月初とともに新たな四半期の始まりとなった10月3日のNY金は、続伸となった。前週末比30.0ドル高の1702.00ドル終了した。約3週間ぶりの高値ということに。
米長期金利が前週末比大きく低下し、それとともにドルも主要通貨に対し弱含み、ドル指数(DXY)も低下。金利が付かずドル高に弱い金市場の風向きは大きく変わり、1700ドル超に浮上となった。 米国債市場に買いが入り、利回りが急落したことが週明けの市場の転機になったが、背景は「悪いニュースは良いニュース」というロジックだった。
この日発表された9月のISM(全米供給管理協会)製造業景況指数が前月比1.9ポイント低下の50.9と市場予想(52.0)を下回り、好不況の境目である50割れが近づいたこと。新型コロナ禍による経済封鎖直後の2020年5月来で最低の数字だった。
同じくこの日発表の8月建設支出は前月比マイナス0.7%と、7月マイナス0.6%に続き2カ月連続のマイナスで、しかも7月からの下落率が拡大しやはり2020年来で最低となった。すでに景気後退入りしているとみられる住宅市場の状況もあり注目された。
従来の想定を大きく超える強めの金融引き締めを続ける米連邦準備理事会(FRB)にとって、これらの結果は、インフレ抑制に向け望ましい効果が得られていること表している。ただし、市場はいつものように前のめりに、緩和見通しを織り込みにかかる。この先、米国景気後退入りの現実味が増し、FRBの金融引き締めが減速するというわけだ。「悪いニュース(景気の悪化観測)は良いニュース(FRB引き締め策緩和)」というながれが生まれた。
リスク資産と目されるものは幅広く買い戻され、先週末にかけて大きく値を消していた米国株は、ダウ30種平均が前週末比765ドル(2.7%)高の2万9490ドルで終了。1日の上げ幅としては約3カ月ぶりの大きさだった。9月1カ月で2784ドル(8.8%)と、下落率としては新型コロナ感染拡大当時2020年3月以来の大きさだっただけに、この程度の反動高は想定内といえるもの。「偽りの夜明け」になった夏場にかけての株価の急騰劇を思い起こさせる展開ではある。 一方、米10年債利回りは、前週末比0.19%低い(価格は高い)3.636%で終了。先週水曜日(28日)には一時4.010%と12年ぶりの水準まで上昇していた。同じ日に114.778と20年ぶりの水準まで駆け上がったドル指数は、3日は111.745と高値から3営業日目にして3ポイントもの下落となった。こうした値動きの大きさは市場全体に広がっており、先週は英中銀イングランド銀行による英国債の緊急買い付けにつながった経緯がある。
金市場の方は、FRBの積極利上げ策の下、ドル高、米長期金利高見通しによる先安感からファンドがショート(売り建て)を積み増しており、2018年11月以来のネットショート(売り越し)の規模(重量換算で130トンほどか)となっていた。それだけに、買戻しに入ると連鎖的に買いが広がり30.00ドルの反発につながった。プラチナなど金以外の貴金属の上昇もショートカバー(売り建ての買戻し)主導とみられる。市場規模の小ささから 、銀の上昇率(8.1%)が大きくなった。
先週27日のラジオNIKKEI「マーケットトレンド」PLUSでは、ショートが溜まっているので、動き始めると安値から100ドル程度の上昇になり1700ドル超と話した。
マーケット・トレンドPLUS:Apple Podcast内のマーケット・トレンドPLUS(2022年9月27日放送)