monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

「瀬際」という単語

2016年06月04日 | 日本国語大辞典-さ行

 「瀬際(せぎわ)」という単語は、日本国語大辞典・第二版には立項していませんが、以下の用例があります。

であるから、必ず流れを遡る若鮎の群れには大きな鱒がつきまとい、瀬際の揉(も)み合わせに鱒が跳躍するところには必ず若鮎の大群がいた。
(利根川の鮎)
『垢石釣り紀行(つり人ノベルズ)』佐藤垢石、つり人社、1992年

殆んど脱衣場や休憩室といふべき場所もないので、晴天の日は人は多く渓の石の頭に衣服を脱ぎ、飛沫のかゝる瀬際に立つて浴後の赤い素肌を晒すのである。
(「追憶と眼前の風景」)
『みなかみ紀行』若山牧水、書房マウンテン、1924年、99ページ


「潮葦」用例

2016年06月03日 | 日本国語大辞典-さ行

 「潮葦」という単語の早い用例として日本国語大辞典では1128年の歌合の和歌用例をあげてありますが、100年以上さかのぼる用例があります。

しほあしにまじれるくさのしりくさのみな人しりぬわがしたおもひは
(4・古今和歌六帖、第六、つれなしぐさ、3593)
『編国歌大観 第二巻 私撰集編 歌集』1984年、242ページ


「関を据える」用例

2016年04月08日 | 日本国語大辞典-さ行

 「関を据える」という用語の語釈「関所を置く。関所をつくる。」の用例は、日本国語大辞典・第二版では、『新勅撰和歌集』(1235年)恋二・七五五からの例が早いのですが、さらに、284年さかのぼる用例があります。

寛平のみかど、御髪おろさせたまうてのころ、たゞ御帳のめぐりにのみ人は侍はせ給うて、近くも召し寄せざりければ、書きて御帳に結びつけゝる
たちよらば影踏むばかり近けれどたれか勿来の関をすゑけん
(巻第十・恋二、683、小八条御息所)
『後撰和歌集』(岩波文庫・松田武夫校訂、1945年、112~113ページ)


「澄み透る」用例

2015年12月26日 | 日本国語大辞典-さ行

 「澄み透る」という単語の用例は、日本国語大辞典・第二版では、『四河入海』(17C前)からの例が早いのですが、300年ほどさかのぼる用例があります。

庭の池のそこのまさごにやどるまですみとほりたる月のかげかな
(沙弥蓮愉集、623)
『新編国歌大観7 私家集編3 歌集』角川書店、1989年、512ページ

空たかくすみとおる月は影さえてしばふにしろき霜の明けがた
(巻第八・冬、767、実明女)
岩佐美代子(『風雅和歌集全注釈・上巻(笠間注釈叢刊34)』笠間書院、2002年、534ページ


「ささ川」という単語

2015年12月25日 | 日本国語大辞典-さ行

 地名でも苗字でもない「ささ川」という単語がありますが、日本国語大辞典・第二版には項目がありません。漢字は「笹川」をあててもよいのですが、地名・苗字ではないことを示したいなら、「細小川」でしょうか。
 見つけた用例を以下に古い順にあげます。

朝ぼらけ霜さへとづるささ川の氷ふみわけかよふさと人
(34・洞院摂政家百首、氷五首、正三位家隆、826)
『新編国歌大観 4』1986年、角川書店、358ページ

水の上に朝霜むすぶささ川の一夜のほどにこほる冬かな
(10・草根集、河氷、5450)
『新編国歌大観 8』1990年、角川書店、173ページ

さゝ川に絵筆を洗ふ絵師ありて薄う流るゝ紅(べに)美しき
(「我が歩める道」)
『三木露風全集 第2巻』三木露風全集刊行会、1973年、161ページ