いよいよ米国株の下落が際立ってきた。先週は連日、主要指数が軒並み午後3時過ぎから売りが膨らみ安値引けのような状態が続いたところを見ると、下げもかなり極まっている印象が強い。
先週だけでS&P500種は5.7%安、ナスダックは7.6%安と週間ベース(週足)の下げとしては、2020年3月以来の大きさとされる。昨年11月の高値から下げ率が10%を超え、調整局面入りしていたナスダックは前週末時点で昨年6月以来の安値となり、14.3%の下落となった。
いずれにしても、久々の本格的な下げ相場が出現することになった。 昨年12月までは、対応が後手に回っているとされたFRBだが、1月5日に発表された昨年12月のFOMCの議事要旨では、市場の想定を超えて議論を進めていることが判明。バランスシート(保有資産)の縮小まで議論されていることがわかった。その後11日のパウエル議長の上院公聴会での発言では、今後2~4回の会合(FOMC)にてバランスシート問題を話し合うとまでした。
出遅れていたはずのFRBの引き締め議論が、思った以上に進んでいた現実に、慌てた市場はこうした内容を織り込みにかかるのだが、ここで一気に拍車がかかることになった。いわく、年内の利上げは5回で済まない7回もあり得る、3月の利上げ幅は50bp(0.5%)になる、バランスシートの縮小は早ければ6月からなどなど・・・。さすがに今週の会合での利上げを読む動きはないが、バランスシートの縮小を議論する脇で量的緩和策(QE)が終わっていないのは、整合性が取れないゆえに、3月を待たずにQEを終了という見方も出ている。
こうした内容を受けた市場センチメントは一気に警戒モードを高めることになった。
急落を始めた米国株は、その後の下げ幅拡大自体が、リスクオフ・センチメントをさらに高め、次の下げを誘発するスパイラル状態に陥ることになった。年始3日の取引まで見られた「誰かが自分の買値の上を買ってくれる」という期待連鎖の「合理的バブル」が反転。いまや落ちるナイフは握るなと、放置のスタンス。
足元の急落で浮上するのが、過去最大のMargin Debt(信用残)の存在だ。既にバブルが懸念されていた2020年2月時点で5451億ドル規模(千億ドル以下切り捨て)のものが、新型コロナ禍の暴落で4792憶ドルまで縮小。その後昨年6月には8821億ドルまで膨らみ、この時点でゴールドマンやモルガンなど関係者は、このまま波乱が起きないわけには行かないだろうとしていた。それが10月には9358憶ドルまで膨らんでさらに過去最大に。12月時点でも9100億2100万ドルとなっている。日本円にして約104兆円となる。
このところの急落で水浸し状態になりMargin Call(追い証)発生が始まっているものと思われるが、果たしてどうか。
ただし、センチメントの振れ方から判断すると、FOMCの結論が出る前の本日24日、あるいは25日の引値が、目先の安値となり、FOMCを通過して目先の自律反発ということになるのではないかと思われるが、どうなるか。
先週は金市場にも目立った動きがあった。
金ETF(上昇投信)の最大銘柄「SPDR(スパイダー)ゴールド・シェア」の残高が急増した。年始1月4日に1日で5トン近く残高が増加したのが目を引いたが(1月5日にここでも取り上げ済み)、その後小規模ながら減少となっていた。ところが、先週19日に5.23トン増加、翌20日は0.58トンの減少となったものの21日は27.59トンもの増加となった。重量ベースの残高は1008.45トンと昨年8月20日以来の規模に復帰。過去5カ月分の流出分を1日で取り戻すことになった。
昨年秋に一部で金市場から暗号資産への資金移動がはやされたが、やはり表層的な現象でしかなかったと言える。改めてここに書こうと思うが、11月に「ビットコインはインフレに強い」などと喧伝されていたのは、ポジショントークだった。
明日は、ラジオNIKKEIの16時30分からの番組「マーケット・トレンドPLUS」にスタジオ出演の予定。ライブでもSupply on Demandでも聴いてもらえます。