髪は生きてなまなまとひとみを持ち、もえさかる花の歩道に遊惰の影絵(シルーエツト)をきざみこむ。ふとり肉(じし)の哄笑は、銀色の夜を色どつて、おごそかに此世のなやみをそよがせ、なびかせ、あざむかせ、さては悔恨の毒酒のしづくを恋ひしたはせる。とげのなかに見出でる紫玉の夢は追ふにしたがつてにげさるこの悲しさ。
(『限定版 大手拓次全集 別巻』(白鳳社、1971年、446p)より「季節題詞」)
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