忍びたるところにありては、夏こそをかしけれ。(略)
また、冬の夜。
いみじう寒きに、埋もれ臥してきくに、鐘の音の、ただものの底なるやうにきこゆる、いとをかし。
(枕草子~新潮日本古典集成)
冬御歌の中に 章義門院
床さえてねられぬ冬の夜をなかみまたるゝ鐘の音そつれなき
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)
冬の夜の月は、人に違ひてめでたまふ御心なれば、おもしろき夜の雪の光に、折に合ひたる手ども弾きたまひつつ、さぶらふ人々も、すこしこの方にほのめきたるに、御琴どもとりどりに弾かせて、遊びなどしたまふ。
(源氏物語・若菜下~バージニア大学HPより)
千五百番歌合に 宜秋門院丹後
冬の夜はあまきる雪に空さえて雲の波路にこほる月かけ
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館HPより)
冬の歌中に 平政長
かくはかり身にしむ色は秋もあらし霜夜の月の木からしの風
(続千載和歌集~国文学研究資料館HPより)
ふかくさのうつらのとこもあらはにてかれのにさひしふゆのよのつき
(為兼家歌合~日文研HPより)
題知らず 妻恋ひかぬる三位中将
嘆きわびうち寝(ぬ)る床の寂しきにあはれを添ふる冬の夜の月
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)
冬歌の中に 権大納言公蔭
吹とをす梢の風は身にしみてさゆる霜夜の星きよき空
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)
冬御歌の中に、雪を 院御製
ほしきよき夜半のうす雪空晴て吹とをす風を梢にそきく
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)
星きよき梢の嵐雲はれて軒のみ白きうす雪の夜半
(光厳院御集)
いましはやしもおくらしもさよふけてほしのひかりのまとにさやけき
(為兼家歌合~日文研HPより)
みやまへのおくのかよひちいかならむあられたはしりさむしこのよは
(正治初度百首~日文研HPより)
よをさむみあられたはしるやまさとはこけのむしろにねさめをそする
(堀河百首~日文研HPより)
久安百首歌に、霰 左京大夫顕輔
さらぬたにね覚かちなる冬の夜をならの枯葉に霰ふる也
(続後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)
女院行方知らで嘆きけるころ、木枯し荒くしぐれうちして、また吹き返し、あられの音おどろおどろしきを聞きて 末葉の露の右大臣
恋ひわぶる冬の夜すがら寝覚めして時雨が上のあられをぞ聞く
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)
冬歌とてよみ侍ける 守覚法親王
むかし思ふさ夜のねさめの床さえて涙もこほる袖のうへかな
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)
題しらす 増基法師
冬の夜にいく度はかりねさめして物思ふ宿のひましらむらん
(後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
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