稲荷祭見しに、傍らなる車の粽(ちまき)など取り入れて苦しきを、まろが車に取り入れしと、公信の少将、蔵人の少将言ひけると聞きしを、一日祭を見るとて車の前を過ぐる程に、木綿(ゆふ)かけて取り入れさせし
稲荷にも言はると聞きしなき事を今日は糺(ただす)の神にまかする
返し
何事と知らぬ人には木綿襷(ゆふだすき)なにか糺(ただす)の神にかくらん
と言ひたれば、幣(みてぐら)のやうに、紙をして書きてやる
神かけて君はあらがふ誰かさはよるべに溜(たま)るみづと言ひける
(和泉式部集~岩波文庫)
(建仁二年四月)十七日。天陰り、雨灑ぐ。稲荷の祭を見んがため、小児等桟敷に向はしむ。予、大臣殿に参じて退下す。今日、三位中将殿行始め。右中将御共に参ずと云々。
(『訓読明月記』今川文雄訳、河出書房新社)
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