題しらす よみ人しらす
いつのまにさ月きぬらん足曳の山郭公いまそ鳴なる
(古今和歌集~国文学研究資料館HPより)
ほとときすはなたちはなのあさつゆにをはうちならしいまそなくなる
(為忠家後度百首~日文研HPより)
よになれぬたたひとこゑもほとときすはなたちはなにかくれてそなく
(元真集~日文研HPより)
おなし心(聞郭公)を 入道二品親王性助
ほとゝきすたゝ一こゑもほのかにて雲まの月に猶またれつゝ
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)
子規をよめる 権僧正永縁
きく度にめつらしけれは時鳥いつもはつ音の心ちこそすれ
(金葉和歌集~国文学研究資料館HPより)
待つことは初音までかと思ひしにきゝふるされぬ時鳥かな
(山家集~バージニア大学HPより)
題しらす 藤原基名
待人のためならすともほとゝきすをのか五月に声なおしみそ
(新後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
嘉元百首歌に 二品法親王覚助
めくり逢おなし五月の郭公聞ふるしても猶そあかれぬ
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)
をりしもあれすすしくくもるむらさめのくもまにきなくやまほとときす
(後鳥羽院御集~日文研HPより)
入道前関白右大臣に侍ける時、百首歌よませ侍ける時、時鳥歌 皇太后宮大夫俊成
雨そゝく花橘に風過てやまほとゝきすくもになくなり
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)
夏山の木末の茂に霍公鳥鳴き響むなる声の遥けさ
(万葉集~バージニア大学HPより)
窓のもとにひとりこゝろすまして侍りけるおりふし時鳥のなきわたるをきゝてよみ侍りける
ねかはしなわかゐる園に時鳥心のまゝに聞よしもかな
(櫻井基佐集~群書類従15)
郭公を 前大納言為兼
おりはへていまこゝになく時鳥きよくすゝしき声の色かな
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)
さむしろにあやめのまくらそはたててきくもすすしきほとときすかな
(為忠家後度百首~日文研HPより)
さつきやみくらふのやまのほとときすほのかなるねににるものそなき
(拾遺愚草~日文研HPより)
かたらひしその夜の聲は時鳥いかなるよにもわすれむものか
(山家集~バージニア大学HPより)
人々によませ侍ける百首に、郭公を 中務卿親王
一声をあかすも月に鳴すてゝ天の戸わたるほとゝきすかな
(続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)
月前郭公といへる心をよめる 賀茂成保
五月雨の雲のたえまに月さして山時鳥空に鳴なり
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)
題しらす 後鳥羽院御製
夏の夜の夢路にきなく子規さめても声は猶残りつゝ
(新後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
郭公なべてきくには似ざりけりふかき山邊のあかつきのこゑ
(山家集~バージニア大学HPより)
たいしらす 後鳥羽院御製
ほとゝきす雲のいつくにやすらひて明かたちかき月に鳴らん
(続拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
よもすからかたらひおきてほとときすいつちゆくらむあけほののそら
(正治初度百首~日文研HPより)
暁聞時鳥といへる心をよみ侍ける 右大臣
ほとゝきす鳴つるかたを詠れはたゝ在明の月そ残れる
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)
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聞霍公鳥喧作歌一首
いにしへよ偲ひにければ霍公鳥鳴く声聞きて恋しきものを
(万葉集~バージニア大学HPより)
いにしへに恋ふらむ鳥は霍公鳥けだしや鳴きし我が念へるごと
(万葉集~バージニア大学HPより)
寛平御時きさいのみやの歌合のうた きのとものり
さみたれに物思ひをれは時鳥夜ふかく鳴ていつち行らん
(古今和歌集~国文学研究資料館HPより)
宝治元年十首歌合に、五月郭公 右近大将通忠
橘のにほふさ月のほとゝきすいかに忍ふるむかしなるらん
(続拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
なげきわびもの思ふころは郭公わがためにのみなくかとぞ聞く
(宗尊親王御百首)
病にしつみ侍ける比、郭公をきゝて 太宰権帥為経
年ことに聞し雲ゐの時鳥この五月こそかきりなりけれ
(新千載和歌集~国文学研究資料館HPより)
ほととぎす、ありつる垣根のにや、同じ声にうち鳴く。「慕ひ来にけるよ」と、思さるるほども、艶なりかし。「いかに知りてか」など、忍びやかにうち誦んじたまふ。
「橘の香をなつかしみほととぎす花散る里をたづねてぞとふ
(略)
「人目なく荒れたる宿は橘の花こそ軒のつまとなりけれ」
(源氏物語・花散里~バージニア大学HPより)
その後は、いとど行ひにのみ心を入れつつ、明け暮れ経読み、念仏申しつつ、いとのどかにて明かし暮らし給ふに、都にては、雲居はるかに聞きしほととぎすも、軒近き花橘に声惜しまぬもいとあはれにて、侍従、
いにしへを汝(なれ)もや偲ぶほととぎす花橘に来ゐつつぞ鳴く
少し鼻声になりて言へば、姫君、
いにしへも何偲ぶらんほととぎす死出の山路の道しるべせよ
(兵部卿物語~「兵部卿物語全釈」武蔵野書院)
紫の上かくれ侍りて後、ほととぎすの鳴きけるを聞かせ給ひて 六条院御歌
亡き人をしのぶる宵の村雨にぬれてや来つる山ほととぎす
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)
一条院隠れさせ給ひて後、花橘のかをれるほどに、ほととぎすま近く声すればよませ給ひける 床中のみかどの御歌
昔のみ恋ふと知りてやほととぎす花橘をとめて来つらん
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)
ほととぎすは、なほさらにいふべきかたなし。いつしかしたり顔にも聞えたるに、卯の花・花橘などにやどりをして、はたかくれたるも、ねたげなる心ばへなり。五月雨のみじかき夜に寝覚をして、いかで人よりさきにきかむとまたれて、夜ふかくうちいでたるこゑの、らうらうじう愛敬づきたる、いみじう心あくがれ、せんかたなし。六月になりぬれば、音もせずなりぬる、すべていふもおろかなり。
(枕草子~岩波文庫)
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