本日は、とり急ぎ市況だけ転載しておきます。
5月29日のNY市場の金価格は小幅で続落となった。NYコメックスの通常取引は前日比3.00ドル安い1256.30ドルで終了した。安値は一時1250.90ドルまで見たが、1250ドル割れは回避された。
昨日書いたように29日の注目材料は、米1-3月期のGDP(国内総生産)の改定値がどの程度下方修正されるのかという点にあった。というのも4月30日に速報値が発表された時点では前期比年率換算で0.1%とかろうじてプラス成長を維持したが、その後明らかになった指標からマイナス成長への転落が予想されていたからだ。
結果は市場予想マイナス0.6%を上回るマイナス1.0%というもので、米国経済は2013年1-3月期以来となるマイナス成長となった。当時はマイナス1.3%だった。金市場の方は、前々日の連休明けの取引で大きく売られた後だけに、自律的反発が期待できるタイミングでもあり、経済成長のマイナス転落は低金利環境の長期化を印象付けることもあり、金の押し上げ要因と思われた。実際、発表直後は売り買い交錯ながら値を回復しいったんは前日比プラス圏に浮上し1260ドル台に乗ったものの、勢いはそこまで。取引終盤に掛けて売り先行のパターンに戻り結局続落で取引を終了した。
一方で、米長期金利(10年国債の利回り)は、GDPの下方修正を受ける形で買われ一時は2.40%と昨年7月以来の低水準まで下げた後に2.46%で引けている。金利の低下は10年国債が買われていることを表す。29日の取引では、NY株もマイナス成長を気にすることなく上昇し、S&P500種指数は連日の史上最高値更新となっている。
マイナス成長、金利低下の中で金価格が目立った反発を見せず、NY株が上昇に終わった背景は、同時に発表された週間ベースの新規失業保険申請件数が、米国が景気後退に入る前の2007年秋の水準まで減っていたことがある。24日に終わる前週の申請件数は2万7000件減り30万件となった。市場予想は31万7000件となっていた。比較的振れ幅の起きい指標であることから4週間の平均で傾向を見るが、その数字も1万1250件減の31万1500件となり、2007年8月以来の低水準となった。米労働市場が緩やかな回復を続けていることを裏付けるもので、6月6日発表の雇用統計が好結果となる可能性がある。
結局、米国経済は1-3月期はマイナス成長となり、その落ち込みも予想より大きかったもののそれは過去のこと。寒波の影響であって足元の4-6月期には力強い回復が見られるという見通しが、金の軟調展開と株式市場の堅調展開につながっている。一言で表すなら「過去より未来」という流れ。ただし一山超えた感覚のウクライナ情勢なども、内実は緊張が高まっており、予断を許さないのも事実である。