017年05月22日 | 日本国語大辞典-さ行

 「田植え前の田の代掻きをする」という意味の「代(しろ)掻く」という単語の用例は日本国語大辞典・第二版では、『杉風宛芭蕉書簡』元祿七年〔1694年〕閏五月二一日からの例が早いのですが、600年近くさかのぼる用例があります。

こなぎ摘(つむ)沢田の代(しろ)はかきてけりいそぎて植ゑよ室(むろ)のはやわせ
(夏十五首、早苗、407)
『和歌文学大系15 堀河院百首和歌』明治書院、平成14年、79ページ


「下枝」用例

2017年03月04日 | 日本国語大辞典-さ行

 「下枝(したえ)」という語の早い用例として、日本国語大辞典・第二版は右京大夫集(13C前)の和歌を挙げていますが、もっとさかのぼる用例があります。

いもかため-いつれのうめを-たをるとて-したえのつゆに-ぬれにけるかな
(家持集・18)~日文研HPより

さきてちる-うめかしたえに-おくつゆの-けぬへくいもを-こふるころかな
(柿本集・509)~日文研HPより


「柴間」という単語

2016年12月27日 | 日本国語大辞典-さ行

 「柴間(しばま)」という単語は日本国語大辞典・第二版には立項していませんが、以下のように用例が複数あります。語釈としては、「柴の間。特に「伏柴(ふししば)」「ふしづけ」の隙間。」という意味です。
 俳句に用例があるかどうかは探していませんが、冬の季語ということになるかと思います。

泉川水のみわたのふしづけに柴間の氷る冬は来にけり
(冬十五首、初冬、887)
『和歌文学大系15 堀河院百首和歌』明治書院、2002年、164ページ

かたをかの-しはまにましる-しのすすき-しもかれてこそ-みるへかりけれ
(新撰和歌六帖・01931・家良)~日文研HPより

田家雨 頼氏
いねかての田つらの庵のしはまより夜の雨さへもりあかしつつ
(宝治百首・3732)~日文研HPより

冬深み六田のよどにふしつけししばまの水にをしぞなくなる
岩がねのしばまをわくる山河のうはなみこほる冬のあけぼの
(夫木和歌抄)
『校註国歌大系 21巻』国民図書、1930年、502ページ、511ページ


「舌」用例

2016年06月10日 | 日本国語大辞典-さ行

 「舌」という単語の「②舌状をしているものの総称。」という語釈の用例は、日本国語大辞典では、「応永本論語抄」(1420年)の例を早い用例として載せていますが、100年以上さかのぼる用例があります。

二日△乙酉。天晴△工等ヲ召シ、宮寺ニ於テ、御戸ヲ開カルルノ処ニ、鎖ノ舌折ルルト〈云云〉。
(吾妻鏡【建長四年(2)五月二日】条~国文学研究資料館のデータベースより)