ほっぷ すてっぷ

精神保健福祉士、元新聞記者。福祉仕事と育児で「兼業」中。名古屋在住の転勤族。

『自然はそんなにヤワじゃない』

2009-11-02 00:28:58 | Book
「生物多様性」は守るべきものか。
多様な生物が共存することのメリットは何か、デメリットは何か。

『自然はそんなにヤワじゃない』(新潮選書)というタイトルが
気に入って手に取った本。
ミジンコ学者の著者は、主にミジンコの世界(湖の中の生態系)の研究をもとに
いろいろと言っているが、書きとどめておきたいことはそんなに多くなかった。

単純で面白い生態系の考え方だなと思ったのは、
生物をr-戦略者と、K-戦略者に分けて考えるというもの。

r-戦略者とは、個体が小さく寿命も短く、種子・子どもをたくさん産んで繁殖する生物。
K-戦略者とは個体が大きく寿命が長く、少数の子どもを産んで育てる生物。


r-は個々の生存可能性は低いが、分散能力が高いので、種としては生きながらえる力が強い。
K-は、個々は強いが、環境の変化に弱い。
著者の表現だと、「資源をめぐる他者との競争に勝つことが必要」。一方で、
資源の構成比が変わったりしたら、寿命も長いし、すぐには対応できない。

・・・おそらく、「現状の」生物多様性を一番求めてるのは森でも海でもなく、
人間なんだろう。
K-の最たる生き物は人間だからだ。
安定した生態系が一番生きやすく、肉食をやめたり、動物園に行かなくなったり、
山登りをやめたりしなくてもいい。
生態系が安定していなければ生きにくい。r-なら、場所を移したり
個体数を減らしたりして対処できるが、人間はできない。
これは、人間が人間らしく生きる-「人間の文化の保存のため」と言ってもいい。

一方で、人間が食べ物の多くを穀物などのr-に頼っていることは、
生態系の不安定要素になっているともいう。
r-は洪水や平均温度の上下などの要素で
現存量を大きく変化させるからだ。


・・・とまあ、論調は多分に「学者的」で、原理的な感じもするのだけど、
生物多様性は人間が心地よく生きるため、文化を保っていくための
ものだというのはけっこう腑に落ちている。
里山保全、水田の継承なんてその代表かも。

関東の人はあまり触れることもないかもしれませんが、
東海地方では来年10月のCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)
が名古屋で開催されるのを控え、
「生物多様性」が増殖中です。
文化もまた、生き物ですね。

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