亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

ドル建て金価格過去最高値更新

2009年10月07日 16時58分39秒 | 金市場
すでに報道されているようにNY市場の金価格は10月6日のNY市場にて過去最高値を更新した。NY市場のスポット価格の高値は1043.8ドル、NYコメックスの先物価格では1045ドルと2008年3月17日の1033.9ドルを大きく上抜くことになった。

9月上旬に3度目となる1000ドル大台突破以降、高値警戒を指摘する声の高まりのなかで相場は1000ドルを固め、そして上値追いに走った。相場格言の教えるところの「もうはまだなり」という展開である。

為替市場でのドル安傾向の持続という環境が金価格を押し上げるという、いわば金融市場からの関心(投資需要の高まり)がこの相場を作っている。これは年始から一貫した流れであり、実需の動向は圧倒的な“カネ(投資マネー)の流れ”のなかで影響力を失っているといえる。この相場が一段落した後に、改めて実需の動向はジワジワと影響力を高めると見られるが、当面は“カネの流れ”に翻弄される相場が続きそうだ。当欄では金市場内部は元より金融市場の視点に立った市況解説を心がけてきたが、何度か書いてきたが金融的側面を捉えないと金市場の中だけの動きを(とりわけ実需主体)追っていてもこの相場は読めなかったと思う。

NY市場に入った以降の上値突破のきっかけは、英紙「インデペンダント」が報じた中東湾岸産油国が原油取引のドル建て以外の決済を検討しているという話だった。この報道によりドルが売られたことが、金買いに拍車を掛けた。ただし、その後のドル安は限定的で対ユーロでも年初来の安値水準を更新するところまで売られておらず、むしろ金市場では1020、1022、1023ドルと節目となる水準を突破するごとに買いに拍車が掛り、一人歩きしたかたち。NY市場の時間帯のスポットの取引レンジは1015.4~1043.8ドルとなった。

以上が、本日午前に住友メールで配信した市況解説に若干手を入れたものだが、継続して読んでいただいている方々はご存知のように、金市場について中長期は元より目先も強気してきた。実は9月1週目に入稿した(社)日本金地金流通協会の機関誌に一文を寄稿させてもらったが、そのタイトルは「需要の構造的変化がもたらす“可能性としての”金価格革命」だった。今回の1000ドル乗せが「投機筋の単なる目先的な買い攻勢」による上昇相場ではないと捉えているからだ。先月の初めにそうした相場が始まったのではと思われる変化を感じ、強気をしてきた。手前みそだが、8月のセミナーや研修会でも9月下旬から10月のドル建て価格の上昇可能性について語ってきた。

以下、リビュー
「株も原油も大下がりするなかで金市場は堅調だった。ひとつのシグナルと受け止めることもできるだろう(9月2日)」。

「実需の動向とは離れた金融相場といえる。(9月4日)」

「最近の本にも「金の1000ドルはバブルにあらず(時間の経過が受け入れる金1000ドル)」と書いたのだが、2つの点をそこで指摘した。それは投資需要の拡大=金融主導型の相場=バブル的相場すなわち短期で終結という従来型の指摘は必ずしも的を得たものではなくなっているという点。さらにインドや中東などの需要国では高値圏ではあっても相場が比較的安定して(その水準での)価格滞留期間が長くなると“高値慣れが発生”し売り惜しみ、そして需要の復活傾向が見られるという2点だった。とくに後者は、変化の様相が緩やかに進むので気付いた時には需給バランスが変わってたということもある(9月7日)」

「もともと核になるファンドのポジションがあり、環境をうまく捉えた買い攻勢が周りをうまく巻き込み上昇気流を起こすことに成功した(9月8日)」

「1000ドルが、かつての感覚からは大きな数字ではあったものの、いまやそうはなくなっているといえる。心理的なラインであるのはわかるが、あくまで心理的であって、現実の相場はそれを飲み込みに掛かっているように見える」「むしろ1000ドル近辺を出たり入ったりしているうちに受け入れられるのではないかと思っている。つまり1000ドルを過大視する心理的な要因が値を抑えているとも言えるのではないか(9月9日)」

「本日から週末にかけてのNYの展開は、いまの市場のいわば“持久力”を見る上で試金石となりそうだ。今回の展開はこれまでとは違うと思う(9月9日)」

「先週9日水曜日にここで「本日から週末にかけてのNYの展開は、いまの市場のいわば“持久力”を見る上で試金石となりそうだ。今回の展開はこれまでとは違うと思う」と書いたのは、そうした過去の値動きとの内容の違いを感じてのものだった。ここまでの経過はやはり、相場は粘り腰を発揮しているといえる。1000ドルを受け入れにかかっていると言っていいだろう。なぜ「内容の違いを感じる」のか?旧投資銀行系のディーリングと目される資金の流入があったと見られるからだ。先月のNY株式での金融低位株の乱高下の次のターゲットに(金が)なっている可能性があるのではないかと思っている(9月14日)」

「本日はセミナーに参加いただいた皆さん、お疲れさまでした。当ブログのライブ版という位置づけで、もう一度今週17日に夕刻の開催です。ところで、サブタイトルを「金価格を見る勘どころ」から「需給構造の変化と金価格革命」に変更していたのですが、気づきましたか?(9月14日)」

「どちらに転んでも調整局面は訪れるが、高値クリア後が理想的ではある(9月15日)」


ところで明日、信州松本に仕事で行くことになっているが、どうもそっち方面に台風がやってきそうな気配。先方からは今夜中に移動してはとの話がきているが、本日中に仕上げねばならぬものがあり難しい。明日、午前中に中央本線、長野新幹線がどうなるか。



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2 コメント

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気づきましたか?と言われても (ささやか)
2009-10-08 12:16:09
すぐ気付くほど賢かったら私はセミナーに行かなかったでしょう。(笑)
「ネコに小判」と云いますけど、あのセミナーに関しては私はネコだったみたいです。こんな強気のk先生記憶にないワ、とは思いましたけど…
ネコの耳でも「コツン」が聞こえるか心配です。
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インフレ? (いつも拝見しております)
2009-10-09 12:48:06
なんとなくインフレっぽい雰囲気です。インフレになれば景気回復となるかもしれませんが、日本は財政赤字が厳しい状況です。
それだけに素直に喜べません。最も国内はデフレなのでそれが国債市場を支えるかもしれませんが、例によって外からマネーがなだれ込んでくると思うので先物などに売り圧力も加わるでしょうし、金融機関もアロケーションどうするのでしょう?
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