12月5日のNY金は小幅に続落した。値動きの幅が110ドルを超え騒乱の1日となった前日とは一転し通常ペースの取引に始終した。NYコメックスの通常取引は前日比5.90ドル安の2036.0ドルで終了した。
5日に発表された米国指標は強弱まちまちとなった。注目度が高かったのは、週末に11月の雇用統計の発表を控える中で午前早く労働省が発表した10月の米雇用動態調査(JOLTS)だった。求人件数が大きく減少し労働市場の過熱感の緩和を示す内容となった。
まず結果に反応したのは債券市場で、米連邦準備理事会(FRB)の利上げが終了したとの見方が一段と強まり、米国債に買いが入った。 10年債利回りは一時4.164%まで低下し4.175%と3カ月ぶりの低水準で取引を終了した。
1カ月余りで16年ぶりの高水準4.9%台から4.1%台への急低下は、金市場には十分に買い手掛かりとなる動きではある。しかし、5日はアジア時間からNY早朝まで主に2050ドル超のプラス圏で推移してきたNY金だったが、この結果にもかかわらず2050ドル割れから、一時2027.60ドルまで売られることになった。
上昇とならなかったのは、前日に見せた2150ドル超への急騰が、市場の薄さ(取引の少なさ)やテクニカル的側面またオプション取引に絡んだ思惑など理由はともあれ、結果的にFRBによる利下げ局面まで先取りした水準を示現したことによる。
この点からは、仮に週末の11月米雇用統計が、FRBによる将来の緩和策を予見させる内容となった場合でも、金市場の反応は鈍いものになると思う。 言葉を替えるなら売り手掛かりとなる材料への反応の方が大きくなりそうだということ。
この日は、米ISM(サプライ管理協会)が発表した11月のサービス業購買担当者景況指数(PMI)は52.7となり、前月から0.9ポイント上昇。市場予想(52.0)も上回った。FRBの利上げ停止観測を後退させるような材料とまでは言えないものの、対ユーロでのドル高につながりドル指数(DXY)を再び104ポイントと約3週間ぶりの水準に押し上げ、金市場の売り手掛かりとされた。
ちなみに10月の米雇用動態調査(JOLTS)は、非農業部門の求人数が前月比61万7000件減の873万3000件となり、2カ月連続の減少で2021年初め以来の低水準となった。減少件数も5月以降で最大で9月分も下方修正された。結果を受け賃金インフレが和らぐとの見方が強まった。
市場ではFRBの利上げサイクルが終了したという見方が強まるとともに、焦点は利下げ時期に移りつつある。米金利先物の値動きから市場が織り込む政策金利予想を算出する「フェドウオッチ」によれば、FRBが来年5月までに利下げする確率は9割程度に高まっている。
利下げ観測が現実味を帯びる指標が浮上して初めて、NY金は2100ドル超の水準に復帰するものと思われる。