21日、IMF(国際通貨基金)の春季年次総会機会を捉えて開かれたパネルでのパウエルFRB議長の発言は、いくつかの点で非常に興味深いものだった。
再来週5月の3、4日に開かれるFOMCにて50bp(0.5%)の利上げを示唆という部分に焦点を当てた報道は、織り込み済みにつき、目新しさはなし。米国経済は非常に強い労働市場支えられており、今回想定されるかなりきつめの金融引き締めにも耐えられる。ソフトランディングに自信ありというのが、この3月に利上げサイクルを開始して以降のパウエル発言だったし、他のFRB高官の発言も同様のことが語られてきた。
それを今回は、おそらく議長自身がここまで語ってきた中で最もタカ派的な政策方針を示した上で、FRBがインフレ抑制と景気維持との間の難しい舵取りを迫られているという認識を示したこと。
インフレについては、ロイターが伝えるところでは、「ピークを迎え年内に鈍化するとみていたが期待外れに終わったとし、供給面での回復に頼らずに『FRBは利上げを実施し、より中立的な水準まで迅速に引き上げる』とし、必要があれば一段と引き上げると述べた」としている。
ここに来てインフレへの警戒レベルをさらに一段切り上げたということだろう。時間の経過とともにサプライチェーン問題も回復し、この点からのインフレ圧力が緩和されると思っていたが、そうではなさそうなので、いよいよFRBの政策手段を使って力づくで抑え込もうという意思を表す。
さらに「FRBは金融政策の引き締めによってモノやサービスの需要が抑制され、企業の採用意欲が低下し、結果として『持続不可能なほど過熱した』賃金の上昇が抑制されることを期待している」と述べている。いまや白熱状態といえる労働市場を冷やすために、需要を抑え、企業の採用意欲を低下させるほどの強力な引き締めを手掛けるといっているわけだ。もっとわかりやすく言うなら、政策により経済減速を引き起こそうというもの。程よい抑え込みができればいいが、行き過ぎが起きるのがパターンではないかと思う。それゆえに、「インフレ抑制と景気維持との間の難しい舵取りを迫られている」という発言であり、意図的に減速させようというのだから失速リスクも覚悟という話になる。
比較考量のうえで、やはりインフレは放置できないのでまずは強力に抑え込もうと。「投資家はFRBのインフレ対応に『全般的に適切に対応している』と感じている」としたが、それはここまで下がったとはいえ株式市場は極端な波乱に至っていないことを指しての発言か・・・と。 これとて、連続50bpの利上げをしながら、前回の倍のペースで資金回収を進めているうちに そのタイミングでどんな反乱がおきるやも知れず不透明極まりない。しかも、ウクライナ戦争という環境の中でのこと。
昨日収録、本日夜公開のYouTube 21分まずは、ご覧あれ