亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

ポールソンも“one of them”

2011年11月15日 19時48分13秒 | 金市場

金ETFといえば、この世界ではポールソン&カンパニーを率いるジョン・ポールソンがここまでの最大保有者として知られてきた。この9月の金価格急落時には「ポールソンがETFを手放しているのでは」という噂が市場を駆け巡るということが起きていた。ちょうど9月は四半期末ということもありEFTの残高も減っていたことから、その真偽のほどが市場の関心事のひとつでもあったが、それが日本時間の今朝方発表されたSEC(米証券取引委員会)のデータで明らかになった。ポールソンは持ち分を3分の1減らしていた。9月末時点での保有量は2030万株(1株=10分の1オンス)、重量換算にして63トンとなるので保有量の3分の1、1120万株、同約35トンを減らしたことになる。

 

ポールソン・ファンドについては今年の6月に中国の木材事業会社の「嘉漢林業国際(Sino Forest)株への投資で巨額損失(7億ドル程度とされた)を出すということがあった。その際のも含み益を抱えている金ETFの売却の噂が出たが、その後の公開情報(6月末時点)では変化はなかったという経緯がある。今年に入り、運用環境悪化の中でポールソン・ファンドもご多分にもれず運用成績の低迷が伝えられていた。特にこの中国株投資での失敗に加え、バンク・オブ・アメリカやシティ・グループなど米国景気の回復見通しのもとで大量保有していた米国金融株の値下がりがダメージになっていた。直近では同ファンドの解約請求が出ているとの報道もあり、9月に金ETF売却観測が出る背景ともなっていた。最近の報道では、解約は全体の8%程度で、そう多くはなく、むしろ委託者はポールソンを信じ長期保有というニュアンスで伝えられていた。

 

さてこの情報が明らかになった後の市場の反応だが、本日昼間のアジアの時間帯には目立ったものは出ていなかった。通常の取引範囲内の値動に始終しており、足元でロンドンの取引時間帯に10ドル程度売られているが、これもドイツの景況感が落ちたことや、株安の中で問題国国債が再び弱含みに推移していることを映してのものだろう。2008年のリーマン・ショックを境に金市場には欧米の個人や機関投資家などの新規参入が目立ち、市場の厚みが増したが、その当事者がポールソン自身でもあった。投資家層のすそ野が広がった結果、流動性も高まり、2009年秋から実行に移されたIMF(国際通貨基金)による基金拡充のための保有金の大量売却(403トン)もわずか13ヵ月で終了し、しかもこの間も金価格は上昇していたことを当欄で取り上げたことがある。

 

今年の5月中旬にもジョージ・ソロスのファンドによる売却が明らかになったが、その時にも市場に動揺は見られなかった。これはセミナーなどの機会を捉えて語って来た内容だが、ソロスやポールソンなどのビッグネームであっても、その売りは厚みの増した市場では影響力は限定的なものになっているといえよう。今やポールソンも“one of them”という捉え方が出来るということ。もちろん、ポールソンにしても今回全ての持ち分を手放したわけではなく、EFFを手放す一方で、その分を先物市場での買い持ちを作っているとの情報もある。つまり、金のエクスポージャーは実質的に減っていないということで、それが市場に動揺を与えていないという可能性もあろう。

 

これとて今夜のNYが目立って下げたなら、「ポールソンのETF売却が判明し売られた」という記事になるのかも知れぬ。


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1 コメント

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ポールソン (アルピーヌ)
2011-11-16 00:17:36
-40%以上の運用では
到底回復は難しいと思いますが
欧米の投資家も やはり損切りはできないのかな?
一方ソロスは
値上がりしたLR株は売却
ちゃっかりSPDRゴールド AMZNなど購入
やはり一日の長を感じますね。。。
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