注目の4月の米CPI(消費者物価指数)は総合値が前年比8.3%と予想の8.15を上回ったが、3月の8.5%からは伸びが鈍化した。
ただし、前年の4月は4.2%とインフレの加速が始まっていたタイミングゆえに、今月以降の前年比の伸び率は抑えられるというのが、一般的な見方となってた。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数は6.2%となった。こちらも3月の6.5%より鈍化しているが、トレンドを見る前月比では0.6%と前月の0.3」%から加速している。
市場の関心事は、インフレ伸びがピークアウトしたか否かにあったが、前年比での伸び率が今後抑えられることから、たしかにそういう見方が成り立つのかもしれないが、コアの前月比からいってモメンタムが感じられ高止まりする印象が強い。サプライチェーン問題に背景がある物価上昇は、たしかにピークアウトということになるのかもしれない。それでもFRBが目指す2%をやや上回る水準まで落ち着くには、かなりの時間がかかると思う。
全米自動車協会(AAA)の10日の発表では、レギュラーガソリンの全米平均価格は1ガロン(約4リットル)あたり4.37ドル、軽油は5.55ドルといずれも過去最高値を更新した。軽油はトラックなどの燃料なので輸送コストを上げ、CPIをさらに押し上げる。今後はロシア産原油の取り扱いがどうなるかで、原油価格の方向性も決まることになるが、全会一致で決める必要のあるEU圏は各国別にエネルギー消費と調達に温度差があり、合意が難しい。
CPIの結果は、高インフレの継続を示していると思うが、結果を受けて米国株先物はマイナスに転じている。1850ドルを越えていたNY金は、50割れに押し戻されたが、上振れも下振れもなかったCPIだが、内容的には金価格をサポートするものと思う。株式市場ともども11日の終わり値はどうなるか興味深い。
今週もFRB高官によるタカ派発言が続き、市場の警戒感を高めさせている。
この日、ウォラーFRB理事は、高すぎるインフレと「正常ではない」労働市場の状況に対応する必要があるとして「経済が持ちこたえられる今こそ、利上げをする時期だ」と発言。「前倒しして済ませ、効果を検証し、一段の措置が必要なら実施する」と述べた。NY連銀のウィリアムズ総裁は、6、7月に開く2回の会合(FOMC)でそれぞれ50bp(0.5%)の利上げを実施する公算が大きいとするシグナルは「理にかなっている」とした。その上で、強めの引き締めにより「成長がしばらく鈍化し、失業率が幾分上昇する可能性があり、課題となる」と、痛みを伴うとの認識を示している。
一方、タカ派で知られるクリーブランド連銀のメスター総裁も同様に、向こう数回のFOMCにて50bpの利上げを実施していくのは「完全に理にかなう」とした。その上で、経済の今後の道のりは「スムーズではなく、困難な道のりとなるだろうが、インフレ率を引き下げるためには仕方がない」」としている。
インフレ抑制に向け積極的な引き締め策に着手するにあたり、FRB内部でも経済の減速や株式など資産市場の一定の調整について(当然ではあるが)想定していることを表している。波乱をもたらさない「ソフトランディング」に自信を示しているパウエル議長だが、これだけの急激な引き締めに着手すれば、無傷というわけに行くまい。