亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

為替介入雑感

2011年11月01日 20時23分03秒 | 金市場

報道にあるように昨10月31日の午前10時25分頃にドル円相場は急騰。後に財務省は円売り介入を実施したことを確認した。一気に4円程急落(ドル急騰)となったが、その後も79円20銭で一定時間価格が張り付いたことから「指し値介入」の手法も取られたとされる。本日の一部報道では介入規模は、1日としては過去最高となった今年8月4日の約4.5兆円を大きく上回る10兆円規模となった(朝日新聞)というものから日経は7~8兆円としていた。1ドル=76円でのドル換算では、920億㌦~1300億㌦となる。昔の日本国の外貨準備の総額がこんな金額だったのを記憶している。これだけのものを1日で投じるのだから、空前の介入ではある。しかし、介入資金は政府が借金をしたものを投じているので、それだけ借金の総額が増えることになる。もちろん反対側にドル資産(主に米短期国債)が積み増される。調達のために発行される国債は短期国債だが、原則として次にドル売り円買い介入をするまでの間は、乗り換えを繰り返すことになる。したがって、先日ここに「政府によるキャリー・トレード」と書いた。金利差は稼げるが、ドル安が続けば、また評価損は膨らむ。ある外銀はレポートで「日本は赤字増加分で現在世界で最も弱い米ドルを購入し続けている」というものが、あった。まさに、そのとおり。

 

しかし昨日は、安住財務相の決断に拍手喝采の投資家も多かったのではないか。待ってましたとばかりに、下値で買っていたドルを売り戻したり、このところの円高で引かされていたドル建て資産が利食いになり、アレ、ウレシヤと益出しで逃げた人も多かろう。この場合、金も「ドル建て資産」の範囲に入るのである。1ヵ月ほど前くらいかな、何かのニュースで輸出企業は今年度末の決算のドル円想定レート80、81円に置いているところが多く、76~77円の水準では業績の下方修正を余儀なくされる・・・というものがあったのを記憶している。その時思ったのは、ああ、このつけて欲しい80、81円まで戻らないのだな・・ということだった。ドル売りの必要があるところは、これまでの80円台を見切り79円台に指値を下しているというニュースも見かけた。日々の流れで見かけたニュースなので、正確に日時まで覚えてないのだが。今回思ったのは、79円20銭でしばらく張り付いたままで「指し値介入」とやらがあったとされるが、救済という意味合いでもあったのかと。日本国政府が、ドル買い取りの手を振ってくれたのか?いつものように介入の効果は一過性で、またドル安に押し戻されたなら、一定の為替差損を国が引き受けてくれたことになる・・・とか何とか考えてしまった。

 

市況解説で書いたが、介入によるドル安の中でドル建て金価格が下げたのは、直近の1週間で6.8%もの上昇を見ていたことが上げられる。為替介入というイレギュラーな形ではあるが、ドルが急騰したことが益出し売りの「きっかけ」になったものと見られる。その後は、欧州時間や米国時間でイタリア国債が続落(利回り上昇)となったり米金融大手MFグローバルの金融破たん申請というように不透明な環境もファンドの「手堅く手仕舞い売り」という行動を誘発したと見られる。

 

それにしても、G20では以前から「国際不均衡の是正」が主要テーマのひとつになっているので、経常収支がここまで恒常的に黒字だった日本は、内需振興などで輸入を増やし黒字減らしを要求される身の上。それが円安誘導の強力介入となると、非難轟々ではないか。為替操作に関して中国に対する米国のスタンスが先鋭化する傾向が強まっているが、日本はだんまりを決める以外になくなった。

 

ところで今夜は東京工業品取引所でシステム障害が発生して取引はストップしているようだが、価格が動いている時だけに、FOMCなどイベントを前にして大丈夫なのかね。

 

昼間、打ち合わせで出た帰りに気候が良かったので青山外苑のイチョウ並木まで歩いてみた。まだ葉はあおあおしていた。

 

夕焼けに富士山が映えるようになってきた。もう11月。


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5 コメント

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ローマ帝国の教訓 (ささやか)
2011-11-02 16:13:46
市民がパンとサーカスをねだり続けるなら、どんな富裕な国も破綻します。

最近夜明けが遅くなりました。朝だ!と起きると東京の空にこんなに星があったのか、と驚きます。朝焼けも綺麗です。今日は公園で鳥の鳴き声「百舌鳥」かな?と思ったけどバーゲンで買った双眼鏡ではようワカランので口惜しい。
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モズ ()
2011-11-02 18:32:57
そんな季節ですねぇ。。。。モズというと昔の秋の運動会をなぜか思い出す。
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貢納 ()
2011-11-03 09:57:39
日本政府が、購入した米ドル、米国債を売却したという話は聞いたことがありませんが、どうなのでしょう。もしないなら、巷間言われていますように、日本政府が巨額な日本人の資産をアメリカに貢納しているのは事実ということになりますね。
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いやいや ()
2011-11-03 20:17:00
売ってないからといって、貢いでいるわけではないです。仮に今のギリシャみたいに将来「減免」してくれと言われて、受け入れれば別ですが・・。
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差損 ()
2011-11-03 20:24:19
この間のドル安の結果、評価損部分が「貢いでいる」という捉え方もできることから、そういう指摘をする識者も多いです。

ならば、国内個人投資家も「円安見通し」に乗ってドルを買って結果的に「貢いでいる」と言われても・・・ねぇ・・・。
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