週末のロンドンからNYの時間帯にかけて金市場の波乱要因のひとつになった中国の引き締め策(預金準備率の引き上げ)だが、結局NYコメックスの安値は1372.70ドルと直近安値の8日の1372.10ドルを割れることなく買い戻された。インフレ抑制を最重点課題としながら、(発表はしなかったものの)8%成長を目標にしている中国は、「積極的な財政政策」は継続を確認。結局、引き締めても成長削ぐまではできまい・・・というのが大勢的な判断・・・だれでも考えそうなこと。10月以来となる年内利上げもアリで織り込み済みか。これとて昨今の市場は、環境によって“織り込み済み”になったり相応に反応したリと出方は不規則。金市場も中国引き締めで売られても、おおむね一過性で値を戻すのは、当の中国が銀行を通じた個人向け金販売網の整備を急ピッチで進めており、数字が付いてきていることがある。最近も今年の中国の金輸入量が前年比5倍のペースで推移していることが注目された。今年よりもむしろ来年のテーマとなりそうだ。2011年の内部要因の材料ということ。
一方で外部要因のひとつは引き続きFRBによる通貨価値を薄める政策にある。先週のオバマ政権によるブッシュ減税延長合意で来期の成長率を上方修正するところが増えているが、果たして潜在成長率まで届くのか疑問。そこそこの成長は見られるものの、反対側で膨らむ財政赤字に見合った成果が得られるかというと難しいのではなかろうか。
ただし(持続性に問題ありとしても)、成長率が高まる状況が見られるならば、またしても量的緩和策の後退観測が流れるだろう。とりわけ足元で出足の好調さが伝えられるクリスマス商戦がこの後も好調裏に進展すれば、その可能性は高まる。つまり、その際に金市場は再び売り物がちとなろう。
ブッシュ減税による景気刺激は、財政出動の難しい米国政府にとっての裏ワザであり、金市場を読む上での新たな変数が現れたということ。先日も書いたが、キャピタルゲイン課税など高額所得者への適応までは織り込んでいなかった。しかし、その下げ局面は、この先に大きな環境変化あるいは新たな変数が登場しなければ、買いの好機ということではないか。それが年始に現れるか否か。そこまでうまく回るのか否か。
それはそうとFOMC接近にもかかわらず一巡感もあり、市場の関心ということで盛り上がりに欠ける。